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フリーダムコーカスがやりたい放題 マッカーシー下院議長がバイデン大統領に対する弾劾調査を指示

経済的には好調な状態が続くアメリカだが議会は混乱している。マッカーシー下院議長がバイデン大統領の弾劾に向けた調査に乗り出した。共和党内にも弾劾裁判反対派がいるため採決を避けて議長権限で調査を開始した。

ここでは軽く背景をおさらいした上で、その政治的影響についても考える。一部の人たちが議会を振り回すような状態はアメリカの政治にとってマイナスの影響を与えるだろう。

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アメリカの中間選挙において下院は思ったほど共和党が躍進せず、上院では支配権を手に入れることができなかった。結果的に下院にいる共和党の強硬派(フリーダムコーカス)の存在感が増す。

議長を簡単に解任できるように約束させられたうえに反旗を翻した人たちが仕事をしやすいように必要な委員会ポストを配慮した。21名が抵抗した結果、投票は15回におよんだ。6人は採決に加わらなかったが、声が大きい人ほど有利なポジションを得たと言われている。

フリーダムコーカスの狙いはトランプ政権下で下院を支配していたナンシー・ペロシ議長に復讐し2020年の大統領選挙結果を否定することである。このため共和党は調査チームを作り9ヶ月にわたってハンター・バイデン氏に対する疑惑を調査してきたが決定的な証拠は得られなかった。悪いのは自分達ではない。権限がないのがいけない。そう考えたフリーダムコーカスたちはマッカーシー下院議長に更なる「決断」を迫った。

ロイターの英語版が興味深いことを書いている。

McCarthy’s move sets the stage for months of divisive House of Representatives hearings that could distract from lawmakers’ efforts to avoid a government shutdown and could supercharge the 2024 presidential race, in which Trump hopes to avenge his 2020 election loss to Biden and win back the White House.

トランプ前大統領は選挙は盗まれたと言っている。これが正当化されるためにはバイデン大統領は「偽りの勝者」でなければならない。だからなんとしてでも証拠が必要。これがフリーダムコーカスの考える世界観である。「自分達は正しい」が起点になっている。

現在アメリカ合衆国の政府は部分的閉鎖の危機にある。アメリカの会計年度は9月で終わるのだが、次年度の予算ができていない。ここで部分的閉鎖を避けるためには「本格的な予算」が通るまでのつなぎが必要になる。マッカーシー議長はこのつなぎ予算を成立させたいのだが、共和党強硬派の協力が得られない。フリーダムコーカスたちは「さらに予算を削減せよ」と迫っているが上院のマコネル院内総務(共和党)にも拒否されている。すでにマッカーシー下院議長と大統領の間で取引がされているのだからそれは変えられないというわけだ。共和党の中には穏健派と強硬派の分断がある。

納得がいかないフリーダムコーカスたちは「自分達の要求が通らないなら下院議長を交代させろ」と迫った可能性すらある。つまり、共和党の一部に国民生活を犠牲にしてでも2020年の大統領選挙敗北を否定したいと考えておりマッカーシー議長がこれをコントロールできていないことになる。そして共和党穏健派はこれにうんざりしている。

まさに学級崩壊状態だ。

そもそも各メディアはこの弾劾裁判は成立しないだろうとみている。

今回、下院議長は職権で調査の開始を決めた。だがこれが本格的に弾劾プロセスに乗るためには少なくとも1つの弾劾決議が下院で可決される必要がある。穏健派の支持を確保したい中道の共和党議員がこれに乗る可能性はそれほど高くない。「政治的ショーのために国民生活を犠牲にした」と批判されることは目に見えている。民主党支持に鞍替えする人はいないだろうが、選挙に行かなくなる可能性はある。

仮に弾劾決議が出され可決されたとしても上院で否決される可能性が高い。共和党が支配権を持っていないからである。

アメリカは三権が分離しているのだからハンター・バイデン氏に対する調査は裁判所で行われるべきだ。一方で、議会は法律を審議し予算を可決するための場所だ。

だが、アメリカ合衆国の有権者が共和党を大勝ちさせなかったことで下院議長権限が弱まり、結果的にフリーダムコーカスの人たちに活躍の機会を与えている。今後の焦点はアメリカの下院がどれくらいこの政治的サーカスに振り回されるかだろう。マッカーシー下院議長が指導力を発揮できなければ議会選挙で共和党は有権者から見放される可能性がある。

一方で大統領選挙においてフリーダムコーカスとトランプ氏の人気は根強い。仮に次の大統領選挙でトランプ氏が勝利するようなことがあれば有権者の議会に対する判断と大統領選挙に対する判断にねじれが生じることになる。

アメリカの政治的安定は日本の安全保障上極めて重要なのだから、これはあまり日本のためにならないはずだ。

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