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ワイワイ騒いだら所得税と消費税が減税されるかも 岸田総理が10月20日招集の国会で補正予算案提出へ

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岸田総理が「10月20日招集の国会で補正予算案を提出する」として話題になっている。なぜこんなことが話題になってしまうのかというと「冒頭解散があるのではないか」と言われていたからである。補正予算案を出すと当然それを審議することになるのだから、しばらくは解散しないと言うことになると言うわけだ。つまり今は支持率が伸び悩んでいるので解散はできないということなのだろう。

そんな中で産経新聞が元気だ。所得税と消費税減税について言及し始めた。産経新聞は「そういう観測が浮上した」と主張しているが、一体誰が観測しているのかは書かれていない。あるいは何か悪いものでも食べて幻覚をみているのかもしれない。

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産経新聞は次のように書いている。なんと「政治の偉い人」の署名入りだ。

もちろん補正予算案を成立させた後、首相が年内に解散に踏み切るシナリオは残る。焦点となるのが、首相が言及した国民への税収増などの「還元」や「減税」の中身だ。所得税や消費税などの減税に踏みきるとの観測が浮上している。首相は経済対策や減税などに対する世論の反応を見ながら改めて解散時期を探るとみられる。(田村龍彦)

田村さんには怒られそうだが、おそらく本来はこのように書くべきだったのではないかと思う。

産経の読者が気にしているのは減税の恩恵が自分達に直接関係しているかだけだ。仮に総理大臣が所得税や消費税減税に踏み込めばクリック数は増え産経新聞は大助かりだ。さらに、消費税を大儀にして選挙をやれば自民党の得票もさぞかし伸びるだろうに。なぜ岸田さんはそれをやらないのだろうか?

有権者は「消費税減税などあり得ない」と考えるだろうが、この「観測」は意外といいところをついているのかもしれない。実は自民党が喉から手が出るほど欲しがっている新しい連立相手に対する「大義」に使えるのである。

日経新聞が玉木氏の主張を伝えている。

国民民主党の玉木雄一郎代表は26日の記者会見で、政府の経済対策を巡り減税を提案した。「賃金の上昇以上に所得税収が増えている。これを還元する」と述べ、所得税減税を提起した。消費税減税も主張した。近く政府に申し入れる意向だ。

細かなことはわからないのだが、おそらくは「税収テーブルトリック」だと思う。

先日上場企業の平均給与が伸びていると報道があった。この時の平均給与は638万円になっている。年収が700万円台になると税収の徴収割合が高くなる。つまり、単純にインフレで給料が上がってしまうと「かつての高額納税者」扱いされてしまい重税感に苦しむことになるのである。この理屈は最低賃金が上がると103万円の壁が近くなってしまうのに似ている。政府が決めた枠のせいで収入が伸びない。

これについてきちんと検証した政党もメディアもないのだが仮に700万円から1000万円程度稼いでいるサラリーマンがきちんと消費してくれれば経済には好循環が生まれる。日銀植田総裁のいう「強い総需要」が生じるのである。

日本には一人ひとりの経済実感について観測する大規模な国の調査がないそうだ。だが、夫の年収が1,000万円もあるのに家計が苦しいという記事はよく目にする。おそらく何らかの理由があるはずなのだが、印象論の領域を出ず、従って政策に結びつかない。

高所得サラリーマンはある程度の生活レベルを維持しなければならないが所得税も多く取られてしまう。だから生活が苦しくなる。パートの場合も扶養から外れると再度扶養の枠組みに戻るのは難しくなる。どちらも「頑張ってもう少し稼ごう」という気持ちになりにくい。少し前に作られた制度のせいでみんなが頑張れない可能性があるなら、それはなんとかしたほうがいいだろう。

こうした根本問題について国民民主党がどの程度真剣に議論をしているのかはわからない。あるいは単に「クリック数目当て」の提案かもしれない。

玉木雄一郎国民民主党代表は「単一税率8%」にすればインボイスも必要なくなり消費税減税にもなるとも提唱している。おそらく玉木さんは「どうせ自民党は消費税減税に踏み込めないだろう」と考えているのだと思う。仮に総理大臣が「連合」を引き込みたいとすれば、玉木雄一郎氏の要求を飲んでそれを大儀にした選挙を打てばいいと言うことになるだろう。玉木さんはノーと言えなくなるのだから、連立に追い込まれる。

「思い切った勝負」が好きだった先代や先先代の総理大臣だったら「みんながとても手をつけられないだろう」というようなことこそ進んでやりたがったのだろう。まあ「財務省とボスキャラ麻生さんに遠慮のある岸田さんにはそんな思い切ったことはできないだろう」とみんなから思われてしまうのが「増税メガネ」と揶揄される岸田総理の限界なのかもしれない。

今のところ新しい資本主義実現会議では「個人減税については言及がない」とのみ書かれている。これこそが「意気地のない岸田さんらしい」印象を残す。

具体策は年末にかけての2024年度税制改正議論で詰める。この日の会議では、主に企業向けの減税措置を打ち出す一方、物価高などで家計に打撃を受けている個人向けの減税措置には踏み込まなかった。

ただし、今回の話はそれほど面倒なものではない。X(旧Twitter)あたりで「岸田さん消費税減税ありがとう」のようなタグを流行らせれば、意外とすんなりと実現してしまうのかもしれない。組織票の先細る自民党は実は無党派層の希望を聞きたがっているはずだ。

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