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「習近平は独裁者だ!」にブリンケン国務長官が頭を抱える

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習近平国家主席とバイデン大統領の会談が終わった。表向きは関係修復のための会談だったが「目立った成果に乏しかった」と評価されている。そんななか、カメラに収められたブリンケン国務長官のある表情が注目を集めている。あからさまに嫌な顔をしているところを撮られてしまったのだ。おそらくドラマでもあんな表情は撮影できないだろうというような表情がニュース素材として出回っている。「どんなに努力してもボスは全く考えを変えてくれない」という宮仕え特有の絶望感が滲む。

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ブリンケン国務長官は日本で言えば外務大臣のような役割を果たしている。イスラエル問題ではアラブ圏の反発を受け融和に腐心してきたがイスラエル寄りの態度を崩さないバイデン大統領とネタニヤフ首相に振り回されている印象だ。ネタニヤフ首相はそんな関係を知っているようでブリンケン国務長官ではなくバイデン大統領とアメリカの世論に直接訴えかけている。結果的に「アメリカはイスラエルの戦争犯罪を許容している」という評価が生まれつつありアメリカの国際的な地位が揺らいでいる。ブリンケン国務長官だけでなく外交官たちも危機感を募らせ「警告」を発している。

特に気掛かりなのがイランとサウジアラビアの接近だ。両国は中国が仲介しているため結果的に中国が和平の中心となり、アメリカがさらに部外者として和平交渉や中東情勢から取り残されかねない。

そんな中、ワシントンポストは「アメリカが仲介してハマスとの間に5日間の停戦が実現しそうだ」と報じた。アメリカの主導的な役割を強調する内容だった。日本のメディアは「和平合意が近い」と希望的に報道しているがイスラエルはかなり抵抗しているようだ。国際社会がイスラエルの手足を縛る前にできるだけ成果を出しておこうと考えるはずである。つまり、圧力を受けてさらに攻撃を激化させかねない。ネタニヤフ首相は国内からも人質交渉が進んでいないという批判を受けておりわかりやすい成果を今すぐに示す必要がある。さらにヨルダン川西岸の情勢悪化も懸念される。軍に離反されると極右に頼るというのがこれまでの行動パターンだからである。

国際的な緊張が高まる中、APEC首脳会談がサンフランシスコで行われた。ここでバイデン大統領が中国に歩み寄りの姿勢を見せてくれればアメリカの国際的な孤立は改善されたかもしれない。確かに気球問題で途絶していた軍同士の連絡網は再開されフェンタニル問題でも中国の協力は得られた。さらに「経済」を優先しイスラエルとウクライナの問題は切り離されたため首脳宣言も発表できた。

だが、総合的な評価は「目立った進展はなかった」というものにとどまる。

会見後に記者たちはバイデン大統領が習近平国家主席のことをどう思っているのか聞きたがった。この瞬間、ブリンケン国務長官の指先は忙しく動き始める。問題の「独裁者」発言の瞬間は虚な様子で目を動かしている。上司であるはずの大統領を直視できないといった様子だった。宮仕えの苦悩が滲む。

CNNもこの表情をとらえて記事にしているが、この様子は日本でも伝えられている。毎日新聞は次のように表現する。誇張ではなく本当に顔をしかめている。

バイデン米大統領が15日の記者会見で中国の習近平国家主席を「独裁者」と呼んだ瞬間に、ブリンケン米国務長官が落胆したように顔をしかめた。

「独裁者」呼ばわりされた習近平国家主席だが中国の反応はそれほど感情的なものではなかったようだ。経済界は習近平国家主席を熱烈に歓迎している。ウォール・ストリートジャーナルなどは「中国の戦略に加担した米企業経営者たち」という社説を発表し、アメリカの経済界は習近平国家主席にへつらっていると厳しい評価を下している。

ロイターのあるコラムもアメリカの企業は中国頼みになっていて「習近平氏にお追従してみせた」と評価している。習近平国家主席はスタンディングオベーションで迎え入れられたそうだ。ロイターの記事の原題のタイトルは「習近平国家主席に豪華すぎるデザートを振る舞う」となっている。習近平国家主席に対する熱烈歓迎ぶりをデザートに例え「バイデン大統領が飲み込むのは難しいだろう」との主張である。

バイデン大統領がいくら習近平国家主席のことを独裁者だといっても中国はアメリカの経済界が中国を必要としているということがよくわかっている。外交的にもアメリカに従う国は実はそれほど多くない。安全保障理事会でイギリスはアメリカに賛同し決議を棄権したがフランスは中国と一緒に賛成票を投じている。バイデン大統領の言葉にいちいちめくじらを立てることなく「大人の対応」で乗り切れると考えているのかもしれない。

バイデン大統領の頭の中は議会対策と選挙対策でいっぱいになっている。つまり国内問題に忙殺されておりとても海外でのアメリカの評価にまで気が回っていない。おそらくブリンケン国務長官は口を酸っぱくして事情を説明しているはずだがバイデン大統領の意識を変えるには至っていないようだ。実際の大統領選挙まで一年ある。ブリンケン国務長官やアメリカ外交官たちの苦悩はまだまだ続きそうである。

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