先日来、顧客接点について考えている。今回はNTT Docomo篇だ。5月にポイントが失効するというので、電池パックにでも変えようと思い、Docomoショップを訪れた。だが、4時間待ちだという。お話できるはずもなく、諦めて別の店舗に向かった。そこは3時間待ちだった。連休中日でもあり、転勤や入学シーズンなので仕方ないのかもしれないが、ちょっと呆れた。
そこで自力でなんとかしようとオンラインショップを訪れたのだが、電池パックが見つからない。「あれ操作方法が違うのかな」などと思い151に電話した。20分待たされてお話ができた。受付では電池パックの担当はオンラインショップだという。NTTは電話の会社なので、コールセンターも自前で持っているのではないかとおもう。ところがオンラインショップには在庫がないという。
「ポイントも使いたいしバッテリーも変えたいのだがどうしたらいいのか」と聞いたところ、最初の受付に差し戻された。受付は「私には何もできない」という。お店の在庫は中央では把握できないそうだ。多分、Docomoショップは代理店がやっているからだろう。
お客はNTTと話をしているつもりになっているが、実は違う会社の人である可能性が高い。一応、電話番号を教えてもらってかけたのだが「今忙しいから電話に出られない」という案内が流れて電話はがちゃんと切れた。
考察するポイントはいくつかある。第一に日本の企業はセクショナリズム化しやすい。日本人は、他人や他部署の干渉を嫌う。アメリカの企業にもジョブディスクリプション(職掌分担)というものがあるが、これはチームプレーが原則になっている。だが、日本人は個人主義でチームプレーが苦手だ。さらにコールセンターはエンパワーメント(ここでは権限委譲とでも訳すのだろうか)もされていない。日本人は仕事を他人に任せるのも苦手だ。変に生真面目なところがあり、マニュアル通りにやらせたがるのである。その方が効率がよいと考えてるのだろう。だが、サービスのニーズは顧客によって違うのだから、すべてをマニュアル化することはできない。
第二にセクショナリズムが進む事で、オーバーヘッドが発生する。今回は顧客が「結局、誰も何もできないんだ」ということを確認するために20分(待ち時間を入れると40分)かかったのだが、その時間は何も生み出さないオーバーヘッドである。一人の人が「エンパワーメント」されており、解決能力を持っていればオーバーヘッドはある程度解消されていたかもしれない。一人ひとりのオーバーヘッドはわずかな時間だが、積もり積もって莫大な費用となる。これを削減するためにマニュアル化を進め、オペレータの権限を縮小するとさらに効率が下がるという悪循環が生まれる。
第三にDocomoの客層だ。平日のDocomoショップを見るとよくわかるが「細かい操作や手続き(オンラインでできるものも多い)」を聞く客が多い。顧客に多くの高齢者を抱えているからである。ここが、ある程度の知識を持った客層を抱えたAppleと違っているところだ。Appleは細かな問題解決のためのコミュニティの運営を顧客に任せている。ある程度ポイントが貯まると、カンファレンスなどに招待される仕組みがある。つまり顧客もエンパワーメントしている。一方、Docomoが丁寧に顧客サポートすると、マニュアルを見れば分かる程度の質問をするお客を引きつけて、実際に携帯電話やサービスを買いたい顧客を遠ざけてしまうのだ。
「顧客接点は知識の集約点だ」という話をすると、では時間を増やせば良いのかという話になりがちだが、実は時間を増やしても解決しないことがある。日本人がチームワークが苦手で、権限も囲い込みたがり、効率化を求めてマニュアルで他人を操作したがるという性質にその原因があるものと考えられる。