おそらくあまり国民の関心は高くなさそうだ。だが永田町は国民民主党が連立与党入りするかで沸き立っているらしい。ついに「国民民主党が連立与党入りするなら内閣改造を9月末まで待っても良い」という報道もで始めた。背景にあるのは労働組合「連合」の取り込みと公明党への牽制である。
国民民主党で代表選挙が行われた。争点は自民党との距離だったが結局は自民党との是々非々路線を訴えた玉木雄一郎氏が圧勝した。この辺りから、自民党が国民民主党に連立入りを打診するのではないかという報道がで始めた。
表向きの報道は「連立入りを打診するのではないか」ということになっているのだが、国民民主党側は「打診はない」と言い続けている。にもかかわらずFNNは「一方、国民民主党との連立構想をめぐって協議が進展する場合は、人事を9月下旬に遅らせる考え。」と書いている。つまり、玉木雄一郎氏の側からのアプローチがあれば人事を遅らせても良いのだということになっているようだ。つまり玉木氏の動向によって重要な政治日程が変化しかねないという不思議な状況だ。
同系列の産経新聞も同じような書き方をしている。
首相が人事の日程を明示しないのは、内閣改造に合わせ国民民主党を連立政権に加えることを模索しているとの指摘がある。自民幹部は「連立を全く考えないなら人事は11~13日、考える余地があるなら政策合意を含め時間がかかるので25日以降だ」と話した。
普通、このように大きな動きがある場合には誰か実力者が間に入り調整をした上でサプライズで発表されるのが普通である。当然今回も水面下で誰かが動いているのだろうと思いたいところなのだが、一向にそんな話が出てこない。報道が一人歩きし永田町担当の政治記者たちだけが張り切っているという状態である。
これと似たような動きが最近あったなと思った。それがG7早期解散論だった。最初は麻生・茂木両氏が前のめりという印象だったが、実は岸田総理が焦っていたという報道に入れ替わっていった。今回の動きも表面上は茂木幹事長が期待を表明しているように見えるのだが、実際には「官邸が待っている」のだから岸田総理が期待していることになる。問題は岸田総理が実際に働きかけているのか「長老」のような人が玉木氏と昵懇なのか、あるいは誰もが納得するような人が「総理のお使い」になっているのかという点にあるのかもしれない。
玉木氏側も自民党からなんらかのディールが出た時点でそれを関係者各位と相談し議員の「メリット・デメリット」を見極めた上で「乗るか乗らないか」を決めたいようだ。自民党は国民民主党の後ろにいる連合を支持母体として取り込むことを期待しているのだろうが、玉木氏は「連合の他にも支持母体はある」と言っている。国会議員21名の小さな世帯の政党だが背景事情は実にさまざまだ。こうした細かな条件面を全てクリアにした上で9月までに連立入りを決めるのはなかなか難しいのかもしれない。
- 国民民主党・玉木雄一郎代表「連立入り、次元違う話」(日経新聞)
- 国民・玉木代表「連合は大切にするが、連合の党ではない」(朝日新聞)
おそらく今最も焦っているのは立憲民主党だろう。国民民主党が政権入りを決めても連合はついてゆかないだろうと牽制している。逆に連合内部から政権になびく労働組合が出てくることをかなり警戒しているようである。連合は寄り合い所帯であり会長も「動向を注視する」とどこか心もとない。
同時に立民は国民民主の与党接近を警戒している。立民関係者は3党連立構想を「無理だ。玉木氏が参加しても連合はついてこない」と牽制(けんせい)した。
- 立民が国民民主にやきもき 与党接近を警戒(産経新聞)
- 連合会長「国民民主を注視」 玉木氏再選、共産幹部「補完勢力」(時事通信)
比例代表がメインになっている国は選挙の前に連立を組み合同名簿を発表するか、あるいは選挙後に連立を組み首班を指名する。つまり、有権者の意向が連立に反映する仕組みになっている。コアになっているのは当然「政策が協力できるか」である。一方で小選挙区制の国は政党内で政策コンペを行い首班候補者を決めてから選挙に望む。
日本はこのどちらにもなっておらず、選挙もやっていないのに連立組み替えが話題になり、かつ国民が誰もそれに反発せず「どうぞご自由に」という不思議な状態になっている。