イスラエルのガザ侵攻が秒読みと言われている。国連からは人権侵害との指摘が出ているが、イスラエル掃討の意気込みは変わっていない。イスラエルはガザでの掃討作戦を有利に進めるために北部を更地にしてそこに一気に攻め入ろうとしている。ガザ地区南部にはラファと呼ばれる検問所があるのだがエジプトはこの扉を押さえていて外に人が出られない状態になっている。名目上は「イスラエルが空爆を続けているから」ということになっているが、エジプト政府の真意はよくわからない。いずれにせよ結果的にガザ地区は巨大なガス室のような感じになっている。パレスチナ人に逃げ場はなくこのままでは大勢の人が殺される。だが、一旦扉を開くと220万人の難民が発生する。すでに100万人が狭いガザ地区で難民化しているそうだ。
誰が扉を押さえつけ誰が中にいる人たちにひどいことをしようとしているのか。関連記事で調べて見た。
イスラエルのガザ侵攻は秒読みと言われる。国連は集団的懲罰は避けるべきとしているがイスラエル外務省は「恥を知れ」とX経由で国連を批判した。イスラエルの極端な行動を抑えることができるとすればそれはスポンサー国家であるアメリカ合衆国だけだ。
イスラエル外務省、国連幹部に「恥を知れ」 避難勧告批判され不満か(朝日新聞)
この1週間強でガザ地区の難民は100万人を超えたと言われる。イスラエルの攻撃が不可避ならばガザ地区の難民はどこかに避難しなければならない。アメリカ合衆国のブリンケン国務長官は「エジプトの協力でラファが解放される」と主張したが、実際にはまだ解放されていない。
エジプトは「イスラエルが空爆をやめてくれない」から開けられないと言っている。仮にエジプトが言っていることが本当だとするとイスラエルはガザ地区の人々を閉じ込めてそのままタンクで押しつぶすか空爆で焼き殺そうとしているということになる。だがエジプトにもラファを開けたくない理由がある。自国に100万人以上の難民が出てきても受け入れられない。そもそもガザ地区の土地はすでに飽和状態になっており墓の上に住宅を建てるような状態になっている。エジプトはすでにアフリカから多くの移民を受け入れている。さらにガザ地区に逃げていた武装組織などがエジプトに舞い戻るかも知れない。
- ガザ南部の検問所再開見通し、支援提供へ=米国務長官(Reuters)
- ガザ南部で物資搬入と避難できず、イスラエル非協力的とエジプト(Reuters)
- 墓地が足りない 空爆で犠牲者急増のガザ、遺体を道や空き地に埋葬(Reuters/Yahoo! News)
バイデン大統領の発言は次第にフラフラとしてきた。まずイスラエルを訪問して連帯を示そうとしているという報道がある。
- バイデン米大統領、イスラエル訪問の可能性 両国が協議=関係筋(Reuters)
だがイスラエルがガザ地区を再占領するのは好ましくないという立場だ。さらにイスラエルがガザ地区に侵攻しても「きっと戦時ルールに従ってきちんとやってくれるだろう」と根拠のない発言をしている。このままイスラエルが極端な行動に出れば「加害支援者」あるいは「黙認していた傍観加害者」ということになりそうだ。
- イスラエルによるガザ再占領「大きな過ち」 バイデン米大統領(AFP)
- イスラエルの対ハマス対応、戦時ルールに沿うと確信=米大統領(Reuters)
ヨーロッパも似た状態にある。過去の歴史への反省からイスラエルに強く打ち出すことはできない。だが難民が多数出てくることのは困る。このためイスラエルには自制を促しつつ、ガザにいる人たちを閉じ込めたままにしてそのままにしておきたい。かとイスラエルが攻撃を仕掛けた場合にエジプトにラファを解放して移民・難民を引き受けろとも言えない。すでにアフリカから多くの移民を受け入れていることはわかっているのだし、エジプトはおそらく「ではヨーロッパはどれくらい引き受けてくれるのか」と言い出すだろう。
暴力で物事を動かすなどあってはならないことである。だが実際にはハマスの過激な行動をきっかけに今まで欧米が見て見ぬふりをしてきた数々の不都合がまるでパンドラの箱が開くかのように噴出しているのもまた確かである。欧米がイスラエルを止めず見て見ぬふりを続けるならばガザにいる大勢の人々が犠牲になることになる。
直接の加害者はイスラエルということになるが、実は大勢の人々が「傍観加害者」になりかねないという事態だ。ある人は扉を押さえつけある人は見て見ぬふりをする。
かつてドイツでは大勢のユダヤ人たちが収容所に閉じ込められて亡くなった。この問題を解決するためにヨーロッパの域外であるパレスチナにユダヤ人たちを戻したのが今のイスラエルの始まりである。当時のパレスチナには多くのアラブ人が住んでいた。戦後70年以上経って、ヨーロッパはまたこの地域から人々を受け入れるか、そのまま「事実上の巨大な収容施設」で見殺しにするのかという選択肢を迫られている。
人間はこうした愚かな連鎖からなかなか逃れることができない。
ドイツのショルツ首相もパンドラの箱が開くのを抑えようとと必死に努力している。まずベルリンでヨルダンの国王と会談。イスラエルとエジプトを訪れて事態収拾に乗り出した。ヨルダン国王と事前に会っていることから何らかの提案を持ってゆくのかも知れない。ドイツ政府は「予定は確認していない」としている。
- ドイツ首相、17日にイスラエル訪問 その後エジプトへ=関係筋(Reuters)