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自民党も民進党も同一労働同一賃金を達成できないと思う訳

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アベノミクスの破綻が明白になり、最近の安倍政権は経済対策を声高に唄わなくなった。代わりに出てきたのが格差対策だ。施政方針演説で「同一労働・同一賃金」へとの方針を打ち出した。
だが、安倍政権は本気で同一労働・同一賃金を目指すとは思えない。そもそも政府が正規・非正規格差を助長してきた歴史があるからだ。Synodosのこの記事によると、公務員の中に非正規公務員が広がりつつあるのだという。特に顕著なのは地方だ。1/3はすでに非正規だ。非正規公務員は1/4程度の賃金で働いているのだという。その水準はいわゆる「ワープア」である。
非正規労働者は顧客接点を中心に広がっている。ハローワークの職員の3/5は非正規。その他にも保育・学童・消費生活・図書館などで非正規雇用が進んでいる。貧しい人たちや仕事のない人たちの世話をしているのは同じような境遇の人たちなのである。任期は1年なので、ハローワークで相談に乗っていた人が4月1日から仕事探しをしなければならないということもよくあるらしい。
もし非正規雇用の問題が民間だけのものなら、政府は企業に「非正規雇用をやめなさい」と指導するだけでよい。それが達成できなければ企業のせいである。だが、政府や地方自治体の非正規労働者の問題では、彼らは当事者なのだ。
自民党は「民営化」で票を獲得してきた歴史がある。主なものは国鉄と郵政だった。国民は「身を切る改革」を喜ぶ傾向があるのだが、議員の定数を減らしたり待遇を悪くするのは避けたい。そこでスケープゴートとして選ばれるのが公務員である。だが、不況が長引くと福祉の現場の「需要」は高まる。最近では行政指導の必要性も叫ばれている。その穴埋めをしているのが、非正規労働者なのだ。
安倍政権が「同一労働・同一賃金」を叫んでいるということは、もはや「選挙公約は口当たりの良いことだけを言っていればよいのだ」としか考えていないことを意味している。つまり、最初からやる気はないということである。もし、安倍政権がやる気を出したら、地方行政は明日から止まってしまうだろう。非正規公務員にまわす金の手当などはしていないからだ。「やる気だけでなんとかしろ」と言っているわけで、これは竹槍でB29を落とせと言っているようなものである。
非正規公務員をなくすということは、住民サービスを低下させるか、増税かの二択になる。安倍政権はこれを隠蔽したまま選挙を進めようとしている。テレビや新聞もこの問題を刺激したくない。特にテレビはプロダクションに多くの非正規労働者を抱えている。もし「非正規=悪」ということになれば、テレビ局の打ち壊し運動が起るだろう。彼らもこの問題は刺激したくないはずである。
では民進党が同一労働・同一賃金を達成できるかと問われれば、それも怪しいと言わざるを得ない。彼らは労働組合や公務員労働者が支持母体になっているからだ。その意味では、社会民主主義さえも「特権階級のお遊び」になっているのである。
 


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