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一時1ドル150円台に突入し為替が乱高下 財務省介入との憶測が飛び交う

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すでにご存知のように1ドルが150円をつけたあと147円台まで急落した。財務省の為替介入があったのではないかと囁かれているが真偽のほどはわかっていない。

しかしその後買い戻しの動きが入り149円まで値を戻している。背景にあるのはアメリカ経済の先行きの不透明さである。為替よりもむしろこのところの日米株式相場の下落に落胆している人も多いかもしれない。

先行きが不透明な状況になっているので、投資をしている人は落ち着いて情報を再度精査した方がいいだろう。

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1ドルが150円まで到達した。介入がある心理線ではないかと言われていたのだが、その後147円まで下がる展開となり「警戒されていた為替介入があったのではないか」と囁かれている。だが一部には介入があったとは考えにくいという声も聞かれ意見が分かれている。

まずお断りしておきたい点がある。おそらく状況を整理するためにReutersやBloombergなどの記事を落ち着いて再度精査すべきだ。極めて分かりにくい動きになっているからである。アメリカ政治と経済の不透明さが為替、国債価格、株価にそれぞれ影響を与えているので因果関係を整理した方がいい。一旦自分なりに整理ができれば高い確率で「情報酔い」を防ぐことができる。

問題の起点は「現在のアメリカの自然な経済成長率」がわからなくなっているという点にある。これをロイターは高圧経済になった可能性があると表現している。

アングル:米国債市場が告げる転機、「高圧経済」到来で高まる不確実性(Reuters)

正常値がわからないので現在のFRBの金利政策がどのように経済に影響を与えるのかがわかっていない。仮にこのまま経済が好調ならば株価は上がるはずだが、不調にもかかわらずインフレが抑制できないと考えると高い金利が持続することで株価に悪影響が出る。

このため、市場では株式が忌避されより安全で高い利息が見られる国債が選好されている。

経済の常態がわからないので「アメリカの金利が一段と上昇するのでは」とか「上昇はしないまでも高止まりするのでは」などとの憶測が広がっている状況だ。

では現在はどのような評価なのだろうか。米国債の金利は高い状態が続いている。さらにそれに釣られて日本の国債の金利もじわじわと上がり始めた。政府はこれに対応するために日本国債の利率を若干引き上げたそうだ。0.8%はアメリカに比べると低い金利だがそれでも10年ぶりなのだそうだ。

逆に株価は下がっている。時事通信は「大幅続落」と表現している。これはアメリカの株式相場の話である。

ニューヨークで株が下がると日本にも波及効果がある。日経平均は今の所は4日続落だそうだ。アメリカの下落を受けてどのように値動きするか気になるところである。

時事通信は「一段の上昇」を警戒していると書いているがおそらくロイターの「高止まり」の方が表現としては正しいだろう。「トレンドとして下落している」のか「その状態が続く」のか注意して読み分けた方がいい。メディアによって表現に違いがある。

当然金利の上昇(あるいは高止まり)で日本とアメリカの金利差が意識され続けることになるのだから円安の方向に作用することになると推論できる。仮にドルの需要が高いままだと想定すると「為替介入で一時的にドルが下がった時が円貨をドルに替えるチャンスだ」と考える人が出てきても不思議ではない。こうなると「財務省は日本の外貨準備高を犠牲にしてドルのバーゲンセールをやっている」ことになってしまう。つまり連続介入は悪手である。

東海東京調査センターの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、この局面でレンジが非常に狭いのは驚きだとし、「介入警戒感もあるだろうが、むしろ介入でドル・円が下がれば買いたい参加者が多いのでは」と推察。

介入があったと仮定するとその後ですぐに買い戻しが起きたことから「バーゲンセール仮説」はある程度確からしいのではないかと思う。

ただ、今回の動きは介入ではなかったとする人もいる。

心理的な線になっている150円になれば介入があるのではとみんなが思っているわけだから何かをきっかけにして脊髄反射的な動きがあったとしてもおかしくはない。つまり介入幻想が市場を動かした可能性もあるのだ。ファントム(幽霊)介入と言えるだろう。この場合はありもしない介入を恐れた心理線が存在することになり「一段のドル上昇は抑えられるのでは?」ということになる。

TDセキュリティーズのグローバル・マクロ戦略責任者、ジェームズ・ロシター氏は「介入のように見えるが、介入ではないだろう。力強い動きが見られない」と指摘した。

情報と因果関係を整理すると「思惑」や「仮説」が積み重なっていることがわかる。大きな構造を理解した上で、何が事実で何が仮説なのかを整理しなければならない状況だ。

そしてそもそもの起点は高圧経済化議論に見られる不透明さである。今のアメリカ経済の好調が新しいアメリカ経済の常態を示しているのか、あるいは何らかのバブルの類(つまり崩壊の前兆)なのかは誰にもわからない。

昨日のXを見ると日本の株式市場が続落したことで慌てている人が多い印象だった。内容を見る限り、アメリカの動きはあまり意識されておらず「日本の株式市場特有の動き」と意識している人が多いように思える。

今後手持ちの資産をどう処理するかは(あるいは我慢して保持し続けるか)は人によって判断が分かれるところだろうが、アメリカの国債の金利と日本の株価の関係がよくわからないという人はこの際情報を整理することをお勧めする。

かなり変化(ボラティリティ)の高い状況になっている上に、さまざまな要素が絡み合って一見複雑で唐突に見えるようなことが多く起きている。しっかりと因果関係を整理しておいた方がいいのではないかと思う。これを書いている途中でもアメリカで下院議長が解任されたとして「前代未聞だ」と騒ぎになっている。

ギャンブルに身を焦がしたいという人を止めるつもりはないが、「売り」「買い」のボタンを押すのは一旦情報を整理してからでも遅くないのではないだろうか。

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