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日本の現状は不安。でも私が頑張ってもどうにもならない。だから難しいことは政治の方で頑張って処理してもらいたい。

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オーストラリアで憲法改正提案が否決されニュージーランドでは政権交代が起きた。どちらも「他人に優しくする」か「自分達のやさしくするか」の対立だった。経済が好調な時には「他人に優しい未来志向」が好まれるが、経済不調が続くと逆に「他人にばかりお金を使うのか」ということになる。

だが日本ではこれが起こらない。この両方を自民党がカバーし公明党が補完しているからだ。この「おまかせ」方式はこれまで成功してきたが、これが外な落とし穴にはまっている。これまで「なんとなく支持」だった人たちが「なんとなく不支持」に回っている。

日本の課題は生産性の向上や少子化の改善など国民の協力が不可欠なものが多い。つまり「なんとなく不支持」が多い現状は極めて危険といえる。だが、これがおそらくは長かった自民党政治の帰結なのだ。

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オーストラリアで先住民を記述する憲法改正提案が否定された。先住民側は「法的拘束力がある条約を先に結べ」と主張し、それ以外の人たちは「先住民の権利が過剰に保護される」と警戒していた。当初与党が提案した時には賛成支持が多かったようだが結果的に40%対60%で否決されたそうだ。政権は憲法改正の否決を受け入れた。

ニュージーランドでも6年ぶりの政権交代が確定した。コロナ対策で支持されたリベラル系政権はその後の経済的な苦境を乗り切れなかった。新しく首相になるラクソン氏は「先住民を管轄する保険」の仕組みの廃止を提案しているという。他人に特権を与えるより自分達の生活を保証しろという主張がうけいれられたのである。

こうした政治の保守化はオセアニアだけでなく欧米に広く見られる。アメリカ合衆国でも他人(国内の弱者や危機にある外国の民主主義)を支援するよりも、国境対策を厳重にして自分達の既得権を守ってほしいとする人が増えている。これが共和党と民主党の対立の背景にある。

ところが日本ではこうした政権交代が起こらない。日本の政治はどちらかといえば「おまかせ」方式である。気に入ったメニューが出て来れば喜んで食べるが気に入らないメニューだとそのまま関心がなくなってしまう。このやり方はこれまでなんとなくうまく機能してきた。

日本は世界的に高齢者が多い国である。つまり政府の保証が入った年金と医療制度の恩恵を受けている人が多い。このため高福祉政策は支持される。「多数派が政府に依存する」という極めて珍しい体質の国になっていることがわかる。このため「国民は自活すべきだ」という自由主義も支持されなければ「人々は助け合ってより良い未来を目指すべきだ」という左派リベラルも支持されない。

とにかくこのまま安全運転で今までのバランスを崩さないでやっていってくれればいいという現状維持欲求を核にした政権が作られ、後はなんとなく国際的な流れにそって人権にも配慮しましょうというような政策メニューが作られている。支持者には高齢者が多いわけだから新しい価値観や働き方などへの理解は広がらないが選挙対策として「子育て世代にも優しくしましょう」という提案が行われている。そして国民は出されたメニューを「なんとなくそんなものかな」と考えて受け入れてきた。

ところがここに新しい状況が加わった。岸田政権を支える宏池会系は「財政再建」を目指している。このためには誰がどう考えても増税を行わなければならない。だが、これまで「政治に関心を持たなくても国がいいようにやっておきます」というような政治が長く続いていたため、結局「最後には国民に負担増を求めるのか」ということになってしまった。するとこれまで多数派だった「現状容認なんとなく政権支持」が「現状容認なんとなく政権不支持」に変わってしまう。

「今まで通りのものを出すためには料金の値上げが必要です」と言われて「今までも好きで食べてきたわけではないからだったら結構です」ということになりつつある。そこで政府は「オマケの量を増やしますから値段を上げさせてください」と取引を持ちかける。特に公明党がこの手の取引に熱心で「給付・ポイント」を提案している。

さらに現役世代には「どうせ自分達が政治に参加しても何も変わらない」という認識が生まれている。このため、そもそも政治問題に関心は持たなくなってしまった。唯一の参加動機はおそらくさはリベラルを弱者としていじめることで多数派気分を満たすというものだったのだろうが、彼らもなんとなく岸田総理を応援する気になれない。増税メガネという揶揄には二つの含みがある。増税=高負担でメガネ=インテリなのだ。大衆はインテリを好まない。かといって野党リベラルも応援できない。彼らもまたインテリであり「ネットに新しく生まれた保守」から見ればWOKE(意識高い系)すぎるのだ。

そんな中で「政治と金」の動きが広がっている。防衛大臣を含む閣僚4人に国と取引のある企業から献金を受けていることがわかった。だがおそらくこの話はそれほど大きな広がりを見せることはないだろう。すでに「選挙前に怪しい資金の流れ」があったという報道が多数ありその度に忘れ去られている。

木原稔氏には秘書の防衛コンサル疑惑というものもあるのだが、おそらくこれも知らなかったという人が多いのではないだろうか。政治に興味を持っているのは利害関係者ばかりで、政治家もまた選挙前にはお金が足りなくなる。そして有権者がそれを問題視することはなく閣僚になった時点で報道され「総理の任命責任」が問われてなんとなくうやむやになってしまう。

なんとなく日本のこの先は暗そうだ。そういう面倒なものには極力関わりたくない。でもこれ以上の負担を求められるのも嫌なので話も聞かなかったことにしたい。そんな気分がわかる調査を見つけた。

公益財団法人「新聞通信調査会」が日本の人口減少に「危機感を持っているか?」と聞くと79.4%が危機感を持っていると答える。だが本腰を入れて対策すべきかと聞くと41.6%だけが「本腰を入れるべきだ」と回答した。

理由は次のとおりだ。

  • 一定程度必要だが、過度な財政投入は控えるべきだが19.2%
  • 少子化・人口減少は政策では解決できないが14.7%、
  • 子どもを産む、産まないは個人の判断にゆだねるべきだが14.5%

問題だとは思うが余計な負担が増えるのは嫌だと考える人が最も多く、どうせもう解決できないという人や政府にあれこれ言われたくないと考える人が続いている。おそらく「誰がどう見ても成功する見込みのある政策には乗りたい」という人は多いのだろうが、自分達で考えなければならないとなると途端に興味をなくす。あとは好きにやらせてほしい。政府にあれこれ言われたくない。そんな気分が浮き彫りになる調査だ。

政治の側にいる人たちは「国民は政治のことがよくわかっておらず、政府が説明してもちゃんと聞いていない」と考えているようだ。だが、実際には「政府の対策は全く役に立たない」が「色々指摘するのも面倒臭いので黙認してきた」という人たちが多かったということがわかる。

実は国民は聞いていないようで岸田政権のメッセージの根幹にある本音をきちんと理解しているのである。日本人にとって民主主義とは「御神輿祭り」だ。今のお神輿はなんとなくパッとしないので担ぎたくないということなのかもしれない。だからといって自分達で新しいお神輿を考えるつもりもない。そもそも祭りとはそういうものだ。

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