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建国記念の日は日本の誕生日ではない

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日本を元気にする会の松田公太議員が「日本を愛しているのに日本の誕生日を知らないのは恥ずかしい」という文章を書いている。だが、これはよくある誤解だ。
よく知られていることだが、建国記念の日というのは明治に作られた「捏造された歴史」の一つなのである。捏造された歴史には神道にまつわるものが多いのだが、これもその一つだ。近代国家の体裁を整えるのに諸外国にあるような「国ができた日」がないのは具合が悪いと考えたのだろう。以下、Wikipedia情報なので学術的には使えないと思うのだが、ご参考までにご紹介したい。
明治政府が参考にしたのは中国の占いである。辛酉の年はどちらも金性を帯びている。武器などを連想させることで革命と関係があると考えられているそうだ。そこで辛酉の年には革命が起きると考えられた。君主としては革命が怖いので、平安時代頃からこの年に元号を変えることになった。
明治時代の学者がwikipediaによると推古9年から1260年前(中国の暦では一つの単位になっているようだ)の紀元前660年に神武天皇が即位したということにした。天文学から計算したところこの日付けには妥当性があると書いている人もいる。原典の辛酉年春正月庚辰朔という記述に当てはまるのは、紀元前660年1月1日しかないとのことである。ただし原典の日本書紀が完成したのは西暦720年であり、文字のない時代に1000年以上前のことを正確に伝承できているかどうかは分からない。戦乱で多くの歴史書が焼けており、古事記との間にもずれがある。
よく考えると、紀元前660年にはまだ稲作も始まっていない。現在風の歴史区分では縄文時代だ。にもかかわらず正月が現在の2月であるというのは不自然だ。2月を正月にするようになったのは、中国から輸入してきた太陰暦の影響だからだ。半島からやってきた暦博士がカレンダーを管理するようになったのは554年だそうだ。暦を管理するにはなんらかの文字が必要なはずだが、縄文時代に文字があったという話は聞いたことがない。
そもそも中国の最古の暦も紀元前100年ごろのものであり、暦のはじめ(正月は立春で別概念だったようだ)は10月だったとのことである。
本に書いてあるから正解というのはいくらなんでもひどすぎる。日本書紀自体が外国向けに体裁を整えているのである。
いずれにせよ、紀元前660年1月1日を新暦に直したのが2月11日だそうである。日本では時間を支配できるのは天皇だけなので、この日に歴史(正確には暦だが)が始まったことになる。その意味ではキリストが産まれた(とされる)年を西暦の始めにしたのと似ている。西洋では毎年この日をクリスマスとして祝っている。クリスマスも西暦531年に推定された、新しい暦だ。後に歴史書を検討した結果「キリストは紀元前4年前までに産まれていなければおかしい」ということになったが、暦はそのまま使われている。
戦前2月11日は「建国記念日」ではなく「紀元節」と呼ばれた。日本版のクリスマスだ。戦後、GHQが日本神話を否定したのでこの日を表立って祝えなくなってしまった。そこで「日本が建国したことを偲ぼう」という理屈が付けられた。GHQへの反発心もあったのかもしれない。その後、何回も廃案になった後で1966年にようやく建国記念の日として復活した。こうして戦前の記憶が「隠蔽」された記念日には新嘗祭がある。これは現在勤労感謝の日と呼ばれている。
Wikipediaの建国記念の日のセクションや神武天皇即位紀元(皇紀)のセクションには「日本書紀に紀元前660年が紀元だと書いてある」と書かれている。しかし、辛酉のセクションには明治時代の学者那珂通世という歴史学者が「推定に協力した」とされている。Wikipediaの中でも揺れているようだ。
このように明治時代に「捏造」された歴史は多い。しかし、明治官僚や学者たちが諸外国に引けを取らない体裁を整えようとしたのだと考えることもできる。フランスやアメリカには建国記念日があるのに、日本にないのは恥ずかしいという訳だ。だが、これらの国々は革命で作られた日であり、日本のような自然国家とは比べられない。本物の愛国心というものがあるなら、革命や歴史が中断されるような混乱が起きなかったことに感謝すべきなのかもしれない。
しかし、建国記念日がはっきりしない国家は日本だけではない。イギリスも大規模な政体変更を経験していないので建国記念日がない。ドイツは東西ドイツが統一した1990年10月3日をドイツ統一の日として祝っているそうだ。韓国は日本より古い紀元前2333年を紀元としている。Wikipediaによるともともと新興宗教が祝っていた開天節を戦後になって国で祝うようになったということである。日本の紀元節への対抗意識があったのかもしれない。
ちなみにサンフランシスコ講和条約が発効して日本の独立が回復したのは4月28日だそうだ。本来ならこの日を独立回復の日として祝った方がよいのかもしれない。しかしながら、この日は日本が歴史上唯一外国に占領されていたことを思い出させる日でもあり、右派には受け入れられないのかもしれない。
あまり評判のよろしくない日本会議は元号や皇紀の復活を願っているとされている。この方が「日本らしい」というわけだ。しかしながら、こうした一連の「日本の古き良き伝統」というのは明治期に作られたものに過ぎない。真の愛国者を自任するならこのことは知っておいた方がよいだろう。