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野村哲郎農水大臣が「汚染水」発言で一発退場の危機 なぜこの人が農水大臣なのか

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野村哲郎農水大臣が「汚染水」発言で一発退場の危機に立たされている。前から「この人はヘンだ」と言う話もでているそうだ。そもそもなぜこんな「失言おじいちゃん」が農水大臣になったのかと疑問に思った。背景にあるのはおそらく日本の農政の地位低下である。

メディアでは「国益のためにはやめてもらったほうがいい」というような報道が出ていた。野党も失言を非難する方向だったが取りやめている。立憲民主党には確信犯的に「汚染水」という言葉を使う議員がおり「ブーメラン」を恐れたものと解釈されている。泉代表はなぜこの議員を抑えないのかと思うのだがXのスレッドを見る限り確かに「絡むと面倒臭そうな人だ」という気がする。

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答弁の安定性が疑問視される程度のコミュニケーション能力しかない人が農水大臣に起用される理由は国民が農水行政に興味がないからだ。

農林水産省も消費者に対する姿勢よりも農協などの供給側とのコミュニケーションを重要視してきた。このため農林水産大臣の発言が注目されることはない。これが厚生労働大臣、経済産業大臣とは違っている。さらに特に農業従事者が減っているという事情もある。あまり旨味がある利権省庁とも思われていない。陳情対策として公明党がこだわる国土交通大臣とも違っている。

今回全く注目されてこなかった野村大臣の発言が「汚染水」の言い間違いで注目されたのは普段注目されていないことの裏返しともいえる。そしてその元凶はそもそも日本の農政が需要側(消費者)に向いていないことの表れだ。

野村哲郎農水大臣は参議院・鹿児島選挙区選出だが、元々はJA鹿児島の役員だった。ただ、JA出身者が農水大臣になる決まりはないようだ。岸田政権の前の農水大臣は金子さんと言う元長崎県知事である。

JAは参議院比例区から議員を出しているが現在の日本農政連の票数はわずか22万票だそうだ。オタク票の山田太郎氏は29万票で落選し53万票で当選しているのでオタクよりもJAの方が数が少ないことになる。ちなみに最も大きな集団は郵便局である。小泉政権で一度「ぶっ潰された」はずなのだが、今でも60万人規模の動員数がある。

消費者も農政にはさほど関心がない。単に何かがなくなれば騒ぎ、終われば忘れてしまう程度だ。

国内でバター不足が囁かれると農水省は補助金を出して畜産の大規模化と効率化を推進した。これを「畜産クラスター事業」という。ところが牛乳の過剰生産が起きると今度は飼育した牛を殺した人に15万円の報奨金を支払うと言い出した。畜産農家は悲鳴を上げたがおそらくそんな話は知らないという人が多いのではないだろうか。

今でもこの問題は解決していない。対策も極めて場当たり的だ。

生産過剰が続くと牛乳の価格が値崩れする。円安で燃料費と飼料の価格が高騰しているため生産を続けても赤字が膨らんでゆく。結局乳牛生産者は投資が回収できず廃業の危機に立たされている酪農家が多い。

笑うに笑えない話だが、農水省の対策はなかやまきんに君だった。タンクトップを着て「ヤー」と叫ぶ芸人さんである。

YouTubeなどで「フェアププライスプロジェクト」と言う意味不明のキャンペーンが始まっている。なかやまきんに君が「ヤー!」と叫んでも牛乳の市場価格が上がるわけではない。そもそもこのCMが何を意味しているのかよくわからなかったと言う人がほとんどではないだろうか。とにかく牛乳の価格を上げたいが政府は市場に介入できない。そこでなかやまきんに君に「ヤー」と叫んでもらっているのだ。だが農水省は消費者には興味がない。だからどうしていいかわからないのだろう。

もともと農協は農家からのお金を集めて資金運用することで政党支援団体として大きくなってきた。その意味では全国特定郵便局に支えられている郵政族と同じような構造がある。一方で消費という観点は希薄である。このため、農水族や農水大臣の一般国民に対するコミュニケーション能力はそれほど重要視されてこなかった。

野村農水大臣は中国の反発が想定外だったと主張し反発されている。正確には消費者対策や販路の拡大などは自分の仕事だとは思っていなかったのだろう。せいぜい農水官僚から出されたと思われる弁当を食べて言われた通りにカメラの前に立つというくらいの感覚しかない。

立民、野村農水相「想定外」発言批判 中国の全面禁輸(時事通信)

一方で農家が置かれた環境に対する危機意識は極めて強い。つまり供給側に対する姿勢はそれなりにしっかりしている。

近年ではそもそも農家が減っている上に農家にも金融的な選択肢が増えている。このため農家のJA依存率が減っている。このため例えば、JA共済の販売をめぐり不適切な契約が蔓延していた。農協職員に過大なノルマが課せら知らないうちに契約を結ばされたと言う人も多いそうだ。この時、状況をよく知っている野村農水大臣は「しょうがないと目を瞑ってきたが、もはやそう言うわけにはいかない」と発言し危機感をあらわにした。

安倍政権は「農業改革」を掲げ農協(JA全中)の権限を縮小してきた。野村農水大臣はこうした状況を踏まえてJAに変革を求めつつ軟着陸を目指して「脱補助金」の農政を実現したいと訴えてもきた。

野村氏は目先の対策の重要性は強調しつつ、価格高騰を受けた補塡策は永続的ではないとの認識も示した。相場の急騰にかかわらず平時から農業経営を維持できるように「仕組みづくりをしていきたい」と訴えた。

しかしながら農水大臣の改革意識にこくみが関心を持つことはなかった。

今回の「失言」で一躍時の人になり、一発退場の瀬戸際にいる。フジテレビ上席解説委員の平井文夫氏が「日本の国益を考えるならば、とにかくもうこの人はやめるべきだ」と言っている。中国に対抗して決して付け入れさせないことが彼にとっては最大の「国益」なのだろう。

野党も追求の構えだったがその後トーンが弱まっている。立憲民主党に確信犯的に汚染水という言葉を使っている議員がおり自分達に批判が向くこと(つまりブーメラン)を恐れているのだと言われている。橋下徹氏はこの議員の名前を実際に使っていたが、デイリーは「立憲民主党の女性国会議員」とぼやかした書き方になっている。絡むと面倒だという意識があるのかもしれない。当該議員は「汚染水と言えないというのは言霊論である」として橋下氏に反論している。Xのスレッドを見る限り確かに絡むと面倒臭そうだったので実名はあげないことにした。

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