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菅義偉前総理大臣をきっかけに日本でも「ライドシェア」に対する議論が高まる

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日本でもライドシェアサービスを普及させるべきなのではないかという意見が出ている。菅義偉前総理大臣が講演会で発言したのがきっかけだ。自民党には「タクシー議連」を中心に抵抗勢力も多いが、河野太郎デジタル担当大臣などは新しい課題に前向きのようだ。

本来は1970年代のオイルショックによって始まった「ライドシェア」だが、日本ではIT革命の文脈で捉えられることが多い。当然、IT化についてゆけない人たちがいて反対することになる。これはおなじみの光景だ。

一方で民間タクシー業界には既存の制度に即したIT化の流れもある。宇都宮市のように鉄道を核とした地域交通の再整備を行うところも増えてきた。少子高齢化を背景に公共交通としてのライドシェアの需要も高まっているのではないだろうか。

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もともとアメリカのライドシェアは掲示板などで通勤客を集める乗合サービスだった。ところがUberやLyftなどのアプリが出てくるとこれがビジネスに転換してゆく。空き時間がある人がアルバイト感覚で運転手を務めるというサービスに変質していった。彼らはギグワーカーと呼ばれ「労働者として保護すべきなのではないか:という議論がある。現在の日本のライド・シェアの流れはこの状況を踏まえおり、IT革命の文脈で捉えられることが多い。

だが、これはアメリカのライドシェアの成り立ちを知っている人たちから見れば少しおかしな議論だ。

現在、ガソリン価格の高騰が続いている。地方や地方都市を中心に状況を整理して、ガソリンをセーブするためのライドシェアを普及させたほうがいい。現在ガソリン価格の高騰を抑制するために6兆円程度の税金が使われたといわれているそうだが、これをライドシェアの研究開発に充てたほうがよかったかもしれないのだ。

ライドシェアはもともと1970年代のオイルショックで始まった公共交通への転換運動が元になっている。フリーウェイ(高速道路)に「カープールレーン」が作られバスなどを優先して走行させるようになった。ところがアメリカではバスなどの公共交通は貧困層のものという考え方があり一般に普及しない。そこで2名以上で通勤する人にもカープールレーンを解放しようということになり、ライドシェアの流れができた。これが徐々に環境問題対策に結びつき、最終的にギグワーカーの登場に至ったという経緯がある。

菅義偉前首相には野党が手をつける前に規制改革が進められそうな分野を見つけ「改革の旗手」としての期待を集めたいという思惑もあるのだろう。この動きに呼応するように菅義偉氏に近い河野太郎デジタル担当大臣はデジタル庁内にワーキンググループを立ち上げた。

菅善総理らのライドシェアに対する議論は「アメリカで流行っている新しいITビジネスだから日本でも流行らせられないか」という動機に基づいて進められている。これ自体は構わないのだがこうした動きが出ると逆に既得権を侵されると考える人が反対を表明するという歪な構造がある。

本来はガソリン価格の補助をすると税金がいくらあっても足りないからカープールを推奨しようという議論が出てもおかしくない。だがこちらは「政府が補助をしていることをこれまで以上に可視化して支持率向上に繋げたい」という思惑含みで議論が進んでいる。国民の窮乏は政権支持率を向上させるためのチャンスだと捉えられているようだ。

一方で、IT革命の一環としてのライドシェアに対しては反発が大きい。免許事業であるタクシーと資格商売であるタクシー運転手の既得権が脅かされるという恐怖心が背景にあるものと思われる。タクシー・ハイヤー業界はこの動きに戦々恐々としている。ただし既得権の維持とは言えないので表向きは「安全性に疑問があり認められない」と言っている。

Abema Timesに記事が出ている。日本城タクシーという大阪の会社の社長が出てくるのだが「お話にならない」として話を聞くつもりもないようだ。Uberのような複雑な仕組みに対応できなくなっていることがわかる。安全性について一方的に持論を捲し立て「懸念がある人は使わなければいいんですよね」とする他の出演者たちから総攻撃を受けていた。

この日本城タクシーの社長が出てきたのには理由があるらしい。規制改革を訴える橋下徹氏のような識者に盛んに抵抗しておりその姿勢が面白おかしいのだろう。つまり「規制改革に提供する悪役」としてのキャラを担っていることがわかる。

では、タクシー業界は全くIT化の動きに対応できていないのだろうか。もちろんそんなことはない。アプリで客を探して斡旋するというタクシーアプリGOが新しい働き方を提供している。タクシー会社と組んで運転手には二種免許を取ってもらい許認可問題をクリアしている。これまでのタクシー業界の「ブラックな」働き方はムリだと感じた人たちがタクシー運転手に戻ってきているのだという。

日本城タクシーの社長はタクシーが高いのは運転手の教育と安全性確保のためのコストだと言っている。だが経営改革には後ろ向きだ。やる気がないというより今の経営陣ではITを使った抜本的な改革は無理なのだろう。ただ、こうしたサービスの担い手は徐々に育ち始めている。つまり何もデジタル庁が出てきて民業を圧迫する必要はない。

単に彼らを邪魔するような規制をかけなければいいだけなのかもしれない。直ちに支持率向上にはつながらないかもしれないが地方や地方都市の不効率な車通勤の仕組みを改善、今後しばらく続くと思われるガソリン高に対応できるような技術開発を進めてもらいたい。都市部の改革は民間に任せれば自ずと進んでゆくだろうが、地方には政府の助けが必要だ。

宇都宮市のように宇都宮市東部の渋滞緩和と高齢者に都心部への足を提供するという狙いで鉄道を開通させたところもある。日本の公共交通の再整備は高齢化という別の背景もあることがわかる。

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