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自民党の終わりの始まり

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ここ1年ほど、自民党の政策に反対する文章ばかり書いていた。安保法制などは「なんとなく怪しいが、証明もしきれない」というようなところがある。証明できないと、なんとなくすっきりしない気持ちが残りいろいろと書いてしまうのだ。
だが、ここ数ヶ月間、この気分が薄れつつある。自民党の終わりが見えてきたからだ。これは証明の必要がない。むしろ自民党がなくなったあと混乱なく日本の政治が成立するためにはどうすればよいかを考える必要がある。変化は思ったより急激に進むのではないか。
その兆候の一つがTPPの黒塗り文書だ。TPPは自由貿易協定であり、日本の国益ということになっている。もしそれが本当なら、スティグリッツ教授が言うように自由貿易協定であれば「関税なくす」「〜までにやる」くらいの協定書にすればよいはずなのだが、協定文書は分厚く日本語にもなっていない。そして政府が提出した資料は黒塗りされていて「ここまで黒いとは思わなかった」という驚きの声が挙っているという。国益に資するなら隠す必要はないはずだ。
常識的に考えて、こんな協定が各国で批准されるはずはない。アメリカ大統領選挙ではすべてのメジャーな候補者たちから反対されている。その他の国でも事情は似たようなものになるだろう。だから、もはや細かな協定案について考察する必要はない。「黒塗りの文書にサインしろ」というのは詐欺師だけなのだから、安倍政権は詐欺に加担しているか、だまされているのだろう。黒塗りが開示されるのは何か起きたときだが、自民党政権は「知らなかった」とか「我々も騙された」というのだろうか。
自由貿易論者はTPPに賛成なのだろうが、この主張は取り下げた方が良い。何かトラブルが起きれば自由貿易そのものへの懐疑論が出てくるはずだ。政府は政権が変わっても過去に結んだ条約に対して責任を持つのだから、TPPから抜けるために残された道は政府の転覆だけになる。だが、常識的に考えて経済鎖国が日本の国益に資するとは思えないのだから、せめて自由貿易権を健全に保つ努力をしなければならない。
自由主義社会がぼろぼろになっているのは経済だけではない。国防上も大きな転機を迎えつつあるようだ。トランプ候補の支持者たちに見られるように、少なくない数のアメリカ人が「アメリカは世界の平和を守るために多額の資金を投入するべきではないのではないか」と考えているらしい。
経済と国防を分けて考える人もいるだろうが、この2つは不可分の関係だ。アメリカが繁栄しているのは、アメリカが基軸通貨国だからだ。どの国家も財を購入するためにドルを持つ必要がある。そこでアメリカはいくら借金をしても破綻することがない。だが、ドル以外でも財を購入できるようになれば、アメリカに借金をする必要はなくなる。
アメリカが基軸通貨国であるためには巨額の軍事費を支出して世界各地にある権益を保護する必要がある。これはアメリカの外から見れば明白なのだが、当事者はそうは思っていないようだ。そこで「アメリカの権益を守るために、日本にも協力しろ」というような話になるのだろう。このスキームは既に破綻しかけている。
つまり、安保法制も強引なTPPもアメリカが支えてきた自由主義社会が崩壊しかかっているということを示唆している。自民党はもともとアメリカが作った政党であり、アメリカと寄り添うことで権力を維持してきた。つまり、アメリカ中心の自由主義社会が崩壊してしまうということは党が政権を維持する基盤を失ってしまうということになる。
自民党がこうした歴史的転換を自覚しているのなら、生き残りは可能かもしれない。だが、安倍政権が国民に情報を開示しないままでTPPを推進しようとしているのを見る限り、世界で何が起きているかがよくわかっていないようだ。
このままの状態が続けば、安倍政権は自らが望まない形で「戦後レジームからの卒業」を余儀なくされることになるだろう。


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