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イスラエルがハマスに急襲された直後に、なぜか日経平均が今年一番の上昇

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火曜日連休明けの東京市場は一時800円を超える上昇となった。日本のメディアはジェファーソン副議長の発言を取り上げ「利上げ観測が弱まったため株価が上がったのだ」と指摘している。だがこれは厳密に言えば正解ではないようだ。実際には有事でドルが買われて国債の価格が上昇したことで「利上げ観測が弱まった」と誤って解釈された可能性がある。今回のイスラエルがハマスに襲撃されたことが投資家に大きなインパクトを与えたことがわかる。これといった正解のないなか、投資家はより安全な資産を求めて活発に活動を繰り返していた。

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各媒体が驚きを持って日経平均の「今年一番の上げ」を報じている。顕著な価格上昇だったため何らかの説明が求められるのだろう。時事通信は「アメリカで米国株が上昇したので連休明けの東京市場で投資家心理が改善した」と説明している。

TBSは「FRBによる金融引き締めが長期化するとの観測が後退したことで、アメリカで株価が値上がりした」と書いている。NHKも「株価 一時800円以上値上がり 米で株価値上がり受けほぼ全面高」で同じような説明をしている。読売新聞「日経平均、今年最大の751円高…米景気の先行きに安心感が広がる」で「米国の高いインフレ(物価上昇)率が沈静化に向かうとの期待感が広がった」と書いている。

時事通信が指摘する「アメリカの株価の上昇」はバリュー株から成長株へのシフトの結果によるものだろう。だが「ほぼ全面高」となっているので日本の株の動きはこれとはやや異なる可能性が高い。

実際の米株の動きをみるとアップルやネットフリックスなどは値を上げている。安全確実に成長しそうな株に人気が集まっていることがわかる。ただこの記事を見て「さあアップルやネットフリックスを買おう」という人は最新の株価動向を見てみると良い。株価が下がっている。イギリスの中央銀行が「アメリカのハイテク株は過大評価されている」と指摘した結果株価が実際に下がっているのだ。「なんてことをしてくれたんだ」とは思うが、やはり人々が安全な資産を求めており一部の株の価格を過剰に引き上げているようだ。

イングランド銀行(英中央銀行)金融行政委員会(FPC)は10日、米ハイテク株やドル建て社債など、一部の金融資産のバリュエーションが過大になっているとみられると指摘した。

TBSの説明はやや真実に近い。長期金利の低下が東京の株価を押し上げたことは間違いがないようだ。つまり長期金利が下がったことで結果的に「FRBの利上げ観測が後退した」と受け止められた可能性がある。

実際に長期金利を押し下げたのは「有事のドル・米国債買い」だったようだ。つまり「有事」で米国債の需要が高まったことで金利が下がった。同じようなことはウクライナ侵攻の後にも起こっていると書かれている。投資家たちが今回の件をウクライナ侵攻と同様に見ていることがわかる。タイムスタンプを見ると日本の株価上昇を説明する記事とアメリカの長期金利の記事はほぼ同じ時間に出されている。

こうした大きな動きを背景にして円と円貨資産の動きはさらに複雑だ。理論的に説明することはできず高気圧や低気圧に押されて動く台風のような進路になっている。

「リスク回避の円買い」が進み当初は円高が加速した。これで株を買おうとする人が増えた可能性がある。「ほぼ全面高」が正しかったとすると日本株全体が安全資産だとみなされていることになる。日本株は成長もしないが大きく沈むことがないということだ。だが800円も上昇してしまうと次第に「やりすぎであろう」ということになる。ここで円が反落したことをみると海外投資家が日本の株を買っていた可能性がある。投資家はそれなりに右往左往していた。結果的に株価は751円高で取引を終えた。日本のメディアは上がったことだけに注目したがロイターはその先を書いているという違いがある。

ロイターの記事を読む限りNHKが指摘するFRB要人の発言はジェファーソン副議長の発言だったと見られる。一方でロイターは「現時点では中東情勢を巡る地政学リスクがさらに広がる可能性は低い」つまり世界の動きはオーバーリアクションだったのではないかと書いている。

とにかく株価が上がったのだから背景情報などどうでもいいではないかと思う人もいるかもしれない。だが、情報を整理すると投資家たちが今日1日かなり右往左往していたことがわかる。

では今後はどのような展開になるのだろうか。ロイターは次のように買いている。つまり今後投資家が冷静さを取り戻せば状況が元に戻ることになる。

とはいえ、これで米国債が直面する多くの逆風が和らぐわけではない。下院はまだ新議長を選出できず、つなぎ予算で確保した資金が尽きる11月17日までに新年度予算を可決する上で必要な審議や手続きが遅れている。さらに来年の大統領選が、米国財政の先行きを巡る不確実性を一層高めてしまう。

日銀の状況も含めて基底にある不安要因が消えたわけではない。だがさまざまな地政学的なイベントがあるとその度に投資家が動揺し安全資産・安定資産への資金流入が起こる。その一つがアメリカのハイテク株だがこれも「割高感」が出ておりイギリスの中央銀行が水を差しただけで株価に影響を与えるという極めて神経質な相場が形成されている。

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