イギリスのブラヴァマン内務大臣が解任された。もともと右寄りの発言で知られていたが、パレスチナ問題における過激な言動が特に問題視された。ロンドンでは30万人規模の親パレスチナデモが行われており世論が揺れている。
後任は外務大臣からの横滑りになる。その外務大臣の後任がキャメロン元首相である。現在は庶民院の議員ではないため、キャメロン卿として貴族に列せられた上で上院で資格を取り内閣入りする。議員でない人が外務大臣になるのは初めてではないそうだが、極めて異例と見られている。
ブラヴァマン内務大臣は普段から右寄りの姿勢で知られていた。パレスチナに同情的な30万人デモを暴力で黙らせようとした右翼から多くの逮捕者が出たことに抗議し「イギリスにはダブルスタンダードがある」などと発言していた。
保守党は支持率が落ち込んでおり次回の総選挙では政権交代もあるのではないかと言われている。火消しに走ったスナク首相はブラヴァマン内務大臣を更迭した。
代わりに外務大臣が内務大臣になる。空席の外務大臣にはブレグジット国民投票の結果を受けて政界を引退していたキャメロン氏が任命された。既に政界を引退しているため、キャメロン卿として貴族に列せられた上での登用となる。イギリスでも異例の登用になる。
キャメロン氏は党内政治を優先しブレグジットの国民投票を強行したという前科がある。国民投票をやれば残留派が勝利するだろうと言う読みは外れ結果的にイギリスのEU離脱が決まった。キャメロン氏はこの結果を受けて首相退任を発表する。
しかし後任のメイ首相もブレグジット交渉で国内をまとめられず涙の辞任に追い込まれている。
日本との大きな違いは首相が任命責任を明確にとったという点にある。辞表を出させ「事実上の更迭」ではなくはっきりと解任という形をとったようだ。しかしながらブラヴァマン氏はそもそも度重なる問題発言で知られており「スナク首相の決断は遅すぎた」と批判されている。野党は当然早く総選挙をやるべきだとの主張だ。
スナク首相がキャメロン氏を外務大臣にした狙いは必ずしも明らかではない。今では多くのイギリス人がブレグジットは間違いだったと感じているため。キャメロン氏の再登板に苦々しい思いをする人は少なくないはずだ。結果的にイギリスをブレグジットに追い込んだ形になったキャメロン氏がよりにもよって貴族になって政界に戻ってきたということになる。
「私たちを一気に崩壊させた」イギリスのEU離脱から3年も厳しい声 約16兆円の損失との試算も(TBS Newsdig)
今回の異例の登用はイギリスでも波紋を呼んでいるようだ。アメリカのAP通信は「なぜ議員でもないキャメロン氏なのだ?」として首相の説明責任が問われるとの短い記事を出している。
He is not even a lawmaker, and his return to senior government leadership as an unelected member of Parliament’s House of Lords, though not unprecedented, is rare and has prompted concerns about accountability.
- Why David Cameron is a surprising choice as new UK foreign policy chief after fateful Brexit vote(AP)