熊本の地震でオスプレイが稼働したことがちょっとした騒ぎになっている。自衛隊には自前のヘリコプターがあり、そちらを使った方が効率が良かったのだそうだ。日本政府と米軍は高額で買ったオスプレイの見せ場を作るためにわざわざフィリピンから呼び寄せたという話もあった。反対派は「政治利用だ」と叫んでいる。
一般にオスプレイに反対する人たちは左翼だとされているので、早速左翼たたきが始まった。「お前らが災害にあった時には支援物資は断れよ」という。まあ、物流が滞っているのは確かなのだから、支援物資はありがたく受け取った方がよいだろう。
さて、これはアメリカの友情の証なのだろうか、というのが今回の話題だ。東日本大震災の際にアメリカは「トモダチ作戦」を実行した。そのコストを伝えている新聞がある。The Japan Timesである。当時の記事によると、そのコストは90 million USDだそうだ。
アメリカはこれを日本に無料で提供してくれたのだろうか。おそらくはそうではないだろう。9000万ドルというのは日本円で100億円程度になる。アメリカの軍隊は自前で気前よく100億円を恵んでくれたとは考えにくい。
問題なのは、この費用がきわめて分かりにくくなっているという点だ。巷では見返りは思いやり予算だということになっている。だが、これはアメリカに防衛してもらっている経費も入っているので、実際のところ、いくらかかったのかはよく分からない。「友達と言って近づいてくる人には裏がある」というのは人生訓だが、どのくらい高くついているかはよく分からないのだ。
とはいえ、アメリカを一方的に悪者にするのも考えものかもしれない。日本人とアメリカ人では友達に対する考え方が違うからだ。日本人は困っている人に費用などは請求しないものだ。「お金なんかいいのよ」というのが日本人である。一方、アメリカ人は(一般的にだが)必要なものは必要だと割り切って主張するだろう。その方が長く援助が続けられるからである。ちなみに韓国人だと友達には費用は請求しないが、あとで困ったときには堂々と言ってくる。どの人種が劣っているというような問題ではなく、文化によって常識が異なるのである。
既に削除されている読売新聞の記事は「米政府は同作戦の予算が最大8000万ドル(約68億円)であることを日本政府側に伝えた」としているようだ。「予算は米国防総省が「人道支援費」として計上した。震災発生直後、ゲーツ国防長官は人道支援費として最大3500万ドル(約30億円)を充当する意向を表明していた。」とのことである。この記事がどのような意味を持つのかはよく分からない。トモダチとは言ったけど全部無料だとは思わないでねと言っているようにも思える。
アメリカ人の立場から日本人を見て「トモダチといっていくらでも甘えてくる」などと思っているかもしれない。そこで一線引かなくてはと考えるわけである。
本来なら「納税者がいくら払っているのか政治家に追求してもらいたい」などと書きたいところなのだが、それも難しいのではないだろうか。
東日本大震災当時は民主党政権だった。だから、民進党にアメリカとの関係を「明朗会計にしてくれ」といっても「お前はどうだったんだ」と言われて終わりそうである。もちろん、長年「ずぶずぶ」の関係を続けてきた自民党には何も期待できない。安倍首相や麻生副首相の言動を見ている限り、震災に対する出費はできるだけ少なく押さえたいように見える。激甚災害への指定は遅れ、補正予算を組むのにもためらいがある。消費税増税も予定通りやりたいようだ。
左翼叩きに懸命になっている人たちはほったらかしにしておいてもよいと思うのだが、あのオスプレイは高く付くんじゃないかなあくらいの認識は持っておいた方がよいと思う。被災者に配られた物資には後で高い請求書が付くかもしれないのである。それでも受け取りますか、ということだ。