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黒田ショックの正体

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2015年12月にアメリカでゼロ金利政策が終わり、新興国から資金が退出するだろうと言われはじめた。中国経済の成長が鈍化しているのではないかという観測がささやかれるようになった。
原油の価格が下がり、資金に困ったサウジアラビアのなどの大口投資家が金融機関から資金を引き上げているのだという観測が流れた。だが、TVの正月番組は「アベノミクスの成果は着々と上がっており」株価は上がるだろうという強気の観測を流し続けていた。
年始早々、2015年に20,000円に到達していた株価(日経インデックス)が下がり始める。1月中旬になんらかの介入があったのかやや値を戻す。この頃Twitter上では「年金が吹っ飛ぶ」という声が冗談半分で上がり始める。GPIFでは十数兆円規模の損出が出ているようだが詳細の提示はされていない。マスコミも知りたくないのか、この事についてはあまり触れなかった。
1/19に人民元の切り下げられ、中国経済は苦しいのだという観測がより確かなものになった。
stockprice1月29日、日銀マイナス金利の導入を発表(実施は2/16から)した。NHKはさかんに「中国の景気が減速したから景気が減速している」という中国起因説を唱え始めた。アメリカの金利政策については全く触れなかったし、ヨーロッパの事情についても触れなかった。
株式市場が日銀マイナス金利の発表に動揺して下がり始めるが、やがて下げ止まる。何らかの介入があったのかは分からない。だが持ちこたえられず再び下がり始める。17,800円だった株価はこの後二週間で15,000円を割り込むまでになる。
当初、専門家はマイナス金利の導入は「よくも悪くも何の影響もない」と主張した。また、円の価格が上昇するか下落するかは分からないとのことだった。結局、円の価格が上がり始める。日銀のマイナス金利政策は銀行の収益を悪化させるので、銀行の株価が下がった。だが、TVでは預金者には直ちに影響がないと繰り返した。また住宅ローンが借りやすくなるという言動も見られた。
経済評論家を名乗る人の中には「銀行は調子に乗りすぎているからシバくべきだ」などと無責任なことを言う人や、逆にマイナス金利政策は「日銀の硫黄島」なのだと不安を煽る専門家もいた。だが、黒田ショックは意外なところに飛び火した。マイナス金利政策で安全な資金の逃避先がどこにもないと考えた投資家たちがざわつき始めたのだ。黒田総裁は国内を見て「ショック療法で投資を促進しよう」と思ったのかもしれないが、世界の裏側にいる人たちにショックを与えてしまったのだ。
2月8日にドイツ銀行のCDSが急騰する。EUは預金封鎖による損出の補填(ベイルイン)に合意しており、イタリア・ギリシャ・ポルトガルなどで準備を始めたという噂が流れたようだ。そこでヨーロッパの銀行株が軒並み下がり、逆にCDS(リスクを引き受けるとされる)が急騰したようだ。ドイツ銀行はつぶれてしまうのではないかなどとささやく人もいた。
中央銀行に不信感を持った市場が資金をヨーロッパから逃避させ始めた。一部の専門家の中には銀行に大きな金庫を作り現金を退蔵しようと提案した人もいた。安全な投資先はどこにもなく、札束を抱えているのが一番安全だとされているのだ。
yen_price次に状況を悪化させたのはアメリカの中央銀行だった。2/10のイエレン発言により、ダウ平均が下がり、円高がさらに加速する。イエレン議長は利上げを決めたばかりだったが、金融市場が不安定になっており「再利上ができるかどうかは不透明である」と証言し、場合によってはマイナス金利もありえるというようなことを匂わせたのだった。
ヨーロッパ中央銀行、日本銀行、FRBがそれぞれ市場の信頼を失うなか、市場がパニックの様相を見せ始める。より円が買われる。円は安全資産と見なされているようだ。しかし株式市場に資金は流れず、国債に流れた。国債の利率がマイナスに下がる。金の価格も急上昇しはじめており、リスク回避の動きは広がっている。
中にはリスク回避で国債の奪い合いになるだろうからという観測で国債を買っている人がいるといいだす専門家もいる。金融市場が疑心暗鬼に陥っており、国債すら信頼できなくなっているのだ。後で投売りすれば金利は高騰するだろう。バブル資金が流れ込んでいるわけだから、国債が値崩れ(国債の場合には金利が上がること)が予想される。だが、政治家たちはこの後に及んでも気楽に構えている。
「国債が安く買えるのだから、借金を積み増せ」という政治家や


ファンダメンタルズによる株価の下落ではないからアベノミクスのせいではないといっている議員がいる。


そもそも世界的な潮流なので日本が介入してどうなるものでもないし、年金資金まで動因して株価を支え続けているということがわかっていないのだろう。現在起きている国債の超低金利はバブルなので、借金を積み重ねれば、あとで返済に苦しむ可能性が高いということも忘れられている。しかし、各国の国債は最後の防波堤のようになっているので、無責任な政治家たちは、政府は借金をして景気対策をしろと言い出すだろう。
2月12日のTVは株価や円については触れず、育休議員の宮崎謙介氏が議員を辞職するというニュースを大々的に取り上げ、金融不安については多くを語らなかった。一方、Twitterにはさまざまな情報が流れた。

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