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鈴木宗男氏「除名」のプロセスを見る限り、維新には憲法や安全保障を語るのはまだまだ難しそうだ

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鈴木宗男参議院議員のロシア渡航に対する処分が「除名」に決まりそうだ。理由を聞いてみたのだがどうも「見栄えが悪い」「聞こえが悪い」というのが理由らしい。なんじゃそりゃ?と思うと同時に維新にはやはり安全保障や憲法議論は無理なのだろうと感じた。特に国政側の人材不足を感じる。政党に対するオーナーシップが感じられずどこか大阪のお使いという印象だ。

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政党と議員の間で安全保障政策がずれているのだから少なくとも「協議離婚」をした方がいい。鈴木宗男氏はどうしてもロシアの味方がしたいし維新はそれに引き摺られたくない。だから除名は妥当な判断だろうしできれば離党勧告に応じてもらうのが良いのかもしれない。

だが、維新の定見のなさと内向きさは気になった。

大阪側の吉村知事はそれなりに「テレビカメラの向こう」が見えていたようだが、国政側の説明はひどいものだった。「有権者受けが悪い」という理由で鈴木議員を切ろうとしているようなのだ。市民感覚・庶民感覚といえばそれまでだが、政党としてはどうなんだろうか?という気がする。この説明のあやふやさがまだ若い藤田幹事長個人も資質なのかあるいは維新の政党としての問題なのかがよくわからない。

当初鈴木宗男氏がロシアに渡った際、維新の幹部は「知らなかった」と説明していた。「秘書の連絡が遅れた」ことが理由とされており、藤田幹事長は「手続き上の問題で処分する」との姿勢が示された。なぜここで「渡航の是非については問わない」と言い切ってしまったのかが気になる。

面会後、藤田氏は記者団に「重要な意思決定を相談なしに行うことや、事後報告となったことは責めを受けるべきだ」と述べた。一方、渡航そのものについては処罰対象としない意向を示した。

一方で大阪側の吉村共同代表は「党の方針と異なっており厳重な処分が必要だ」との姿勢を示していた。吉村さんはおそらく維新が外からどう見られているのかを冷静に判断している。これは橋下徹氏以来の大阪維新の強みである。と同時に国政のことはできれば国政で処理して欲しいという考えも持っているようだ。積極的な関与を避けているように見えた。

最終的に政党としての話し合いがもたれ「厳しい処分を下すべきだ」との意見が大勢となったようだ。だが処分は馬場代表に一任された。なお今回の一連の報道を整理していて初めて知ったのだが、馬場さんが「代表」で吉村さんは「共同代表」だそうだ。本来は馬場さんが代表して仕切るべきなのだろうがその発言が伝えられることはない。もしかするとどうしていいかわからないのかもしれないとすら思える。

この後で「独自」で除名処分という報道が出るのだが、最終決定は週明けになるであろうと伝えられた。産経新聞の報道によると議員団で指摘があり藤田さんは「これから映像を取り寄せてどう報道されたかを検証する」と言ったそうだ。つまり内容ではなく「報道のされ方」が除名の判断基準だったということになってしまう。お話にならない。

藤田文武幹事長は6日の記者会見で、動画に関して「映像を取り寄せて精査する」と説明した。その上で「非常に厳しい対応をせざるを得なくなるかなと思う。だからこそしっかりとした手続き論と論理的正当性を担保する方針だ」と語った。

さらに吉村共同代表が「除名の方針が決まった」と東京で記者団に説明したことから党の集まりに吉村共同代表が参加していたことがわかった。できれば国政政党として独立してやってもらいたいが、細かなところで吉村さんがアシストしてあげないとどうも危うい方向に進んでゆきかねない。これが維新の現在地なのかもしれない。

日本の安全保障の枠組みは「GHQの占領」から始まっている。さらにGHQの要請などにより保守が合同して自民党が作られている。つまり戦後の日本の安全保障は自己選択をしたことがない。単に正解に追従しているだけなので「第二自民党」である維新にも「安全保障について定見を持つべきだ」という意識はないのだろう。だが、国際情勢は徐々に変化しつつある。これまでのような東西冷戦構造で「正解」が語れないのだから、なぜ現在の日米同盟にコミットし続けるかについて政権政党はきちんと説明する必要がある。

その意味ではウクライナの戦争は重要な資金石と言える。日米同盟を維持し力による現状変更を阻止することは日本の国益にかなっている。仮に日米同盟に依存しないなら代替提案は必要だが国連安保理の機能は低下している。

ロシアの意図する力による現状変更を台湾や日本近海に当てはめるとその危険性がよくわかる。だから鈴木宗男氏を主張を許容することは国益に反する。一方でSNSでは「ウクライナ支援」に関する懐疑論も目にする。仮に国益上ウクライナ支援を続けるべきという立場ならば懐疑派に対してきちんと理由ができなければならない。実は藤田さんや馬場さんに欠けているのは「なぜウクライナを支援し続けるべきなのか」という説明なのだ。

維新の側が問題視している「ロシアの勝利を信じる」という発言に関して鈴木宗男氏は「切り取り」と表現している。実際の自分の発言は「和平を目指している」というのだ。だが皮肉なことにこれこそがロシア側の常套手段であり鈴木さんはおそらく意図してこれに乗っている。いわば確信犯と言える。ロシアとの接触が長い議員なのでその主張は筋金入りである。

これに対して藤田幹事長の対応は一貫してあやふやだ。「みんなの非難の対象になりそうのでこれはよろしくない」というような説明をしている。これではとても今後の憲法や安全保障の議論は難しいだろう。

吉村共同代表は維新の運営でかなり難しい問題に直面しているのかもしれない。形式的には国政政党維新は国会議員たちが自律的に運営していると見せたい。だが、実際に問題を処理させてみるとやはりどこか「お使い感覚」が抜けない。オーナーシップが感じられないのだ。

定見のある国会議員を育てるためにはまず選挙で勝ってもらわなければならない。そのためには「ドブ板」が必要だが、エリートにはなかなか難しいのかもしれない。前回の選挙の躍進が維新のピークだったのかそれとも単に政権を狙うことができる国政政党になるための成長の痛みなのかは意見の別れるところだ。この一件で維新を見限るのはまだ早いとは思うが「限りなく赤に近い黄色信号」とみて良いのではないかと思う。

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