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支持率低迷のスナク首相が唐突に環境政策を転換 「政治的なギャンブルだ」との声も

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イギリスのスナク首相が突然環境保護政策を転換した。表明時期と方法が非常に唐突だったために、国内外に波紋が広がっている。中でも注目されているのが、ガソリン車・ディーゼル車の完全廃止の先延ばしだ。2030年から2035年に延期されるという。

イギリスではブレグジット以降も経済不調が続いており保守党はまさに「崖っぷち」の状態にある。スナク首相は労働党との間に対立軸を作ろうとしたがBBCは「ギャンブルだ」と切り捨てている。

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BBCの論評は次のように結んでいる。政権運営に行き詰まり「保守党、議会、人々を分断するようなギャンブルに走るしかなかった」というわけである。

Mr Sunak’s proposals are dividing his party, Parliament, and many in the country, but the PM will be looking at Labour’s lead in the opinion polls and concluding he has no choice but to gamble.

コンセンサス重視形の日本と違い、まず構想をぶち上げてから話し合いに入るというやり方はいかにもアングロサクソン型という気がする。


最初にこのニュースを伝えたのはBBCだった。現在は2050年までに排出実質ゼロ(ネットゼロ)を目指しているがこれを弱めると言う内容だった。Bloombergもこの報道を受けて記事を書いているが「詳細は不明」と言う状態だ。弱めるはしているが「目標を下ろす」とは言っていないからだ。

おそらくスナク首相は「狙った」のだろうが、時期が問題だった。

国連ではグテーレス事務総長の主導で環境問題について話し合いが進んでいる。岸田総理のように会議で発言を許されなかった首脳もいたがスナク首相はそもそも国連総会にぶつけるようにして政策の方向転換を宣言した。見方によっては国連に対する挑戦といえる。

グテーレス事務総長は社会主義インターナショナル出身の左派政治家である。BBCとBloombergは共通して今回の展開の理由を「労働党との間での争点さがしだ」と指摘する。国内外の左派的価値観と対立してみせることで違いを際立たせて選挙を有利に運ぼうとする狙いが透けて見える。

グテーレス事務総長は今回の国連総会でかなり過激な手法に訴えた。環境問題に関して「人類は地獄への扉を開けた」と危機意識をあらわにしている。その上、環境問題に後ろ向きとされる国から発言の機会を奪った。発言できたのは34の国とNGO7団体だけだったという。中国、インド、アメリカもリストから除外されている。

共同通信によると、岸田総理は発言を許されず欠席しスナク首相は国連総会そのものを欠席したという。出席を許されたアメリカのケリー特使も途中退席したそうだ。

イギリスはブレグジットしてからずっと高いインフレに悩まされている。このため世論調査では労働党が優位な状態が続いていた。スナク首相は労働党のスターマー党首との対比が際立つような政策を必要としていた。そこで選ばれたのが左派職が強い環境政策の転換だったのだろう。

イギリスの経済停滞は深刻である。BBCは「イギリスの経済は今後5年に渡って後退するだろう」とするシンクタンクのレポートを紹介している。このレポートが出された8月の時点でのインフレ率は7.9%だ。特に食料品の価格が値上がりしている。7月の時点で14.8%上昇していた。EUから離脱したことで通関処理が複雑化したのが原因だ。芋と穀物の自給率は高いためカロリーベースで言えば自給率は高いそうだが、さすがにそれだけで生活してゆくことは難しいのだろう。

結局スナク首相は事前の報道通りに環境政策を後退させることを決めた。閣僚たちは20日に突然この計画を聞かされたそうで「驚きを隠せなかった」そうである。保守党の中にも反発する人がいて今後亀裂が表面化する可能性がある。

BBCの記事を読む限りこれまでイギリスの先進的な環境への試みを誇りにしてきた政治家や科学者たちは今回の決定に怒っているようだ。イノベーションを促進しないことで化石燃料の消費が増えるため消費者の燃料費負担が増えるだけだと言っている人もいれば、投資が遅れることでイギリス国民の負担が増えるだろうと考えている人もいる。

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Comments

“支持率低迷のスナク首相が唐突に環境政策を転換 「政治的なギャンブルだ」との声も” への1件のコメント

  1. 下村 博隆のアバター
    下村 博隆

    CO2削減について根本から間違っているのでは、CO2を吸収する森林を伐採して、再生エネルギーでCO2削減と称して太陽光パネル設置を推奨していますが、太陽光パネルの太陽光が反射し大気中に輻射熱として蓄えられる事については何も語られないでいます。
    現在進行中ではありますが、CO2を大気中から集める装置が色々開発され、CO2を利用した燃料造り、バイオ産業などに利用が促されています。
    内燃機関についても、排ガスの抑制が進んでいて、また内燃機関の修理を行う環境が整い、廃棄についてもリサイクルを循環させる環境が整っています。
    EV車に於いては確かに車そのものは排気ガス0ですが、太陽光パネルや風車利用の再生エネルギーの環境に於いて果たして地球温暖化に適しているのか。
    またEV車はリチューム電池の残量が0になった場合、バッテリーは使用不可で廃棄しなければならないが、リチウム電池はリサイクル工程が未だ出来ておらず、また環境汚染物質を放置したままの状態でEV車の墓場が中国の各地で起きており、写真も流出してます。
    リチウム採掘現場では放射性物質が粉塵として大気中に巻き上げられ、風下の住民に異状が見られる現象が発生中と、EVが果たして人類にとって救世主となり得るか疑問です。
    現在の原子力発電、火力発電、水力発電以外のエネルギー開発は必要です、しかし環境保全と言いながら、パネル設置で森林破壊などで地球の循環型自然の循環破壊を行う事について問題提起されないのは如何なものだろう。