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やっぱりイスラエルは原爆を持っていた ガザ地区での使用を主張した閣僚が政府会議を出禁に

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イスラエルの暴走が止まらない。既に戦争犯罪との評価も出ているイスラエルだが、ガザ地区への侵攻は続いている。ついにイスラエルはガザからパレスチナ難民を追い出そうとしているという記事まで出てきた全てネタニヤフ首相と戦後のイスラエルの国際的な地位にネガティブな効果をもたらしそうだがそうはなっていない。世界が乱世に入った象徴的な出来事と言えるだろう。さらに「ガザに原爆を落とすべきだ」と主張する閣僚まででてきた。さすがに政府会議を出禁になったそうだが。だが、やはりイスラエルは原爆を持っていたのだ。この発言は今後周辺国の状況をさらに複雑なものにするはずだ。

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イスラエルはガザ地区への空爆を続けている。当初イスラエル全面支持を訴えてきたアメリカ合衆国は国際世論・国内世論の高まりを受けて抑制姿勢に入っている。本国での調整を終えたブリンケン国務長官は、イスラエル・アラブ・トルコを周り「一時休戦」を働きかけているが、イスラエルは一蹴したと伝えられており、アラブ諸国もパレスチナ難民の避難は受け入れない姿勢だ。既にネタニヤフ首相はバイデン大統領からエンドースされた状態になっている。すっかり手詰まりのバイデン大統領は「事態は進展している」と主張するが具体的な成果は示せないままだ。

さらに、ガザ地区からエジプト領シナイ半島に難民を追い出そうとしているという文書まで出てきた。

普通に考えるとこれはイスラエルの国際的立場を悪くするだろう。だがそうはなっていない。アメリカ合衆国は大統領選挙を控えている。ユダヤ系は大口の支援者なので両陣営ともイスラエル支持の看板を下ろせない。ネタニヤフ首相はそれがよくわかっている。

イスラエルはアメリカの支援があれば戦争を継続できる。このため無茶苦茶な要求を次から次へと出してきて「レッドライン」を下げることができる状態になっている。平時には提案できなかったことが有事には提案できてしまう。

今回の原爆発言について紹介する読売新聞の記事には識者のコメントがついているが、どれもイスラエルの原爆保有を前提とする内容になっている。否定をしている人は誰もいない。こうしてイスラエルは国際世論への反発なく核兵器保有国であるという既成事実を世界に受け入れさせようとしており、それは成功しつつある。イスラエルは原爆を持っていていざという時にそれを使うかもしれない。

逆にバイデン政権にとってはかなりネガティブな状況となっている。当初は強いイスラエル支持の姿勢を表明してしまい、これが民主党の若手支持者たちやアラブ系・イスラム系アメリカ人の反発を呼んでいる。立場を調整しようとあの手この手だが「一旦停止(ポーズ)」に説得力はない。逆に止めたいのに止められないというアメリカの姿は弱体化とみなされる。

ガザからパレスチナ人を一掃するという計画はアラブの周辺国との間の緊張を高めるだろう。加えて、周辺各国では核兵器開発・配備の欲求が膨らむだろう。イランの核兵器開発の元々の動機はイスラエルの核兵器への対抗だ。さらにサウジアラビアもアメリカの体制保障を求めている。だから核兵器開発のような極端な行動には出ない。アブラハム合意が破綻した今、イスラエルの閣僚が平気で核兵器の使用を仄めかせば均衡は容易に崩れてしまう。

今回の一連の動きはハマスの暴力によって喚起されている。国際社会はパレスチナが置かれた兆候に気づき長年のイスラエルの占領政策にも厳しい目が向けられている。一方のイスラエルもハマスの攻撃でパレスチナ侵攻の大義名分を得た。世界にとって時期も最悪だった。大統領選挙目前のアメリカ合衆国はユダヤ系の反発をうむ支援停止に踏み切れない。ネタニヤフ首相はこれがよくわかっているのだ。極めて理不尽だ。

全てネタニヤフ首相が計画したものとは思えないが、結果的に「ブレない」ことでその立場は強いものになっている。ただし「そもそも今回の惨事はネタニヤフ首相に原因がある」という声はイスラエル国内でも強いようだ。BBCが分析記事を出している。ブレたり立ち止まったりするとネタニヤフ首相はそこで「終わり」になってしまうので、その結果が人類の破局であろうがこのまま突き進むしかない。マインドセットとしては日本の戦国時代に近い。

この姿勢はロシアのプーチン大統領に似ている。ウクライナへの一方的な侵攻が行われた時、世界はこぞってプーチン大統領を非難した。だが結果的に国際世論の同情に頼っていたウクライナの方が却って厳しい状況に置かれている。ゼレンスキー大統領の立場はアメリカとヨーロッパの支援によって支えられている。

「現状変更を試みたものが国際社会から排除される」という常識が大きく揺らいでいることがわかる。秩序維持のコストは直線的に増えてゆくのではない。様々な事象が複雑に絡み合い指数関数的に伸びてゆく。

発散するか収束するか、二極化するか管理不能になるまで拡大するか。

我々は今そんな世界の入り口にいるということなのかもしれない。

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