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電子投票はWhy Notの精神で

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松田公太参議院議員が日替わりのエッセイで電子投票を実施すべきだと主張している。この主張には大賛成だ。この種のイノベーションは「できない理由」を考えていてはだめだ。英語では「Why Not精神」という。なんでやらないの?という姿勢が大切なのだ。
電子投票のメリットはいくつもある。松田議員は自宅でパソコンを使って投票できれば候補者の情報を調べることができ政策中心の選挙ができるかもしれないと言っている。もちろん投票率も上がるだろう。地域によっては投票所に出向くのが難しいところもある。「お年寄りはパソコンが使えない」という声もあるだろうが、PCベースの簡易投票所の設置が簡単になるだろう。
もちろん懸念もある。個人特定が前提なので権力者は「誰が誰に投票したか知りたい」と思うはずだ。現行のシステムでさえ「不正投票」の疑いを持つ人がいる。多分電子投票になれば不正投票の疑念はさらに膨らむだろう。別の不正を懸念する人もいるだろう。介護施設などでお年寄りが投票する際に後ろで「この人に投票してくださいね」などと言い出す人はが必ず出てくるだろう。秘密投票が守られなくなるような行為は法律で禁止すべきだ。
例えばエストニアでは電子政府化が進んでいて、ICカードを使った電子政府システムが構築されている。日本でいうマイナンバーカードのようなものだ。エストニアでは、気が変わったり誰かに強要されても期間中であれば何度でもやり直しができるそうだ。
一方でシステム上にいくつかの問題点が指摘されている。また、運用面でもセキュリティの甘さがあるそうだ。新しい取り組みにはこうした問題点がつき物だが、欠陥を認めた上で修正を加えてゆかなければ、いつまで経っても技術は進歩しないだろう。
日本は緻密なシステム作りが得意な先進国だから、こうした問題は起こらないと思う方も多いだろうが、実際にはもっと低レベルの問題が起きている。国政レベルでは禁止されている電子投票だが、地方自治体レベルでは電子投票の実績がある。ところが運営に失敗して、選挙無効が確定した事例があるそうだ。それが可児市のケースだ。
このケースでは投票システムがダウンし、投票を諦めて途中で帰った人もいた。さらに悪いことに後で計算したところ票数が合わなくなるトラブルがあった。原因はムサシという会社がシステムをうまく運用できなかったことだった。ムサシは紙ベースの投票システム運営には慣れているが、電子投票システムに対する経験がなかったのだ。実績ベースで業者選定をしたのが裏目に出てしまったといえる。
マイナンバーカードを普及させるためにポイントカードと結び付けようという計画があるそうだ。同じお金をかけるなら、エストニアのような電子政府化を目指した方がいいのだが、これを縦割り行政で行うのは難しい。やはり政治家が指導して省庁横断的にやらなければならない。
最初に述べたように、最初に必要なのはWhy Notの精神だ。しかし、やはりそれだけではだめで「失敗を恐れて状況を複雑にしたがる人たち」を束ねて必要最低限の複雑さでシステムを構築するプロジェクト管理能力が必要なようだ。
いきなり国政選挙で行うのは難しそうなので、まずは○×式の住民投票などから始めて実績を作り、その後に国政選挙に応用するくらいがよいのではないだろうか。その際には「わざわざ投票所で電子投票」ではなく「自宅やスマホでもできる」ネット方式を取り入れてもらいたい。


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