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2020年に発行された米国債はメルトダウン 長期金利の上昇は日本株、日本円、日本国債トリプル安の要因にも

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ロイターが日本のトリプル安について書いている。トリプル安の原因がアメリカにあるため日本の政府や日銀に対処方法がないという。その原因になっているのがアメリカの国債の下落だがついに「メルトダウン」と表現する人が現れた。2020年に比べて半値で取引されているからだ。

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このところ円安が進んでいる。本来円安は日本株の割安感を演出すると言われていたが日本の株価も下がっている。ロイターは国債を加えこれを「トリプル安」と表現する。だがその原因はアメリカの長期金利の高騰(国債価格の下落)にあるため基本的に日本政府も日銀も対応できないというのがロイターの見立てだ。

岸田総理は自身が主導する経済対策で乗り切りたい考えだが物価高の根幹にあるのは原油高やアメリカの金利高騰などの外部要因だ。日本経済はアメリカ経済の従属経済になっていて対処療法的な対策以外の対応の取りようがない。

さらに岸田総理が安易に解散を仄めかしたことで党内外が動揺し制御不能な減税提案が出ている。

選挙が行われるかどうかは五分五分といったところだそうだが仮に選挙を強行するとその後に増税議論が行われることになり有権者は「騙された」と感じることになるだろう。逆に選挙がなければ「あの減税提案は何だったのだ?」ということになりかねない。さらにいえば、自民党の方針はインナーと呼ばれる税調内の非公式会合で決まる。非公式である以上岸田総理が完全にコントロールしているわけではない。つまり党内でどんな議論が岸田総理に対して行われようがインナーが動かなければ減税は行われないのである。意外とこの仕組みを知らない人は多いのではないだろうか。現在のインナーのメンバーは日経新聞によると、宮沢洋一、額賀福志郎、甘利明、塩谷立、石田真敏、森山裕、後藤茂之、福田達夫氏だそうだ。

自民党税調インナー、宮沢会長続投 安倍派から塩谷氏ら(日経新聞)

さて、全ての震源となっているアメリカの金利だがかなり難しい状況になっているようだ。2020年3月のピークに比べると10年もの以上で46%も下落している。30年もの国債の価格は53%も下落しており「米国債は元本が保証されているから安心だ」とは言えない下落ぶりだ。直接の原因はコロナ対策の積極的な財政支出とその巻き戻しだった。確かに積極的な財政政策は経済を救うがその副作用も極めて大きい。

長期金利上昇の原因については様々な説があるという。つまり原因がよくわかっていないのだからそれに対する対策もない。対策がないのだからFRBは「要因は複雑だが(今の所)それほど脅威ではない」と言い続けるしかない。インフレが顕在化した時にもFRBは同じような説明を繰り返しておりのちに非難されている。

国債価格が上昇すれば株の価格は下落する。国債は(途中で売らない限り)少なくとも額面元本が保証されるが株にはその保証はない。日本の株価は金利差からくる為替要因が加わるのだから不確実性はさらに高くなる。このため株の相対的な魅力が現じてしまうのだ。

現在の争点は「中立金利」である。現在の中立金利は2.5%だそうだがこれを疑うFOMC参加者も増えている。高成長が続くと仮定すると金利が引き上がる。

FRBは長期金利の上昇について表面的は楽観姿勢をとっている。だが実際の見立ては変わりつつある。これまではアメリカの経済が好調だからこそ高金利が維持されていると説明する人が多かったが金利の高止まりがアメリカ経済に悪影響をあえるだろうという見方をする人が増えている。日経新聞はこれを「悪い金利高」と表現している。悪い金利高はアメリカ経済を炒めるのだからこれも株安の要因となる。

株価が続落すると揺り戻しの動きが起こる。これを説明するために「長期金利懸念が後退」と表現されることがある。中長期的な懸念は消えていないのだから「懸念が払拭」されるわけではないがこれ以上株が下がってほしくないという気持ちを持っている人はこの「後退」を「払拭」と読みたくなるであろう。

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