ざっくり解説 時々深掘り

うっすらとした笑みも浮かべ「もうSNSは気にしない」 岸田総理の定額減税と賃上げの説明を今一度整理してみる

Xで投稿をシェア

カテゴリー:

補正予算をめぐる最初の説明が終了した。自民党の中からも「もう好きにやってもらうしかないが結果責任は取ってほしい」と言う声が聞かれるようになったそうだ。とにかく説明がわかりにくく岸田総理が一人でボールを持って走っているような印象を持つ。どこか思い詰めたような吹っ切れたような笑みも浮かべるようになった。

ここでふと冷静になった。とにかく何らかの信念があるようだが批判記事ばかりが目立ち「そもそも岸田さんが何を言っているのか」についての報道が少ない。発言を調べてみた。

一通り記事を読んでみて、言っていることは極めてシンプルだと感じた。定額減税で消費に火がつき税収が上向くと言う見込みがあるようだ。ただしプランBはなくまたなぜそうなるのかと言う根拠には乏しい。論理的な説明がなく用語の使い方も不明確だったりする。

直近の記者会見の報道を読む限り、岸田総理は「もうSNSで何を言われても気にしない」と考えるようになっているようだ。こうなると総理大臣を止められる人は誰もいないだろう。

Follow on LinkedIn

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

|サイトトップ| |国内政治| |国際| |経済|






まず10月30日の記事を見る。減税の目的は賃上げ呼びかけが目標だとした。政府が一時的に所得減税をすれば経済界・労働界はそれに応えるだろうという見込みがある。己が信じる道を突き進めば周囲もついてくると考えている。

またデフレ脱却を完成するためにはどうしても定額減税でなければならない。

そして賃上げが実現すれば税収入が上向くはずだからその後に防衛増税をするのは理にかなっていると説明している。エンジンで言えば最初にプラグで点火すれば自然に景気の好循環が回り始めるだろうと言う説明だ。

10月31日の説明もこれを踏襲している。蓮舫氏への回答として「賃上げは2024年から2025年にかけて定着するという見方が大勢である」と断定した上でその流れを作るために定額減税で「経済を盛り上げる」ことが必要だと説明した。また4万円の減税は大きな額であるとして効果に期待した。

この見込み自体は必ずしも間違っていないそうだ。ひるおび!に出演したエコノミストの永濱利廣氏は「このまま賃金上昇が続くと仮定すればインフレ率は落ち着く」というエコノミストは多いと説明していた。ただしこれは賃金上昇が上向くのではなくインフレ率が落ち込むことで結果的に「追いつく」と言う説明だ。田崎史郎氏は「でも去年も確か政府はそんな説明をしていた」と疑問を投げかけていた。世界情勢の変化により経済の見通しが影響を受けている。エコノミストの予想は「今の状態が続くならば」という前提がつくのだからプランBも必要ということなのだろう。

岸田総理がこれを正しく理解しているのか、また世界情勢の変化に合わせたプランBを持っているのかなどは発言からは読み取れない。また日銀は「価格転嫁しにくい慣行が残っており賃上げが定着するかは微妙な情勢だ」と分析している。こうした「慣行」について岸田総理がどう認識しているかも発言からは見えてこない。

つまり細かい理論構成についてはあまり気にしておらず「結果だけ」を聞いて作戦を立てているのではないかと思える。そして総理大臣たる自分が思い切って実行すれば周りは必ずついてくると信じている。だから代替策になるプランBがない。

11月1日になると発言がやや変わる。言っていることは同じだ。だが、これまで「定額減税で消費意欲を喚起した結果」「景気の循環が起きる」と言う説明を「この時期になると賃金が上がり始めるのでそれを盛り上げるために所得減税を実施する」と言うようになったようだ。どうやら因果関係が怪しくなっているようだ。

説明としては「来年は賃上げにとって重要な年なのでそれにつなげるためにそのタイミングで減税を考える」と言っている。賃上げと減税の因果関係やメカニズムは不明だが定額減税をすれば賃上げが起きると考えているようだ。そしてそれは起爆剤に過ぎないのだから一回限りで構わないという考えは変わらない。

さらに一貫して「所得税減税」が最もわかりやすいと主張している。子育て世帯が希望を持つことが必要なのだから政府が支出を増やしてそれを支えなければならないと説明した。また消費税については社会保障に使うという議論が終わっているのだからその結果は尊重されなけれなならないと説明している。

NHKの採用した説明は「来年になれば実質賃金がプラスになると考えられる」となっている。共同通信の採用している説明では「定額減税をやれば経済と労働界がついてくる」としていた。とにかく「来年は賃上げが起きることになっているので減税は1度で済む」という結論は変わらないが因果関係が入れ替わっている。

元々は増税メガネという評価を気にして所属税減税という手法にたどり着いたのだと思うのだが、本人の中ではそれなりの理論構築が進み「自分が信念を持って思い切ったことをやればみんながついてくるはずだ」と考えていることがわかる。そして賃上げさえ実現できれば人々の不安は解消されるのだから全ての問題は無くなってしまうと考えている。確かにその信念はそれほど複雑なものではない。従って「なぜこんな簡単な説明が理解されないのだろう」と考えている可能性はある。ただ色々検証すると細かい点にあやふやさが残っている。時間をかけて検討したプランでないことだけは確かなようだ。

国会での最初の段階は終わった。次は補正予算の編成で給付金の手当てをする。減税については税制大綱に書き込み来年度の本予算での実現を目指す。それについて説明した記者会見では次のように述べたそうだ。うっすらと笑みを浮かべ「もうSNSは気にしない」と表明した。冒頭で紹介したように自民党内部でも理解が広がらず、SNSでの評判も悪いままだ。支持率もこのままの低水準が定着しそうだ。

岸田文雄首相は2日の記者会見で、自身が交流サイト(SNS)などで「増税メガネ」とやゆされていることに関し「どんなふうに呼ばれても構わない。やるべきだと信じることをやる」と訴えた。時折笑みを浮かべ、最優先課題と位置付ける経済対策の実現に注力する姿勢をアピールした。

開き直った総理大臣を止めることができるものは何もない。支持率が下がろうが選挙さえなければ今の議席は維持される。うっすらとした笑みの理由は想像するしかないが、今は来年の総裁選挙までとにかく自分の信じた道を突き進むということなのだろう。

コンテンツのリクエストや誤字脱字の報告はこちらまで

Xで投稿をシェア


Comments

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です