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イスラエルのガザ侵攻回避に向けて静かに方向転換を図るアメリカ合衆国と世界

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ハマスの暴力的なテロ攻撃から始まった今回の一連の騒ぎだが、内容が知られるようになるにつれてイスラエルへの国際世論の反発が強まっている。もちろんそんな法廷はないのだが「国際世論法廷」の被告席にイスラエルが座らされその後見人としてアメリカ合衆国が連座しそうな状況になっていた。

そんななかバイデン大統領に代わってブリンケン国務長官が侵攻抑止に向けて動き出しているようだ。中国などと連携し侵攻を止めようとしている。この動きに国防長官も参加しイスラエル軍隊に働きかけている。さらにマクロン大統領はイスラエルに代わり国際的な仕組みを適用ハマス掃討を行うべきだと提案する。さまざまな侵攻回避の動きを受けて原油市場わずかながら反応している。

あとはアメリカ国内の政治をバイデン大統領がどのようにまとめることができるかにかかっている。アメリカの政治は内向きになりがちで国際世論とは異なった世論が形成されることがある。

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今回の一連の動きは「ハマスの暴力的なテロ」から始まっており国際的には全く容認ができない。だが内容が知られるにつれて今の状況を作ったのは誰かと言うよう議論が始まった。ガザに対する兵糧攻めや集団的懲罰などの内容が知られるにつれイスラエルに対する国際世論の風当たりは強くなりつつある。

バイデン大統領はこの状況を大統領選挙キャンペーンと予算獲得の機会としか考えていないようなところがみられた。バイデン大統領が高齢のためなのかあるいは元からの性格なのかなどはわからないが一度作ったスキームや固定観念からの脱却することが難しくなっているようでホワイトハウスは「今は停戦の時ではない」と主張し続けている。結果的にイスラエルの行動を容認し「被告の後見人」という立場に追い込まれていた。

だが、この雰囲気が変わりつつある。アメリカの政治は層が分厚い。まず、オバマ元大統領が「イスラエルがこのまま侵攻するとかえって好ましくない結果になる可能性がある」と指摘した。国際的な非難が高まる上に軍事的にもかなり難しい結果に直面する可能性が高いとの指摘で状況を冷静に見ている。

さらにブリンケン国務長官が国連で忙しい動きを見せている。まず中国を和平に引き込もうとしている。王毅政治局員もイスラエルとパレスチナの外務大臣と電話で連絡しワシントンを訪問する予定だ。さらに国連安保理事会で「一時停戦を支持する」とも表明したようだ。バイデン大統領の主張とはかなり異なる独自の動きだ。

オースチン国防長官もメディアに対して「このまま市街戦に突入すればイスラエルにも被害が出るだろう」との見通しを伝えてたうえで、イスラエル軍には幹部を送り込み説得を試みている。ホワイトハウスの声明とは裏腹に、閣僚レベルでは表立ってイスラエルの侵攻を抑える動きが見られるようになった。背景に選挙がないために独自の動きができるのだろう。

欧米の役割分担も機能している。

アメリカがイスラエルを抑えている間に、マクロン大統領は「ISを掃討するときに使ったアメリカ主導の国際的枠組み」をハマス掃討にも使ってはどうかとネタニヤフ首相に進言したようだ。イスラエルが単独で作戦を実行すると抑えが効かなくなる。このため国際的な枠組みの中で侵攻作戦を管理しようとしているのかもしれない。枠組みを変える提案ができるのがマクロン大統領の強みである。

もちろんIS掃討の枠組みはアメリカ主導なので「米兵の犠牲」を嫌うバイデン大統領がこれに乗るかどうかはよくわからない。ブリンケン国務長官は国際社会での空気に従って動いているが、アメリカの国内政治にはまた別のコンテクストがある。このためホワイトハウスと国際世論の乖離は政権内部に亀裂をもたらす可能性がある。

またオランダのルッテ首相はネタニヤフ首相に人道支援の重要性を訴えている。

中国・習近平体制では「習近平国家主席が入ったことが絶対」なのでこうした修正の動きは起こらない。だが個人主義のアメリカでは状況を客観的に見ているスタッフたちが権限をもとに動き回りバイデン大統領の方針が修正される。健全なチェックアンドバランスだ。またルッテ首相やマクロン大統領のように側面からそれを支援する動きもある。これが日本を除く欧米先進国と中国が悲劇を防ぐために「ワンチーム」として動き始めている。

純粋に日本の国益を考えるとこの動きは非常に厄介だ。日本に代わり中国が欧米の安全保障上のパートナーとして浮上しているからだ。アメリカを追認し「面倒なものからはできるだけ距離を置く」という外交戦略を持つ日本はこの動きに入ることはできない。特に岸田総理の間はこの動きを挽回することは難しいのではないかと思われる。日本は既にG7の枠組みで発せられた共同声明から除外されている。日本の国益を考えると痛恨の極みといえそうだが悲劇を防ぐためには仕方のないことなのかもしれない。ただここまで日本外しが進展すると、おそらく「除外されていること」には何らかの理由があるのだろうと思える。岸田総理は支持率の挽回に夢中になっており国際的な世論に気を回す余裕がないのかもしれない。

市場も「状況が改善しつつあるようだ」として反応している。全面的なリスク回避の動きは広がっていないが原油の先物の価格がやや下落した。

最後に、国戦争犯罪を裁くICJではイスラエルのパレスチナ占領について公聴会を開くことになった。長年国際社会が黙認してきたことがガザの悲劇をうんだという認識があるはずだ。ここでイスラエルを黙認してしまうと密閉されたガザでひどい惨劇が起きる可能性は極めて高かった。公聴会は2月から始まるそうだ。

ハマスの暴力的なテロがこうした動きのきっかけになったことに割り切れない思いを抱く人は多いかもしれない。結果的に暴力によってこれまで見過ごされてきたものに光が当たっている。

だがいずれにせよイスラエルの国際的な立場を守りつつイスラエルの民間人の犠牲を防ぐのは非常に重要だ。さらにガザ地区に取り残されている220万人が逃げ場のないままでハマス掃討に巻き込まれるのを防ぐことも必要である。日本を除く先進国と中国はそのために今も活発にあらゆる可能性を模索していると言えるのかもしれない。今後も国際社会の動きを注視したい。

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