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所得税は下げたくない でも増税メガネともいわれたくない 迷いを深める岸田総理の答えは「税調への検討指示」

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自民党の萩生田政調会長が「所得税減税を提言に含めない」ことがわかった。やはり自民党は所属税減税には後ろ向きなのだなあと思ったのだが、時事通信は「岸田総理は国会冒頭で減税への意欲を表明する予定だ」と伝えている。根拠は書かれていないがその減税とは所得税のようだ。では岸田総理は減税を決断したのか。そうではないようだ。「税調に指示を出す」のだという。正確には自公の政策担当者と税調の担当者を集めてみんなで話し合いをさせる。

支持率が低迷しSNSでは岸田総理は増税メガネだという評価が飛び交っている。心理的にかなり追い込まれているのかもしれないと言う気がするが、かと言って冷め切った国民の反発に対するこれといった対応策があるわけでもなさそうだ。

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萩生田政調会長が所得税減税を提言に組み込まないことを決めた。所属税減税は検討に時間がかかり即効性がないというのが表向きの理由だ。だが自民党は減税には後ろ向きだという評価も避けたいのだろう。「今のところは検討していない」とだけ言っている。この記事だけでは萩生田氏の本音がどこにあるのかはよくわからない。

では「自民党は減税を放棄したのか」と言うことになる。そうはならなかった。官邸側がわざわざマスコミに「【速報】岸田首相が23日の所信表明演説で減税への意欲を表明することが分かった」とリークした。「所得税減税の提言に踏み込まない」というニュースのインパクトを薄めようとしたのかなという印象を持つ。

その後に出てきた詳細には次のように書かれている。

  • 総理大臣は「一時的な減税」に意欲を示している。
  • 公明党を入れた与党の懇談会に税調の関係者を参加させて減税検討を指示する
  • タイトルは「デフレ完全脱却のための一時的緩和措置」とする

足元ではインフレが進んでいるので「デフレ完全脱却」などと言われると「この人たちはいったい何を言っているのだ」と言う気がする。「一時的減税」の意味を考える上では重要なファクターだが今回はそこにこだわっていても先へは進めなさそうなので割愛する。最後の最後で「連立解消を覚悟で」減税提案をやりそうな公明党を参加させようとしているのだろうなと言う工夫は感じる。岸田総理が所得税減税を決断すればいいような気がするのだが、税調を加えることから、おそらく減税ができる余地はないのだろうと言うこともわかる。

だが時事通信の記事のどこにも「検討される減税が所得税だ」とは書かれていない。単に今後所得税減税を求める声が高まるだろうと書かれているだけである。記者たちが勝手に舞い上がっているのか、官邸に「あれは所得税なのですよ」と耳打ち解説をする係の人がいるのか、あるいは自民党の一部が勝手に盛り上がっているだけなのかなどわからないことが多い。

仕方なく共同通信も読んでみた。

所得税が念頭にある理由を共同通信が書いている。公明党が「文字にはせず口頭で念押し」し「自民党も否定しなかった」ことが根拠になっているそうだ。つまり公明党が一言言ったことだけが根拠になっている。

いずれにせよ自民党の税調は12月までには去年積み残した防衛費増額のための財源確保について詳細をつめなければならないことになっている。つまり具体的にどこを増税するのかという話が出てくる。つまり、自民党税調は増税議論と減税議論をどちらも行う必要があるということになる。

共同通信は「必要な予算はちゅうちょなく積み上げる」と言っている。だが、以前に書いた通り毎年巨額な予算が未執行のまま国庫返納されている。躊躇なく積み上げることは積み上げるのだが執行段階ではできるだけ使わないようにしてそのまま国庫に戻している。当然原資は国債なのだが今までは極めて低い金利で借りることができていた。だが、金利が上がりつつありこの手法も使えなくなりつつある。

日銀の植田総裁と岸田総理は会談をしているのでおそらく「これ以上借りられない」ことはわかっているはずだ。状況は極めてややこしい。

年末に増税議論があることがわかっているので「税調はどうするんだろう?」と言うことになったのだろう。「部屋の中の巨大な像(誰もが分かっているが無視しているものの例え)」ということばがあるが、バイデン大統領に得意げに披露した「日本は防衛費を増額しますよ」という公約を発端にした積み残し課題が「巨大な像」になっている。誰もそれに触れたくないので税調を混ぜてお話し合いをしましょうと言うことになったのだろう。

10月22日の補選で自民党の候補が落ちてしまうと今後の政局はかなり混乱するだろう。とりあえず今は「庶民感覚がない岸田総理は所得税減税に後ろ向きだ」という評価を最小限に抑えつつ補選を乗り切るしかないと言う感じなのかもしれない。スーパーを見学し「物価高はイカンですなあ」と嘆いてみると言うのが岸田総理の考えた支持率回復の手段だった。

野党は「国民の中には期待していた人もいるのではないか」と反発しているが、各種世論調査を見ると「そもそも政府の対策には期待できない」と言う人が多い。それほどの期待もなく従って反発もないのかもしれない。

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