政治団体「日本を元気にする会」の松田公太参議院議員が「国民投票の活用」について意見を述べている。国政の重要課題に関しては国民投票を活用すべきだというのである。別のエントリによると現在地方自治体で行われている住民投票が念頭にあるようだ。
ヨーロッパで行われている国民投票は民主主義の枠組みそのものについての議論だ。イングランドとスコットランドは分離すべきかとか、イギリスはEUに留まるべきかというのは、民主主義プロセスの上位にあり、議会制民主主義では決められない。だから、国民投票を行うのだろう。
この視点から見ると、国民投票の多用は議会制民主主義と政党政治の否定に思える。つまり、政党には民主主義の枠組みを決める力はないということになる。例えば、あなたの勤めている会社が「どう意思決定していいか分からないので、何を作るかを従業員に直接聞きます」と言い出したらどう思うだろうか。多分「この会社は危ないのでは」と思うだろう。
だが、実際に政党政治は意思決定能力を失いつつあると認めてしまうというのも手だろう。事実、現在の政治は状況認識も示してくれないし問題も提示されない。野党に至っては何のための集るのかすら提示できない。「ただ、現状は大丈夫だ」と繰り返されるばかりで、この何年も何も解決していない。
いずれにせよ、政党政治を打開するために直接民主主義を導入するなら、ぜひ在宅の電子投票にしてもらいたいと思う。ただし、それは投票率を上げるためではない。選挙期間を一週間に設定して、その間であれば何度でも投票し直せるようにして欲しいのだ。
投票状況は随時TVで報道し、国会では議論を行う。賛成派と反対派がいるのだからそれぞれを擁護する。有権者はTVで見て投票結果を変えるのだ。「自分が投票しなくてもなんとかなる」と考える人も選挙結果を見て考えを変えるかもしれない。
現在の投票は一発勝負だ。開票結果を見て後悔したことがある人も多いだろう。だが、技術的には投票は一発勝負である必要はない。
選択肢は2つでなくてもよい。複数の選択肢を残しておいて、途中で取り下げても構わない。すると死に票は減るはずだ。現在共産党の票が野党を分断して死に票を増やすことが問題になっているのだが、これが最小化されるだろう。
また、蛇足かもしれないがTVポリティクスの打破にもつながるかもしれない。擬似レファレンダムというと小泉郵政選挙や安倍消費税選挙などを思い出す。消費税が嫌だからと自民党に投票した人も多いだろうが、そのあとで多くの国民は「安保法制に賛成した覚えはない」とちょっとした騒ぎになった。自民党は「小さな字で書いてありますよ」と主張したわけだが、もし丁寧に説明していれば国民も「負担が増えるのは仕方がない」と納得したかもしれない。今度は憲法なので、さらに騒ぎは大きくなるだろう。
冒頭に述べたようにこれは現在の政党政治の否定だ。だから議員はその役割を変える必要がある。議員は問題を提供し、分析した上で、ソリューションを提案する。ただし、最終的に決めるのは国民1人ひとりだ。特に参議院は独自の視点を持った専門家の集まりとして、視点を提供する役割を果たす事ができるだろう。
現在の政治の問題がそもそもの現状認識と問題点を提示できないことだとすれば、電子国民投票はその解決策になり得るかもしれない。