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「統一教会の解散命令請求は政権に好都合なタイミングで」と政府関係者ら

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先日、旧統一教会の解散命令請求について報道の表現が割れているという話を書いた。有権者は「決まってから教えてくれ」という人が多かったのではないかと思う。そんななかTBSが政府は「政治日程」を見て解散請求を出す時期を決めるのだと報道している。仮にそうだとすると、解散請求命令を政権支持率浮揚のために政治利用するつもりでタイミングを見極めようとしている可能性がある。ただ外交の季節がやってくると政権支持率そのものはしばらくは自動的に上がるのではないかと思う。ただ、その上がり方はおそらく政権にとって好ましいものにはならないだろう。

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旧統一教会の解散請求命令について報道の表現が揺れている。当初は過料10万円という報道が出た。これだと結局7回も質問をして「なんだ過料だけなのか」ということになってしまう。そこで「政府は解散命令請求を出す方針だ」とする強い口調の記事が出た。だが、最終的に「慎重に見極める」ということになって終わった。

TBSがその理由について短い記事を書いている。

政府内には教団に対し、解散命令を請求すべきだとの声も出ていますが、今月は内閣改造が控えているほか、与党内では岸田総理が早期の解散総選挙に打って出る可能性もささやかれていて、こうした政治日程もにらみながら政権としての対応を判断することになります。

言葉通りに読むと「忙しいから今はちょっとなあ」となるのだが、官邸が忙しいからといって文部科学省が何もできなくなるわけではない。つまり官邸がなんらかの理由で判断に迷っていることになる。支持率向上に最も良い時期を見極めつつ利用したがっているのだろうと読める。

被害者救済を訴える弁護士団は「いいから早く解散命令請求を出してくれ」と訴えている。解散命令請求の政治利用は被害者に寄り添っている姿勢とは言い難い。

これを政権に近い読売新聞が書くとこうなる。少し格好をつけて書いている。

まずリードに「政府内には早期に請求に踏み切るべきだとの強硬論も浮上している。」と書き前のめりの姿勢を強調する。しかし信教の自由も重要だから「請求の要件を満たすかどうか更なる精査をすべきだ」(政府高官)として慎重に時期を見極めていると落としている。

読売系列の日本テレビも同じような書き方をしている。前のめりさを先に出しつつ慎重意見を添えることで「臆病なんじゃない、慎重なだけである」と強調する。

判断の時期について、政府内からは、「10月中旬までに解散命令の請求を」との声もありますが、ある政府関係者は、「法と証拠に基づいて行うもので、請求するにあたり、材料をそろえるのはそう簡単ではない」と慎重な声もあがっています。

だが、こうした関係者たちの細かい計算や思惑とは全く関係なく支持率は少し上がるのではないか。JNN(TBS)の世論調査で内閣支持率が微増した。誤差である可能性もあるがあるいは「汚染水問題」が影響しているのかもしれないと思う。

増税やマイナ健康保険証の問題では「国民対政府」という図式が作られていた。ところが中国がALPS処理水を「汚染水」と決めつけ日本にいたずら電話がかかってくると図式が「日本対中国」に入れ替わる。つまり「我々」の構成が変わると賛否が変わるということになる。電話による世論調査は単に賛否を聞いているだけなので回答者がどのようなロジックで何に賛成しているのかはよくわからない。回答者はできるだけ「我々」が有利になるように答えを調整しているはずである。

今週はASEANとG20で会合が行われる。すると国内向けのネガティブな報道は抑制され「汚染水と言いがかりをつける中国を抑え込んでやった」とする報道が増えるはずだ。G7会合をピークに政権支持率が上がったのと同じ図式である。領土問題でインドとの関係が悪化しているため、習近平氏が一連の会合に参加しないことも決まったようだ。つまり日米にとっては外交得点をあげるチャンスであり「チームジャパン」が前面に出る。

どの程度数字が上がるのか(あるいは全く変わらないのか)はわからないのだが、仮に数字が上がれば岸田総理は「やはり自分が前面に出てアピールすれば支持率は上がる」と考えるだろう。国民は「我々」で考えるが岸田総理は「私」で考えている。

この「日本対中国」という図式は人事の交代と同時にやってくることが予想されているため、あるいは「私が決めた人事は大成功だった」と感じるかもしれない。現在人事は9月中旬と下旬という2種類の観測が出ているそうだ。

しかしながら「日本対中国」という図式は外交の季節が終わると剥落してしまう。するとまた「財務省対国民」とか「政権対サラリーマン」と言った図式が報道されることになるだろう。ここで岸田総理が「自分が前面に出て決定すれば支持率は上がるはずだ」といい続けならば、これはかえって政権の支持率を落とす方向に作用するかもしれない。「政権が国民と対決し無理に決定事項を押し通そうとしているからだ」という印象が生まれる可能性が極めて高い。

この記事では一貫して「中国との対決姿勢を鮮明にして高い支持率を維持すべきだ」とは書かなかった。海外の政治事情を知っている人は「外に敵を作り出し仲間を団結させる」という手法が麻薬的な効果を持っているということをよく知っているはずだ。つまり、日本の政治がまだそれに気がついていないのは不幸中の幸いとも言える。

だが、おそらくそれに気がつく人は早晩出てくるのではないかと思う。「みんなの総意」が大切な民主主義は「我々という麻薬」に対しては極めて脆弱である。

そもそも旧統一教会問題も「我々とあいつら」問題である。旧統一教会に関係している議員たちがおおぜい報道され「たくさんの被害者が出ているあの組織と自民党は一体だったのか」という印象がついた。政権はこれを払拭するために旧統一教会との関係者を切り「我々はあいつらとは関係がない」と主張する。国民は「解散請求が出れば信頼してやってもいい」と考える。7回質問を繰り返した結果10万円以下の過料で終われば「ほらやはり自民党はあいつらとグルだった」と言われかねない。政権は今そこで困っているという状態になっている。

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