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「2万円だいや4万円だ」続く所得減税狂想曲 その裏でひっそりと始まった「国民年金納付は65歳まで」議論

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岸田総理が国民にコストカット型経済からの脱却を訴えた所信表明演説の内容はマスコミからすっかりスルーされた。人々は所得減税の議論に夢中になり、SNSでは「真面目に働いている我々が4万円で低所得世帯が7万円をもらえるのはおかしい」と言う不満も聞かれる。政治がSNSの引っ張られ衆愚的な議論に巻き込まれておりそのほかの政策議論が全く置き去りになっている印象だ。その裏で「国民年金支払いを65歳まで引き伸ばそう」という議論が始まっている。社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)の部会の議論だそうだ。GDPも世界第四位となり経済が自由落下してゆく中では不可避なことなのかもしれないが「もう少しどうにかならないのかな」と言う気がする。モデレーションなき政治議論にはどこか悲哀がつきまとう。

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SNSの「増税メガネ」批判から始まった岸田総理の「還元議論」が迷走している。当初公明党が2万円以上と提案しニュースになった。その後所得税は4万円で給付は7万円という報道が出た。さらに所得税3万円と言う報道が出たので「4万円が3万円になったのか」と思ったのだが、所得税が3万円で住民税が1万円になり合計で4万円という「内訳」の話だった。共同通信の出典は不明である。

野党はこのSNS世論に引っ張られた議論に引き摺り込まれ「減税をやるのかやらないのか」と総理に迫っていた。総理大臣の答えは「まだ正式な指示は出していない」というものだ。総理大臣が指示を出しているわけでもないのに金額の議論がでてきてそれが一人歩きしていることになる。さらにそれを隣の人と比べ「働いている俺より働いていないあいつの方がもらうのはおかしい」というような議論が展開されている。人々は額面と隣の人との比較で頭がいっぱいになり政策の議論には全く興味を持たなくなる。

政治の側も振り回されている。「所得制限をすべきだ(世耕弘成参議院幹事長)」とか「インフレなのに減税とは官邸も好き勝手言い過ぎだ」などの意見が出ており、それもそのまま報道されている。

情報ワイドショー「ひるおび」で田崎史郎氏が「岸田総理をタイトルにしても週刊誌が売れなくなった」という声を紹介していた。選挙の取材でも「岸田総理の言っていることが届かなくなっている」という声があったようだ。確かにブログ記事でも岸田総理の発信を主語にすると全く読まれないことが多くある。典型的な総理の「求心力の低下」である。

岸田総理大臣の発言はわかりやすく迷走している。「税金をたくさんもらったから国民に返さなければならない」などとおかしな議論を展開中だ。本来は国民生活を向上しその税収分で財政を再建するという話だったのだが、なぜか「予定より多くもらってしまったから2年分をまとめてお返しするのだ」と話が変わってしまっているそうだ。田崎史郎氏が「ひるおび」この説明をしたときに「いくら何でも無理筋だろう」と思ったのだが、実際に記事になっていた。総理大臣が自らそう説明したのだという。

還元は結構なことだが防衛財源の捻出目標も財政再建の目標も維持されたままだ。所信表明演説の時から妙な高揚感に包まれている岸田総理には、もはや全体の整合性を考える力は残っていないのかもしれない。こうなると後先考えずに突発的に解散してしまうのではないかということも気になる。

本来の衆愚政治(ポピュリズム)とは政治家が大衆の心を掴むために迎合的な政策を発信することを意味している。だが今回の政治議論はそれとは若干異なる。SNSのまとまりのない声を政治家が拾いまとまりのない発信をする。そしてそれに野党がまず巻き込まれる。モデレーターもアジテーターもいない全く新しい形のネット衆愚政治である。掴みどころも終着点もない。

誰も議論を先導する人がいないのだからシステムは自由落下してゆく。

ひっそりと別の記事を見つけた。おそらくしばらくの間ネットがこれに注目することはないのだろうが、国民年金の支払いを65歳まで伸ばす案が厚生労働省の部会で検討されているという。検討会では目立った反対意見がでなかったそうである。まだ政府方針として決まったわけではないので大きな騒ぎになることはないだろうが、おそらくやがて「政権の新しい負担増提案」と見做され報道されるはずだ。

だが、これも「働いている人は既に65歳まで払っているのだから文句を言うな」というように隣の人との比較の議論に落ち着いてゆくのかもしれない。政府は副業を奨励しておりフリーランスで働く人も増えてゆくだろう。現在の勤労者の中にも影響を受ける人が出てくるはずだ。

60歳以降に働かない人や自営業者らは保険料負担が長引くことになり、反発も予想される。65歳まで働く会社員らは今も保険料を払っており延長しても負担は変わらない。

GDPでもドイツに抜かれて4位に転落することが確実になっている。モデレーションなき政治の行く末にはどこか悲哀がつきまとう。

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Comments

“「2万円だいや4万円だ」続く所得減税狂想曲 その裏でひっそりと始まった「国民年金納付は65歳まで」議論” への2件のフィードバック

  1. 増税クソメガネのアバター
    増税クソメガネ

    「2万円だいや4万円だ」囮で、
    本命の「国民年金納付は65歳まで」
    から国民の意識をそらすためか。
    ほんと増税メガネと財務省と自民党は汚いね。
    金を取る事しか考えてない。

    1. おとりと言うことはないと思いたいですが、テレビが新聞が騒ぐまではなかなか気がつかないと言う人も多いですよね。コメントありがとうございました。

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