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ベルギーの連続テロ事件

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ベルギーの首都ブリュッセルで連続テロ事件が起きた。今朝の新聞によると死者数は34人だ。ブリュッセルの交通網が麻痺したのはもちろんのこと、ロンドンからつながっているユーロスターも停止した。飛行機も止まっているので、ブリュッセルに行くことも出ることもできない状態だ。国中が麻痺していると言ってよい。
この惨状を見て、ヨーロッパの将来について不安を抱いた人は多いのではないだろうか。ヨーロッパはローマ帝国の昔からアジアから来る諸民族に脅かされてきた。西ローマ帝国は諸民族の波に押し流されて滅亡し、東ローマ帝国は融合を試みて緩慢な死を迎えることになった。
日本人は戦国時代に内戦状態を経験した。続くのは決して終わらない消耗戦だった。この不毛さに気が付いて統一が果たされるのは1600年だ。その後内戦が終結したのは、さしたる外敵が入ってこなかったからだろう。ヨーロッパは同じように帝国のない内戦状態を経験したが、民族国家という概念を発明し、その危機を乗り越えたかにみえた。
その後、ヨーロッパは自由主義対社会主義というイデオロギーの対立を乗り越えて、帝国を再建しないまま、民族国家の枠組みを離脱してキリスト教文化圏でまとまる道を歩んでいた。
民族国家を卒業したことで、域内で内戦が起こることはなくなった。と、同時に域内に異教徒を多く抱えることとなった。すでに定着した人たちもおり、イスラム教徒を完全に排除することはできない。一方で、イスラム教徒の子孫たちは数世代経た後でも自分たちが完全なコミュニティのメンバーとして迎えられたとは考えていないようだ。こうした孤立したイスラム教徒たちがヨーロッパ中に広がるテロリストのネットワークを支えている。彼らは祖国の伝統からは切り離されており、これが本来のイスラム教的なのかは分からない。もしかすると家族の伝統からも切り離されているのかもしれない。
ヨーロッパはアジアとの融合と孤立の間を行ったりきたりしている。二つの文明は融合するかに見えたが、文明の壁を乗り越えるのは言うほど簡単ではなかったようだ。