EUの移民対策が破綻しイタリアのランペドゥーザ島に2日で7000人の移民が殺到

シチリア島の離島イタリアのランペドゥーザ島の人口は6,000人程度だ。この島に2日で7,000人の移民が殺到し大騒ぎになっている。イタリアのメローニ首相がEUにクレームを入れフォンデアライエンEU委員長が慌てて島を訪問した。ウクライナの戦争により食糧価格が高騰すれば2015年のような移民危機が再発しかねないと囁かれていた。つまりこれは「予想された危機」だ。

EUはチュニジアとの間に協定を結んでいるのだが、これが全く実行できていないようだ。EUの移民対策は破綻したと考えて良いだろう。「管理された移民の受け入れ」が幻想であることがわかる。移民政策を転換しようとしている日本もこの事例を参考にすべきなのかもしれない。






ランペドゥーザ島は古くからフェニキア人、ギリシャ人、ローマ人の上陸地だった。19世紀にイギリスが拠点を作ろうとしたが最終的に両シチリア王国が領有を宣言し最終的にイタリア王国領となった。シチリア島の属島というよりは地理的にはチュニジアに近い。チュニジアからの距離は約130キロメートルである。このためチュニジアからの不法移民ブローカーの格好のターゲットになっている。ちなみに対馬から博多までがだいたい130キロメートル強なのだそうだ。対馬から対岸の釜山までが50キロメートル弱である。

今年に入ってイタリア沿岸には13万人の移民が到着している。これは去年の同じ時期の2倍だそうだ。移民が殺到しているためなんらかの対策が必要なことはわかっているが具体案についてコンセンサスは得られていない。

CNNによると直接の原因はチュニジアの政情不安である。

ではEUは何もやっていなかったのだろうか。もちろんそうではない。7月にはチュニジアの大統領との間に協定を結んでいた。協定に参加したのは、フォンデアライエン欧州委員長、メローニ首相。ルッテ首相(オランダ)、サイード大統領(チュニジア)だ。だが、このチュニジアの大統領の評判が良くない。

チュニジアはアラブの春のモデル国家としてヨーロッパから称賛されていた。しかし議会は自分達の利益誘導を図るばかりで国はまとまらない。最終的に法学者出身のサイード大統領が議会を解散し独裁を宣言したことで国がまとまったという経緯がある。

CNNはアメリカ民主党支持で「民主主義擁護派」である。このため権威主義的なサイード体制のチュニジアが気に入らない。EUは最大10億ユーロの支援を約束しているがこれが権威主義体制を助長するために使われるとして懸念を表明している。移民対策のために「ヨーロッパは魂を売った」と考えているのだろう。

アフリカの中にも南北問題はある。チュニジアはアラブ系の国家だがサブサハラや中東から流れてくる移民を受け入れている。サイード大統領は人種差別的な言動を繰り返しているためチュニジア国内でもサイード大統領に抗議する運動が起きているという。時事通信によればチュニジアは「渡航費を稼ぐ」ためにアフリカ各地から多くの移民がやってきて低賃金労働を担っている。一部のアフリカの国はチュニジアで横行する人種差別から自国民を守るために自国民を本国に連れ戻す動きすらあるという。サイード大統領は高まる国際非難に対応するためにビザの規制緩和やホットラインの設置などをおこなっているそうだが、チュニジアから流れてくる移民の流れを見る限り対策は十分ではないのかもしれない。

これまでの支援では移民の流れは止まらなかった。ではEUはさらにチュニジアを支援すべきなのだろうか。

チュニジアの経済状態は悪化の一途だ。2022年には既に「経済・財政上の危機に陥っている」という記事が出ている。ロシアとウクライナからの小麦に依存しており高いインフレに見舞われたのが原因である。IMFとの間で救済策が協議されたものの「IMFの一方的な命令は受けない」として拒否している。議会が解散したことからもわかるように政治家には危機感が薄く困窮に耐えて危機を克服しようという気概はない。

皮肉なことにEUのチュニジアに対する援助はサイード大統領に「移民対策を約束すればヨーロッパからの金を引き出せる」という甘い期待を抱かせる可能性がある。これはチュニジアが本来行うべき改革を遅らせる。その結果、国内の移民・難民問題が解決しなくなるばかりか、下手をすればチュニジア経済の破綻を招くだろう。当然経済が破綻すればヨーロッパにはさらに多くの移民・難民が押し寄せる。

同じことはリビアでも言える。リビアは現在中央政府がなく東部の政府はまともなインフラ整備をやってこなかった。この結果気象災害に耐えられずダムが崩壊した。リビア東部デルナの洪水の死者は1万人を超えたそうだ。

元はと言えば「チュニジアとヨーロッパの間に移民の流れ」ができていることが問題だ。ヨーロッパは低賃金労働者獲得の必要性から中東やアフリカからの移民を受け入れてきた。やがて彼らの間に口コミのネットワークができ「ヨーロッパに行けばなんとかなる」という流れが生まれる。こうした人々は当初トルコやリビアからヨーロッパを目指していた。しかしトルコとEUの間では協定が結ばれ、リビアは中央政府のない危険な状態になった。そこで代替ルートとして選ばれたのがチュニジアだ。だが、ウクライナの戦争が起こるとチュニジアの経済状態は著しく悪化し始める。そもそも国内の問題すら解決できていないのだから、移民難民にまで気が回るはずもない。新天地を目指してやってきた移民たちはチュニジアに定着することはできず、危険を承知で海を渡るのだ。

日本でも「管理された限定的な移民」というような議論が行われている。高齢化が進む地方はもう移民を受け入れないと地域経済が回らないと考える地域も多いようだが、今一度ヨーロッパで何が起きているのかをじっくり見てみるべきなのかもしれない。「とりあえず今地域経済をなんとかしたい」程度の気持ちで安易に言葉や習慣が違う人たちを受け入れるべきではない。迎え入れるのならばそれなりの覚悟をして行政にも組み込んだ上で地域に溶け込めるように最大限配慮すべきだし、それができないのであればそもそも安易に受け入れるべきではない。

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