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岸田総理の経済対策は企業分配に強いウエイト 個人減税はなく10月からはインボイスによる徴収強化も

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岸田総理の経済対策の中身がわかってきた。共同通信は端的にこう書いている。

具体策は年末にかけての2024年度税制改正議論で詰める。この日の会議では、主に企業向けの減税措置を打ち出す一方、物価高などで家計に打撃を受けている個人向けの減税措置には踏み込まなかった。

個人からできるだけ多くの税金や社会保険料を集め、自民党に集票してくれそうな団体に分配するというのが自民党の「勝ち方」なので当然と言えば当然である。このエントリーでは細かな論評は避けて関連する報道を概観する。

日本が良い方向に向かっているのかについてはそれぞれ読んだ人が考えてほしい。考えた結果を公表したいと言う人はぜひX(旧Twitter)でもつぶやいてほしい。

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岸田総理が座長を務める「新しい資本主義実現会議」で経済対策の骨子が固まった。とにかく重点政策に関連しそうな政府援助を並べるだけ並べて個人から集めた税金を還流させるという作戦だ。岸田総理が無党派を視野に入れた選挙対策を組織票中心にシフトしていることがわかる。無党派はどうせ選挙に来ないと思われているのだろう。

組織票の中身はさまざまだ。例えば日本医師会も自民党を支える重要な支持母体である。2024年には診療報酬(医療、介護、障害)の改訂が行われる。財務省は診療報酬改訂に慎重だ。

巷間「財務省寄り」と評価されることが岸田総理だが医療に関しては話が違っている。武見、自見という医師会に馴染みのある議員を大臣に据えて全国の医師たちに明確なメッセージを送っている。自見大臣は二階派が希望したリストには入っておらず「一本釣りだ」と幹部が憤ったと言うような話00もある。

賃金上昇も「分配」の口実になっている。

こちらは連合の取り込みに向けた作業が続く。狙いは賃金アップではなく組織票の取り込みである。連合の組織率は下がっており労働者全体への波及効果は少ないが目の前の組織票は魅力的である。

「庶民からたくさん取って組織に分配する」のが自民党の基本方針なので「トリガー条項」のような税金を取らない政策が採用される見込みは極めて薄い。代わりに政府は「補助金」の形で元売りに分配する従来の政策を続けることになるだろう。国民民主党もそのことはわかっているだろうができるだけ良い条件で自分達を売りたいのだからあまり声高に主張を展開することはないもののと見られる。

すでに別のエントリーでも触れたがパートの待遇改善は行われない。代わりに企業に対して50万円の助成を行いできるだけ多くのパート労働者を年金制度に組み込もうとしている。2年間の限定措置でそのあと「年金改革」議論に突入する予定だ。

企業に分配を行うためには元手になるお金が必要だ。巷(ちまた)では消費税の増税が警戒されている。経団連は法人税減税、手厚い補助金、消費税増税をセットにして政府に働きかけをおこなっている。

ただし世論の反発を恐れて具体的な上げ幅には踏み込まなかった。

代わりに財務省は消費税の徴税強化のために10月からインボイスを導入する。実質的な消費税の増税だが当然鈴木財務大臣はそれを否定した。否定はしたが「どれくらいの税収アップになるかは言えない」と言っている。税収の見込みが立たないと予算は立てられないのだかから知らないはずはない。だが、とにかく言わない・教えないと言う立場だ。

インボイス反対の署名もかなり集まったようだが官邸は受け取りを拒否したようだ。松野官房長官は拒否した事実さえも認めておらず「届いたら適切に処理する」と言っている。適切の内容は不明だ。「適当に放っておく」と言うのも政府にとってみれば適切のうちなのだろう。

このような状態で消費税減税など行われるはずもない。岸田総理がかつて語っていた「消費税減税をすると買い控えが起こる」という説明がXで反発されていた。シェアニュースが最近になって過去の発言を再発見したようだが実際の報道は2021年のものだった。

野党は早期の国会開催を要望したが支持率が低迷しておりこれが聞き入れられる見込みはあまり大きくない。

NHKは11月解散の確率は「五分五分」とみているそうだ。

仮に11月解散が行われるとすると10月末までに「魅力的な」メニューが提示され、財源議論が行われないまま10月に国会を開催される。冒頭で「補正予算の是非について国民に聞いてみたい」として解散が選択されることになる。この場合、実際に補正予算の審議と財源議論が行われるのは年末から年明けにかけてということになる。「メニューを先に出し請求書は後からお送りします」と言う方式だ。さすがにこのやり方は党内の一部からも疑問視されている。

どのくらいの無党派層がどの程度今の政治に不快感を持っているかが焦点になる。現在は積極的な支持がないと言う情勢だが政権交代まで視野に入れて反対する人が少なければ不支持はそれほど大きな問題にはならないだろう。

問題はこれがいいことか悪いことかということになる。日銀の植田総裁は、賃金上昇が国民に広く受け入れられ消費意欲が向上しなければ現在の円安をもたらしている政策は変えられないと言っている。

植田総裁は22日の会見で、物価目標の実現には「強い総需要に支えられたもとで、賃金と物価が好循環を続ける姿が確認できることが必要」と述べていた。この日の会見では「内需の消費や投資が弱いもとで賃金・物価の好循環が続いていくというのはなかなか考えにくい」と説明した。

一方で岸田総理の基本戦略は庶民からできるだけ多くの税金を取りそれを支援者たちに分配するという政策をとっている。つまり、賃上げのために減税を行いそれを消費税や各種保険料で穴埋めをすると言う政策だ。岸田総理はこれを「持続的賃上げ」と表現している。とにかく「間に政府が入って分配をする」という作戦に固執している。

このやり方で好循環が生まれるかどうかの答えはおそらくこれを読んだ一人一人が持っている。期待できそうだと考える人が多ければ植田総裁の言う強い総需要が生まれ日本にとっては良い状態が作られる。だがそうでなければこれは単に自民党が政権を維持するためだけの党利党略に基づいた悪い作戦と言うことになりそうだ。

これを読んでいる人たちがどんな感想を持っているのかがわからないので、これが「日本全体にとっていいことなのか悪いことなのか」についての論評は差し控えたい。ただ一人ひとりが心の中で思っているだけでは状況は変わらない。SNSに記事をシェアしたりして初めて世論が形成され政治を動かすことになる。これを読んでどんな感想を持ったのかぜひXなどで意見が聞きたいものだ。

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