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福島の処理水問題は岸田総理が支持率を劇的に上げるチャンスではあるのだが

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福島第一原発の処理水問題が国際的な波紋を起こしている。このところ社会病質をテーマに書いていることもあって

  • 岸田総理にとって支持率を劇的に上げるチャンスだが、岸田さんがそのような傾向を持っていなくてよかった

と感じた。

一方で河野太郎大臣や小池百合子東京都知事は「これは使える」と気がついたようだ。若干マキャベリストな傾向があるのだろうと思う。分断が進むとこうした傾向はもはや病質とは見做されなくなり逆に支持の要因になるかもしれない。

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福島第一原発の処理水問題が国際的な波紋を呼んでいる。Quoraのスペースでもこれに反発する投稿がいくつかあった。これを見ていて「ああこれは利用できるな」と感じた。何か感情的な問題が起きた時感情に絡めとられる側の人間と「ああこれが何かに使えないかな」と発想する人間がいる。管理者視点で投稿を観察しているため冷めた視点が持ちやすかったのかもしれない。

とはいえ何のことだかわからないと思うので順番に説明する。

処理水の問題で中国からの反発が強まっている。公明党の山口代表は訪中を断られたそうだ。

中国の対応はどこか常軌を逸している。西側からの反中国キャンペーンに苛立っていた中国政府はこれを利用できると考えたのだろう。これを「武器化」という。今回中国政府は環境問題を武器化していると表現できる。ちなみにアメリカは中国の人権問題を武器化していると言える。

中国からの迷惑電話が殺到しているそうである。真面目に生業を復興させようとしている人たちや全く関係のない人たちに迷惑がかかると当然中国全般に対する敵対的な感情が膨らむだろう。

中国政府が国民にどのような宣伝をしているのかがよくわからない。もう海の塩は使えなくなると考えた市民が塩の買い占めに走ったとする報道さえ出ている。

合理的な思考が失われれば当然反日感情が高まるのではないか?と在中国の日本大使館は心配しているようだ。

このような状態になると日本人の被害者意識が高まり「もっと強い濃度で放出すべきだ」などと言った対抗意識が膨らむことが予想される。ヒトは元々集団で争う性質がある。

こうなると4種類の人間が出てくる。

  1. 何も感じない人・冷静に問題に対処すべきだと考える人
  2. 対中国感情に絡めとられる人
  3. それを利用して自分の支持率を上げようと着想する人
  4. 3の手法に強い嫌悪感を持つ人

強い姿勢を打ち出すことで敵に対する反発を自分の支持率に転換することが可能になる。例えば、岸田総理が「非科学的な対応に終始し問題の武器化を図る中国には水産物を買ってもらえなくても結構。予備費を使って別の市場を開拓するチームを編成する!」などと高らかに宣伝すれば、おそらく拍手喝采でそれを迎える人は増えるだろう。

これは日本国内の環境派を刺激するだろうが合理的判断能力が低下すると「さては日本の環境派は中国の手先なのではないか」と考える人も増えるだろう。つまり国内の反発さえも支持率向上に利用できるようになる。

ただし、こうしたやり方には弊害も大きい。

第一に福島で水産業を生業にしている人たちは議論の中心から追いやられる。人々は党派対立に夢中になり問題解決などどうでもいいと感じるようになるだろう。

次にヒトの心に火をつけるのは簡単だが消すのは難しい。協力的な雰囲気が失われると社会が得られるはずだった利得のポイントが下がる。つまりこの手の人たちは社会利得を犠牲にして自分の社会的な地位を上げている。

さらに火をつけた人がトラブルに巻き込まれる可能性も高まる。プーチン大統領やトランプ前大統領が現在置かれている境遇を見ればそれは明らかだ。野党への敵対感情を煽り官僚の地位を支配しようとした最近のあるマキャベリスティックな政権は黒塗りの文書を量産することになった。この手の人たちがどんなトラブルに見舞われるのかは「平気でうそをつく人たち:虚偽と邪悪の心理学」を読むとわかりやすい。2011年の本だそうだがAmazonではKindle版が出ている。科学的に正確かどうかはともかく一時はかなり話題になった。

だが全てのリーダーが抑止力を持っているわけではないようだ。今回もいち早くこのトピックに利用価値を見つけてしまった人たちがいる。河野太郎大臣や小池百合子東京都知事だ。

河野大臣は中国で高級魚が食べられなくなれば日本の観光でくる人が増えると言っている。また小池都知事は東京にある国際的な販路を持った企業を支援すると言う考えを表明している。本能的に「ああこれは使える」と考えたのだろう。やはりある程度「気質」がないと思い付かない発想なのだ。

二人とも政治家としての実務能力はあまりないが「ここ一番」の発信力はある。おそらく長期的な視野はあまり持たずその時々の風を読むながら生き残っている。また周囲の人たちとの軋轢も抱えている。マキャベリスティックな傾向が強く利用できる人と利用できない人を弁別する傾向があるからである。平時であれば実務能力の欠如から排除されてしまうがそうでなければ生き残る確率が高まる。

長期的展望と実務能力を持っている人はあまりこのような手法に頼りたがらないだろう。真っ当なことをやっていれば支持は自ずとついてくるものだと考えるだろうし、社会とぶつかれば失うものも大きい。

長期的な展望を持ち「こんなやり方で支持率を上げるべきではない」という内的な倫理観がブレーキになる場合もあるだろうし、そもそもこう言うやり方に気がつかないと言う人もいる。岸田さんがどの類型にあたるのかはわからないが少なくとも今はそのような着想はしていないようだ。不幸中の幸と言えるかもしれないし「なぜ強い態度に出ないのか」と苛立つ人もいるだろう。

分断が進み合理的な判断能力が社会から失われると「この手の人たち」に有利な環境が生まれるだろう。おそらく今回の発言を聞いて河野さんや小池さんに同調する人は多いのではないだろうか。仮に社会病質を持ち合わせていない政治家であっても、誰かの具体的アクションを伴った提案に支持が集まり出すと「ああこういうやり方があるのか」と気がついてしまうだろう。つまりこうした手法は社会全体に伝播する

小池さんや河野さんは正しいことをやっている、なぜ岸田総理もこれに続かないのか?と考える人は多いのかもしれない。もちろん「そんな手法に手を染めてしまってはおしまいだ」と考える人もいるだろうが、実際に賞賛が集まれば抑止力は弱まる。

実際に香港のスシローは禁輸前に1時間ほどの待ち行列ができたそうだ。日本の美味しい魚が食べられなくなることに危機感を覚える人は意外と多いはずだ。中国政府は団体客を止めることはできても比較的富裕な個人旅行客を止めるのは難しい。すると却って金持ちしか日本の魚を食べられないと言う状況になる。つまり人工的に羨望を作り出すことさえ可能なのだ。

いずれにせよ外から分断を見て「ああこれは利用できるな」と考える人と、その中に巻き込まれてしまう人がいる。さらに全くそのように思わない人もいる。さらにこうした手法に本能的に強い嫌悪感を持つ人もいる。ヒトには社会病質に騙されまいとする性質もあるからである。自分がどのタイプに当たるのかを考えてみるのも面白いのかもしれない。

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