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条約締結と国民の合意

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TPPの議論を見てあきれている。安倍政権は国民に条約締結に至る経緯について説明するつもりがないようだ。どうやらアメリカ当局を忖度しているようである。もし、これが表に出れば大規模な反米運動につながるような、一方的な押しつけがあったのだろう。
石原担当大臣は味わい深い役割を果たしている。にやにや笑いながら「何も申し上げることはない」との答弁を繰り返した。「嘘、この人笑ってる」と思って二度見したらやっぱり笑っていた。
この人は無力で才能がない。それ故に言質を取られることだけを恐れているようだ。だが、自分の無力感を受け止めることができないので、それをシニカルな笑いに変えているように見えた。「最後は金目でしょ」で謝罪したときにも、笑いを浮かべていた。
真っ黒な資料だけでもインパクト十分だが、昨日の国会審議はそれに留まらなかった。国民には秘密にすると言っているのだが、委員長を勤めている西川公也氏が「暴露本」を出版するらしい。野党はゲラとおぼしきものを振りかざして西川委員長を問いつめていた。西川さんは得意げに出版するつもりだったようだが、国会審議にどのような影響を与えるのかを考えていなかったかに見えるのだが、もしかしたら「自爆テロ」なのかもしれない。
そもそも「アメリカから押し付けられたルール」なのだが、当事者のアメリカ人はTPPに懐疑的だ。つまり、アメリカと一緒に共栄圏を作ろうという構想はすでに破綻しているのだ。日本の農業従事者にとっても好ましくない取り決めなのだから、潰して困る人もいない。
国民には「守秘義務」を盾に何も語らないのだが、当事者は暴露本を出して印税をせしめようとしているわけで、もうめちゃくちゃとしか言いようがない。結局、守秘義務などというものは存在しないのだろう。
安倍首相は「TPPで規制がなくなれば、やり取りが自由になってイノベーションが活発になる」と言っている。だが、これは根本的に間違っている。イノベーションが起こり、社会でシェアされるためには、いくつかの要件がある。その最低条件は国民が「buy in」していることだ。イノベーションはマネジメント不能で自発的な活動なので、国民が「よし、社会を良くしてやろう」と思わなければイノベーションなど起りようがないのだ。
もし仮にTPPがよい条約だったとすれば、安倍首相は国民にその良さを説明すべきだ。経済活性化の原資は国民のやる気だからである。だが、この人にはそのような意欲もなければ能力もないのだろう。そのために過程を開示できない。これは、密約(傍証を積み重ねればかなりあけすけなものだが)だった安保法制によく似ている。あの黒塗り資料は「安倍首相のリーダーシップのなさ」を示唆しているのである。
リーダーシップのない安倍首相はなんでも秘密にしたがる。先日もクルーグマン教授に「これはオフレコだから」と言い含めたが、クルーグマン教授はこれを無視した。自分の発言の権利は自分が持っているのだから、どのように使おうとかまわない。クルーグマン教授は自分の発言に自信があったから公開できたのだ。
ということで、安倍政権の崩壊は始まっている。こうなったら参議院選挙では大勝してほしいものだと思う。多数の新人議員(なんとかチルドレンと呼ばれ騒ぎを起こす人が出てくる)や長老たちが入り乱れて、なんだか訳の分からない暴走が始まるのではないかと思う。
マスコミもニュースソースにありつきたいために安倍政権へのコミットメントを強めることになるだろう。政権がコントロールできなくなれば秘密は増えるだろう。後で安倍政権が倒れたときに「私は知らなかった」というのではないか思う。この人たちが公開処刑されるのを見るのも、また楽しい娯楽になるかもしれない。


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