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民主主義のない中華人民共和国で急速に広がる日本人への迫害や電話による脅迫 外務省は邦人に注意喚起

福島第一原発の処理水・汚染水をめぐる問題をきっかけにして中国で激しい抗議運動が起きている。抗議運動というよりどちらかというと日頃の不満の捌け口となっていて日本人・日本企業いじめの様相を呈している。何が抗議で何が脅迫なのかは切り分けが必要だが「単に中動くからの電話が増えています」で片付けていい問題ではないように思える。特に気掛かりなのが何の関係もない日本人学校に対する攻撃だ。民主主義もジャーナリズムもない中国ならではの展開といえるだろう。

岸田総理には毅然としたリーダーシップを発揮してもらいたいが「問題は片付けるもの」という独特の淡々とした普段の姿勢が窺える。

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福島第一原発の処理水・汚染水をめぐる問題をきっかけにして中国で激しい抗議運動が起きている。もちろん抗議運動自体は韓国や太平洋諸国にも広がっているのだが、中国の運動には中国ならではの特徴がある。

抗議運動なれしている韓国の運動が「福島第一原発」に向かっているのに比べ、中国の運動は「日本人」に向かっている。普段から組織だった政治的デモなどないわけだから抗議ではなく単なる日本人いじめになってしまうのだ。

全く関係のないレストランなどに電話する映像がSNSで拡散され日本人学校なども被害を受けているようだ。SNSで拡散した日本に対する抗議運動は中国語だったという。日本人にはないを言っているか理解できないが中国人は「ああ言ってやった」と大満足だろう。日本人学校も被害を受けており「弱くて抵抗できないもの」に対する迫害運動が広がる可能性もある。

中国には民主主義もまともなジャーナリズムもないと決めつけると叱られそうだ。

確かに形式的には人民が主権者の民主主義の国である。ただ実際にやっていいことと悪いことは政府が決めている。人民は単なる統治の対象物にすぎず自らが善悪の基準を持たなくてもいいことになっている。これではとても民主主義国家とは言えない。「憲法上は国民主権の民主主義国である」日本人が国民主権の意味を理解しているのかを内省した上でという但し書きはつくが「何が民主主義を規定するか」はきっちりと理解しておきたい。中国がこれを民主主義と呼ぶならばそれは我々が考える民主主義とは違う別の何かにすぎない。

民主主義という価値観を大切に思うならば、自らの考えで善悪を決めた上で相手の意志も尊重しつつ話し合いで物事を解決してゆかなければならない。だが、中国にはそうではない人たちが一定数いるということになる。我々は今後そういう国に対処してゆかなければならない。

もちろん日本側の報道は極端な事例だけを拾うという「切り取り」の側面がある。広大な中国でどの程度こうした反日運動が広がっているのかあるいは単に極端な事例を切り取っているのかは日本からはわからない。だが外務省は邦人に対して「外で日本語を話さないで」などと注意喚起を始めた。過去の経験から反日運動の広がりを恐れているのだろう。特に日本人学校について注意喚起しているところから「弱いものが襲われやすい」という傾向を感じる。

さて、こうなると日本側が政治的にどのような対応をするのか、あるいはするべきなのかという点も気になるところだ。先日触れたように岸田総理はこの敵対感情を利用して自らの支持率をあげるという選択肢もあった。さすがにそれはやりすぎでだしいったん火がついた敵対感情を消すことは難しくなる。中長期的に見れば決して利用すべきものではない。

だが、それでも「何の発言もせず、行動も起こさないのか」という気はする。アメリカについて中国を「名指しは避けて」非難し続けているという事情もある、民主主義が根付いておらず国内の不満が別の形で発火しかねないリスクを抱えた国に対処せざるを得ないという状態は今後も続くだろう。本当にこういう人がリーダーでいいのかは考えたほうがいいのかもしれない。

例えば電話による脅迫が続くようなら中国から来た電話を選択的に止めるというようなことは考えるべきではないか。「電凸」も一定数に達すれば営業妨害だ。用事があって電話をしてきた人たちが電話を使えなくなる。つまり原理的にはサイバーテロと同じなのだ。法的には何らかの問題があるのかもしれないが、感情的にはこれを「中国政府に抗議しました」で済ませていいものかと思う。電話会社が自発的に対策をやりますとも言いにくいだろうから政府としては具体的な対策を高じて欲しいところである。

できることはいくつかありそうだ。岸田総理はこの問題をどう捉えているのか。「受け止め」が気になる。

今のところ、過去の行動から分かるのはとにかくアメリカの動向を気にしていたという点だ。長い外務大臣の経験から「対米重視」という姿勢が染み付いているのかもしれない。IAEAからの反対はなく、バイデン大統領に何も言われなかったことだけ確認するとその後すぐに福島に向かい「漁業関係者と面談しました」という形だけを作り放出を決めた。

政府は800億円の基金を準備したそうだが実務は東京電力に丸投げしている。そもそも被害想定から出した金額ではなく「見切り発車」という側面がある。おそらく今後「切り分け」の問題が出てくる。そうした面倒ごとは全て東京電力に任せて「お金だけ出しますよ」という姿勢だったようだ。

この問題に限ったことではないのだが「厄介ごとは早く処理して楽になりたい」という気持ちを感じる。このため問題ごとは担当者に丸投げされる。だが担当者が解決できないと結局「岸田総理のリーダーシップ」問題に発展し支持率が下落するという構図が出来上がっている。

さてこの手の問題が広がると本当に考えなければならない「この放出の是非」の問題の重要性が相対的に薄まってしまう。BBCは科学的には安全性が確かめられていると書いている。しかし科学という言葉には「今わかっている限りでは」という但し書きがつく。BBCはまだ未検証の問題もあるとして両論併記でこの問題をまとめている。この辺りは冷静に受け止めるべきだろう。

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