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FOMCの後はさらなる円安か現状維持か イエレン財務長官は「介入容認」もトレンド反転は期待できず

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9月のFOMCは利上げなしということになった。このため各紙の見出しは当然「金利据え置き」だ。しかしながら「利上げの終わり」を宣言できる中央銀行は現れそうにない。好調なアメリカ経済指標を背景にし「もう一回利上げを行う」ことも確実になったとみられている。そんななか日本の財務省はFOMC前から円安警戒ムードだった。イエレン財務長官が日本の為替介入を「容認」し神田財務官も「あらゆる手段」を排除しないと述べた。介入は行われるかもしれないが日本財務省の限界を示すだけに終わる可能性が高い。次の注目は日銀の金融政策決定会合になる。現在の為替水準が維持されるかあるいは更なる円安に進むかが決まることになりそうだ。

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9月のFOMCは当初の予想通り「利上げなし」となった。為替相場はFOMC前から円安方向にじわじわと進んでいた。FOMCの発表後ほんの少し円高に触れる展開もあったが結局水準が維持されこれを買いている時点では148円目前で止まっている。

アメリカ合衆国は政治的には混乱しているが経済は「好調」そのものだ。一度落ち着いていた物価と労働市場が再び活況を示していることもありさらにもう一度利上げを行うという見解が維持された。

23年末の政策金利の予想中央値は6月時と同じく5.50─5.75%となった。現行水準よりも0.25%ポイント上回る水準。

アメリカ経済がこれほど利上げに強いのはなぜか。

秘密は引き締めに転じる前のコロナ対策にあるようだ。低金利・手厚い財政支援・コロナ禍からの回復を支援するための信用の拡大などの影響から、企業は安い金利で長期間お金を借りることができていた。このため今はまだ金利上昇の影響を受けていないというのである。パンデミックの期間中に住宅ローンの借り換えをおこなった個人も恩恵を受けている可能性があると指摘している。

今後アメリカの経済はますます「持っている人・企業」と「持っていない人・企業」で大きく影響が違ってくることになるのだろう。富裕層は「買って借りて死ぬ」と言われている。彼らは財産ではなく稼げる装置を維持している。財産を持っていても課税されるだけなので、むしろ借金を作ってお金を稼げる装置(=資本)を買い「損」を作る。アメリカは財産主義ではなく「資本」主義の国なのだ。安く長期資金が借りられる環境は彼らにとっては有利な状況だったことだろう。

「投資して借りて死ぬ」? 富豪たちの節税戦略、大幅増税にも対抗可か(Forbes Japan)

一方でお金を貸している人が追い込まれている。実は2050年5月に満期を迎える30年債の価格が大幅に下落しているそうだ。1ドルの価格が50セントを割り込んだ。ここまで債権が下落すると投資家は何らかの手段でその埋め合わせをしなければならない。なぜか稼ぐ力を持っていて借りることができる人に有利で貸すことができる人が損をしているという不思議な状態になっているのだ。

さらに当然のことながら借金に頼って暮らしている人たちには今後高い金利が重くのしかかる。平均で見ると「経済は好調」だがその内容は様々だ。

一方で、FOMCが始まる前から、財務省はピリピリムードだった。まずアメリカのイエレン財務長官が「日本の為替介入に理解を示す」と発言し、神田財務官が「あらゆる手段を排除しない」と述べた。まさに臨戦体制だ。

これらの記事が書かれた時点ではまだFOMCの結果は出ていない。にもかかわらずさらに円安が進むことを想定しているかのような警戒ぶりだ。イエレン財務長官の発言は「為替介入を容認」と解釈されたわけだが「トレンドを変えるのではなく変動幅を縮小するためであればやっても良い」とキャップをはめる発言にも読み取れる。

Bloombergによれば正確な発言は次の通り。

  • 為替レートの水準に影響を及ぼすことでなく
  • ボラティリティーを滑らかにするスムージングが目的であれば
  • 理解できる

イエレン財務長官が何を恐れているのかはわからないが米国債を混乱させるようなオペレーションは許容しないということなのかもしれない。政治動向が混乱し予算がいつ成立するのかわからない状況下でイエレン財務長官は良い条件でできるだけ長く借入を行いたいはずである。だが、人気が集まるのは短期債ばかりでインフレ抑制策に発行された長期債はかなり価値が下がっている。

その後ロイターでは次のようなコラムが出た。考えてみれば変なコラムである。ドルの上昇を「予言」している。さすがにこれはやりすぎだと感じたのだろう。「2度あることは3度あるという結果となる可能性はそれなりに高そうだ。」と無難にまとめている。日銀が何も発表をしたわけでもないのに「何もしないのではないか」「やったとしても為替には影響は出ないのではないか」と指摘している。

ここまで書かれると「植田総裁にはぜひ何か思い切った発言をして世間をあっと言わせてほしい」などと変な期待も膨らむ。

そんな中、一人の安倍派閣僚の発言が注目されている。

アベノミクスをめぐっては年初来世耕弘成参議院幹事長が「アベノミクスは絶対修正するな」と「ひとりキャンペーン」を行っていた。しかしながら実際には徐々に円安に追い詰められる形で政策の変更が余儀なくされる状態に入っている。自身も清和会安倍派の重鎮である西村経済産業大臣は「あれは時間稼ぎだった」と財務省が主導する正常化路線に宗旨替えをしたことになる。

ただ急に「やがて来るであろう、金利高を乗り越えていける強い体質を作っていかないといけない」などと言われてもこれまで清和会・安倍派を支援していた人たちは戸惑うばかりだろう。何をどうすれば「強い体質が作れるか」が全くわからないからだ。

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