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岸田総理が支持率低迷の理由を「自分が言ったことがきちんと伝わっていないから」と分析

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岸田総理が発信力の改善に勤めているとの記事が2つ出た。読売新聞と時事通信が伝えている。一方で所属議員たちは「政府補助を目に見える形で見せびらかせば支持率が向上し選挙に勝てるはずだ」と考えているようだ。

そもそもリーダーシップとは何か。考えてみた。

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読売新聞が次のように書いている。たぶん「指導力」とはリーダーシップのおじさん的な言い方だ。さまざまなプロジェクトが「もたもた」しているのは部下たちがだらしないうえに指示をよく理解していないからであって、自分が先頭に立てば自ずと問題は解決するであろうと考えていることになる。

政府が直面する政策課題を巡り、岸田首相が指導力の発揮に注力する場面が目立っている。9月に予定される内閣改造・自民党役員人事を前に、課題解決の道筋を着実に示すことで、低迷する内閣支持率を回復軌道に乗せる狙いがある。

首相「毎日でも俺が前に出てしゃべる」…物価高や処理水、指導力発揮に注力(読売新聞)

時事通信は次のように書く。かっこよくパワポでプレゼンテーションをすれば国民は自分の指導力に惚れ惚れするであろうという考えがあるようだ。

新しい激変緩和措置を9月7日から発動する」。30日、首相はスライドを使って記者団にガソリン高騰対策について説明した。努めて顔を上げながらカメラに語り掛ける姿は、メモを読み上げるだけだった従来のスタイルとは対照的だ。スライドは24日にも使用しており、周辺は「いろいろ試している」と明かす。

岸田首相、発信強化に試行錯誤 支持低迷、「説明不足」批判で(時事通信)

岸田総理はどうやら「リーダーシップというのはまずは形なのだ」と考えているようだ。リーダーシップとは形なのだろうか。

岸田総理にはある負けパターンがある。

  1. 「どうせ一律補助金を出しても国民は感謝しない」と麻生元総理に吹き込まれ財務省と30万円減的給付を決めた。ところが公明党が連立離脱を仄めかし安倍総理に怒鳴り込みちゃぶ台をひっくり返された。
  2. バイデン大統領が熱烈に求める防衛費増額を決めた。鈴木財務大臣に代表される財務省は国債は発行できないと言っている。残りは増税ということになる。これが反発され増税議論を先送りしたが、いまだにサラリーマンいじめの増税が行われるのではないかとの懸念が払拭できない。
  3. マイナ健康保険証を一気に普及させることができれば改革派として名前を残すことができる。河野担当大臣はいっそのこと今の保険証を廃止しましょうと言う。ところが不具合は既に大きく報道されていた上に「今までの健康保険証が取り上げられる」と不安を感じた高齢者が騒ぎ出した。結局法律は変えられないので健康保険証の名前を確認証と言う名前に変えて誤魔化すことにした。
  4. 処理水放出に環境派から支持されているバイデン大統領が反対するのではないかという気持ちがあり、バイデン大統領が何も言わなかったことを確認するとその足で福島に向かい放出を決めた、中国が猛反発し禁輸措置を出すと慌てて対策を発表しようとしている。
  5. 補助が出なくなることでガソリン価格が上昇をし始めた。マスコミでは騒ぎになっていたがそのまま何もしなかった。おそらく財務省や経産省はこれ以上ダラダラと補助を続けるべきではないと思っていたのだろう。「9月になるとガソリンが200円になるのではないか」などと言われ始めると、慌てて対策を検討し始めた。

共通点は「色々な人の話を聞いているようで実は一部の人の話しか聞いていない」という点だ。そして基本的に人から言われたことをやっている。そして、いつも誰の話を聞くべきかと言う読みを外してしまう。そして大騒ぎになると「自分が先頭に立ってなんとかします」という。だが、もはやどうにもならない。周りの人たちは好き勝手に騒ぎ始める。

本来のリーダーシップとは自らが指針を示しそこに向かう道筋を指し示すことなのだ。Leadする人がLeaderだからである。岸田総理がやっているのは主に「問題の後処理」だ。冷静になって読売新聞を読み直すとそのことがよくわかる。単に自分が作り出した問題を解決しようとしているだけでリーダーシップとは関係がない。

ただ、自分で自分のことを分析するのは意外と難しいのだろうなあとは思う。自分が抱えているプロジェクトがうまくいかない時「周りが理解してくれないからである」と考えることはおそらく誰にでもあるだろう。周囲に冷静に問題を分析してくれるアドバイザーのような人がいないのが問題なのかもしれない。さらに自民党議員たちは「政府が支持されないのは補助金の恩恵が目に見えて示されていないからである」と考えており中にはあからさまにそれをカメラの前で主張する人たちもいる。自民党の選挙対策に使われるくらいならそもそも40%にもなると言うガソリン課税を緩和すべきだ。

さらに冷静になって読売新聞を読むと「万博は岸田総理が作り出した問題ではないよな」とも思った。この問題は既に建設業界から万博側に対して「早く決めてくれないと工事が間に合いませんよ」との声が上がっていた。岸田総理は「自らのリーダーシップを披瀝するチャンス」としておそらく極めて修復が難しい問題に手をつけてしまった。ただ、政府が先頭に立って関係者に「なんとかしてください」とお願いするだけだろう。建築会社は「いやいやその話はもうしてますよね」ということになる。

お祭りの準備よりも優先して手をつけなければならない問題がある。それが円安による国民生活の困窮だ。円安により円の価値はドルベースで20%程度減価している。このため実質賃金が下がり続けている。企業業績はそれなりに良いのだが個人消費は伸び悩む。

いま「ゼロゼロ融資」が問題になっている。コロナの特例措置だがその後に円安になり中小企業の業績が圧迫されているのだそうだ。

ガソリン補助金問題も出口が見えなくなっているのだが、このゼロゼロ融資も出口が見つからない。これまでの負けパターンに沿って考えると、岸田総理はまず財務省のいうことを聞いてこれらの報道を無視するだろう。そして問題が大きくなった時初めて「私がリーダーシップを発揮して」と言い出すのだ。問題は雪だるま式に膨れ上がってゆき、最終的には後処理に忙殺される政権になるだろう。

このように統治には失敗しつつある岸田政権だが党内対策は順調に進んでいる。安倍派は次の領袖が決まらず事実上無力化している。次は旧竹下派の押さえ込みだ。茂木幹事長を抑え込み小渕優子氏を要職に起用するのではないかと言われている。麻生太郎氏もいよいよ引退かと言うことになっている。つまり麻生派も領袖が変わることになる。めぼしい野党もないことからしばらくは「火を吹いた問題をモグラ叩き式に処理する」というスタイルで政権運営が行われることになるのかもしれない。

ただ本当にそれでいいのか、他に先回り型で問題を解決できる本来の意味でのリーダーはいないのかという気にはなる。

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