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世界はローマのように滅びるのか

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今日の朝日新聞にはパナマ文書を巡るいくつかの記事が掲載されている。ピケティ博士はヨーロッパの国々が企業への法人税を競争的に引き下げることに対して警鐘をならしている。日本はこのヨーロッパの動きに追随しようとしている。消費税を引き上げて法人税を下げるのはこのトレンドが背景にある。
こうした記事を読むたびにローマ帝国が滅びた(あるいは緩やかなに衰退した)ことを思い起こす。ローマは軍事費が高騰したが、地方は荘園を作りローマに税金を納めなくなった。衰退したから荘園が増えたのか、荘園が増えたから衰退したのかは意見の分かれるところなのだが、ある種のスパイラルを形成していたのではないかと考えることができる。
一方、ローマと現代には違いもある。ローマ時代の主な産業は農業であり「大規模消費社会」というものはなかった。地域住民は生産材だったわけである。絞れるだけ絞っても経済的には問題がなかったのだ。現在は消費社会なので、住民から搾取してしまうと、企業はものを売ることができなくなる。これは企業そのものが滅んでしまうことを意味する。今日本で起きている消費の停滞はこのことに起因している。
もう一つの違いは情報と教育だ。現在の住民にはある程度の政治リテラシがあり、それなりの権利意識も持っている。SNSを通じたつながりもある。ローマ時代の荘園はそれぞれ孤立していた。人権という意識も持てなかったし、考えることすらできなかった。住民が文字を読めなかったからだ。ヨーロッパで人権意識が芽生えるのは活字が発明され、自国語で聖書が読めるようになってからである。ブラジルでは熱狂的に迎え入れられたはずの大統領が弾劾されかかっている。経済の不調が背景にあることは間違いがない。もし上院でも弾劾が成立すると、リオのオリンピックは大統領が不在ということになってしまう。
この違いが何をもたらすかは分からない。格差が地域の衰退を生み出すことは確かなようだ。消費が低迷し経済が困窮するというシナリオが一つあり、格差の拡大でたまった不満が政府に向かうというシナリオが一つありそうである。