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麻生太郎大臣は言った – 希望は戦争だと

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クルーグマン教授と日本政府のやり取りが日本語になったので読んでみた。なぜか新聞社は伝えず有志が翻訳したものだ。誤訳もありうるということなので興味のある方は原文を当たって見るのもいいかもしれない。ポイントはいくつかあると思う。
一つ目のポイントは麻生太郎財務大臣が「1930年代のアメリカはケインズ的政策でもデフレから脱却できなかったが、戦争で景気を回復させた」と言った点だ。単に歴史的認識を披瀝しているだけなのだが、捉えようによっては(つまり、曲解すれば)戦争を起こして景気回復させてやろうとたくらんでいることになる。左派的世界観では安倍政権は「日本を戦争ができる国にして、弱者を戦場に送り込む」内閣なのだから、このことを大いに喧伝するのがよろしいのではないかと思う。騒ぎになれば面白いし。
二つ目のポイントは安倍首相がこの会議をコンフィデンシャルにしたことだ。内容を読めば分かるが、特に変わったことは言っていない。財政健全化よりも需要の回復を目指せというのはよく聞かれる議論だ。倍さんは「ドイツに積極的な財政支出を求めたい」と言っているだけで、クルーグマン教授になんとなくスルーされている。言われる側のメルケル首相は「ああ、そうですか」と思うだけで、中国みたいに「内政干渉だ」などとは言わないだろう。安倍さんは自分の見識というものに自信がなく、何でも秘密にしたい人なのだろう。経済的に難しい時期の日本にこのような弱々しいリーダーは必要ない。
三つ目のポイントはクルーグマン教授があえてこれを公表した意味だ。本人は語っていないが、わざわざ「オフレコで」と言われていることを公表したわけだから、何らかの意図があるのは間違いがない。政府は財政再建を後回しにして積極的に支出すべきだとは言っているが、消費税増税を延期しろとは言っていない。ただ、本人はやり取りを公表した理由は語らないのではないだろうか。
第四のポイントは今後の新聞やテレビでの扱いだ。このことは、マスコミの人たちには出回るだろうが、報道はされないのではないだろうか。この「起こらないこと」について、ネットで情報を取っている人はよく見ておくべきだと思う。これから、人々は実際には鳥が家の中でさえずっているのに、誰も鳥がいないように振舞うのだ。それは政権側が「小鳥がいることは誰にも言ってはならぬ」といっているからにすぎないし、小鳥はたいしたことは言っていない。マスコミは誰のために報道しているのかということがよくわかるだろう。朝日新聞ですらこの件は報道しないのではないかと思う。記者クラブ特権が剥奪されては困るからだ。ジャーナリズムでございますと見栄を切って見せても所詮この程度なのだ。
個人的に一番面白かったのは安倍さんの自信のなさではなく、麻生さんの無責任っぷりだった。一度政権を担当した人なので、今回は物見遊山気分で政権に参加しているのではないだろうか。当事者意識があれば、税収を上げるためには何をしなければならないか必死で聞くと思うのだが、代わりに自身の歴史的知識を披瀝して終わった。「大臣よくご存知ですね」とは思うが、それ以上のものは感じられない。この方は国会でもこの調子で知識や英語(流暢そうに話して見せるのだが、RとLの区別がめちゃくちゃ)を披瀝している。
議員たちが一生懸命に国会で質問をしても「戦争でも起きたらイッパツなのになあ」などと夢想しているのではないかと思う。自分が何かできるとは思っていないし、またやる気もなさそうだ。
安倍首相は「ママに怒られるから秘密にしておいて」という小学生のようだ。本人としては大それた野望を持っているつもりなのだろうが、大人の目で見るとたいしたことはないし、別に深い考えにも聞こえない。
現在の政権はこうした人たちを中枢に頂き、周りが右往左往しているというのが実態なのかもしれない。これでも世界有数の経済大国として機能しており、新幹線や飛行機もタイムテーブルどおりにきっちりと運行されている(まあ、時にはシステム障害で半日とまったりするわけだけど)のだから、日本というのはやっぱりすごい国なのかもしれない。
この人たちは本質的な無力感に苛まれているのではないだろうか。祖父が立派な政治家だったというだけで、政治家としての人生を押し付けられた人たちなのだ。


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