リビア東部のデルナ市で洪水が起き死者数千人、行方不明者1万人という事態になっている。異常気象が世界中で頻発しているとはいえなぜここまで死者・行方不明者の数が増えたのかが日本のメディアを見ていても全くわからない。調べてみるとリビアの政治的混乱とインフラ整備の遅れが被害を拡大させたようだ。上流と下流で2つのダムが決壊したそうである。
リビア東部を「ダニエル」という暴風雨が襲い数千人の死者が出た。行方不明者の数は1万人に上るそうだ。暴風とはいえそこまで被害が拡大するものなのだろうかと思う。
ニュース記事を読み比べるようになってから日本の媒体がなんとなく信頼できなくなっている。そこでロイターの記事を読んで内容がわかった。カダフィ大佐が掃討されたリビアは国内混乱が続きトリポリにある政府は東部を実効支配できていない。この東部(キレナイカ地方と呼ばれる)のデルナ市でダム決壊し被害が拡大したようである。おそらく日本のメディアはあまりこの地域に関心がないのだろう。
- リビア洪水、東部都市25%消失 死者2200人に 1万人不明(Reuters)
NHKの報道はさらにひどい。岸田総理がお見舞いの言葉を送ったとして報道を終わらせている。日本としては「やることはやりました」ということなのだろう。
北アフリカのリビアで大雨による洪水で被害が出ていることを受けて岸田総理大臣は12日夜、リビアのドゥバイバ暫定首相宛てにお見舞いのメッセージを出しました。
あらましは日経新聞がまとめている。
リビアの内戦は国連の仲介で集結した。国連が主導して暫定政府が作られ選挙をやることになった。ところが東側の代表者たちが勝手にバシャガ氏という別の首相を擁立してしまい分裂状態になっている。岸田総理がお見舞いをだしたドゥバイバ暫定首相は東側を統治しておらず、選挙ができないまま「任期が切れた」状態になっているということだ。
- リビア「2人の首相」で混迷に拍車 遠のく大統領選 (日経新聞)
日本政府はあまりリビアには興味がなく、したがって国連(みんな)が認めている政府の代表者に形ばかりのお見舞いを送っただけで話を終わらせてしまったということになる。仮にこのさき西側諸国(みんな)が支援を始めればそれにお付き合いしてなんらかの対応をするということになるのかもしれない。
さて、リビアの洪水についておそらく最も詳しく書いているのはアラブ系のアルジャジーラだろう。警報のようなものはなく気が付いたら大洪水に見舞われていたそうだ。被害はリビア東部全体に及んでいてキレナイカにある3つの県も被災地指定されている。だが、同部には実効支配が及んでおらず国際社会の支援が行き届くのかは不透明な情勢だ。
デルナ市を襲った洪水はワジ・デルナと呼ばれる川にある二つのダムが決壊したことで起きたようだがデルナ市から上流ダムまでの距離は12kmに過ぎない。ベンガジからデルナにかけては後背地に山があり地中海からの風があたると若干の降雨があるようだ。この貴重な雨水を貯めるためのダムだったのだろうが、西部を支配する勢力はインフラ整備には気が回らなかったのだろう。東部沿岸地域は広く洪水に見舞われているがダムが決壊したことでデルナ市での被害が目立つ形になったということがわかる。