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高まる反発を背景に フランスのマクロン大統領がガザ地区の停戦を提案

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10月7日にハマスがイスラエルを攻撃してから一ヶ月が経過した。日本のメディアの扱いは徐々に減ってきている印象だが、欧米のニュースではガザ地区におけるイスラエルの容赦ない攻撃が連日報道されている。欧米にはユダヤ系の住民やイスラム系・アラブ系の移民も多く「他人事ではない」という気持ちがあるのだろう。

バイデン大統領は1日に4時間の停戦(ポーズ)を外交的に勝ち取ったと宣伝する。一方でマクロン大統領は詳細は明らかではないものの停戦を提案した。ヨーロッパにはイスラエルを応援する以外の選択肢はない。それでも停戦を呼びかける裏にはこのままでゆくと紛争解決後のイスラエルを応援しにくくなるという気持ちがある。

つまり、それくらい人道的に許容できないことが行われているということになる。

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中間選挙での劣勢が伝えられるバイデン大統領が記者団の呼びかけに応じた。選挙キャンペーンににこやかな表情が張り付いた状態になっており「ネタニヤフ首相をコントロールできていないのでは?」との質問に何故か笑顔で「もうちょっと長く(休戦期間が)取れていればよかったね」と応じた。現実に起こっていることと笑顔の間には異様な落差がある。例えばABCニュースでは避難民が多く暮らす病院の敷地にイスラエルからの空爆が行われる様子などが報じられている。文字で読むと実感がわかないだろうが映像で見るとニュアンスが掴みやすい。

おそらく国内でもかなり反発が強まっているのだろう。マクロン大統領が「ガザ地区の民間人の犠牲は看過できない」として停戦を呼びかけた。停戦が具体的に何を示すのかは定かではないがバイデン大統領のいう「ポーズ」とは段階が違う「停戦」だ。このまま現在の状況を放置し続けると、紛争終結後イスラエルを応援しにくくなるという気持ちがあるのかもしれない。

ユダヤ人迫害の歴史のあるヨーロッパにはイスラエル支援以外の選択肢はない。例えば「水晶の夜事件」85周年の式典に参加したショルツ首相は改めてイスラエル支持を訴えた。

しかしそれでも今の状態が続けば戦争犯罪の共犯になってしまうという気持ちがあるのだろう。国内の反発もさることながらアラブ・イスラム圏の対応はますます厳しいものになっているようだ。選挙戦に夢中になり国際情勢や国際世論から遠ざかりつつあるバイデン大統領に対して外交筋からは盛んにメッセージが送られている。

考えてみると不思議な状況だ。イスラエルはアメリカ合衆国とは独立した国である。だが「民間人攻撃」の怒りはイスラエルだけでなくアメリカ合衆国やその他の西側諸国にも向かいつつある。だからこそ「共犯になりたくない」という気持ちが生まれマクロン大統領のような発言が出てくるのだろう。

草の根での反発も広がる。

既にアメリカ合衆国には民主党・共和党の間の争いから各種のデモが盛んに行われるようになっている。既に組織化されているのでイスラエル・パレスチナのどちらかに立ったデモが起こりやすい状況だ。これは公民権運動が盛り上がりがベトナム反戦運動に連動して激化して行った時と同じような状況といえる。ハーバード大学では学生たちがパレスチナの側に共感し、大人たち(学校や卒業生)と衝突するような事態になっている。運動は各地の大学に広がっているようだ。

ハマスの奇襲から一ヶ月が経ち日本のメディアのカバーは減りつつある印象だ。全く扱われないということはないが、民間人が攻撃される現場などの映像が直接流されることはない。また、首脳たちのインタビュー映像がそのまま放送される機会もない。そもそも日本の記者たちが岸田総理に連日イスラエル情勢について質問をするというようなことも行われていない。

歴史的につながりが薄い上に、ニュース番組側が「あまりにも生々しすぎると視聴者から離反される」と自主規制をしている可能性もありそうだ。

そんな日本から見ていると「結局武力で圧倒しているイスラエルが勝てば欧米先進国は民間人の虐殺を無かったことにして先に進むのではないか」と思える。つまり結果的に紛争が治れば過去の問題だと見做され「無かったこと」にできるのではということだ。

だがマクロン大統領の発言を見る限り、欧米はかなり難しい立場に置かれている。どのような結果になっても禍根が残る結果になりそうだ。

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