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民主党はなぜ解党すべきなのか

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民主党への風当たりが強まっている。「民主党が嫌いでも民主主義を守る為に民主党に投票して欲しい」と呼びかけるポスターを出したところ、なぜか炎上してしまった。民主党がバッシングを受ける理由を合理的には説明できない。「不景気で勝ち馬に乗る人が増えたのだ」とも言えそうだが、それだけではこれほどまでに感情的なバッシングにはならないだろう。
いろいろと考えた挙げ句出てきた答えは「ナチス政権下のユダヤ人に似ている」というものだった。当時のドイツには多くの矛盾があった。ヒトラーは矛盾をすべて「ユダヤ人のせい」にしたのだ。合理的な説明は全くなかったのだが、多くの人は意に介さなかった。迫害に無関心だったドイツ人(彼らは後に知らなかったのだと言い訳した)もいれば、積極的に迫害に加担した人もいた。
つまり、民主党は現代日本のスケープゴートになったのだ。スケープゴートにならないようにする対策はあるのだろうが、いったんスケープゴートになったら対策は一つしかない。それは「逃げる」ことだ。もはやいかなる分析にも意味はない。対策を取ろうとすればするほど深みにはまるだろう。
民主党がなくなれば、自民党にはスケープゴートにする政党がいなくなり自身で矛盾を引き受けなければならなくなる。識者の中には日本の統治機構が近代化されていないことについて民主党を非難している人もいる。合理的に考えれば統治機構が近代化されない(官僚頼みになっていて効率が悪い)のは民主党だけのせいではない。故に民主党を責めるのはお門違いなのだが、合理的に説明してみても仕方がない。改革に失敗した(あるいはやる気がなかった)ことを怒っているのだ。
もし民主党がなくなれば、声高に自民党批判をする勢力は、社民・共産だけになる。この2党はたいした勢力とは見なされていない。有権者には「自民党が勝ちすぎてもらっては困る」という心理(これをアンダードッグ効果というらしい)が働くので、自民党の勝ち過ぎは抑制されるかもしれない。しかし、民主党が批判しているせいで「誰かが牽制してくれているらしいから、自分は選挙に行かなくてもよいのだ」という効果が生まれてしまうかもしれない。
加えて民主党は反自民勢力からも嫌われつつある。護憲・反戦・反原発同盟だ。この勢力は「なぜ共産党と組めないのだ」と考え始めている。統一候補が出せなければ反自民票は割れてしまうだろう。民主党さえいなくなれば、票が割れずにすむ可能性が高い。いったんスケープゴート化されると、この人たちからも恨まれることになるだろう。参議院選挙で自民党が大勝すれば、さらに非難はエスカレートするのではないか。
生き残りへの近道は現在空白地になっている改革勢力を目指すというものだ。現在の政治は分配に重きが置かれていて、経済成長を目指す政策を立案できる政党が一つもない。
誠に残念なのは民主党が「政権を取る為ならどんな嘘でもつく」とされてしまっているところだ。現在は憲法第九条の改正や緊急事態条項に反対しているが、政権についていた当時は賛成意見を持っていた。今でも改憲したいのか、護憲なのか政党内で統一見解がない。民主党が何を言っても「どうせ票目当だ」としか思われない。日本人はこうした信頼破りにとても厳しい。禊(みそぎ)が必要だと考えられている。
まとめると次のようになる。

  • 現状に満足している層:自民党に投票する。変化を伴う改憲・改革には消極的だが「現状に変化はない」とか「手当をする」いうメッセージに安心する。ここを狙っても「第二自民党」と言われる。
  • 現状に不満で改革を求めている層:民主党の失敗に怒っている。一部は維新系に乗り換えたが、連携を通じて自民党に取り込まれる。一部は興味を失い投票に行かず非顕在化している。ごく一部(護憲・反戦・反原発層)は山本太郎の仲間たちに投票するかもしれない。
  • 現状に不満だが現状維持を目指している層:矛盾したクラスタだが、大方の護憲・反戦・反原発層がこれに当たる。民主党は共産党と組まないことに怒っている。この勢力は多分共産党に投票する。
  • 変化について行けず復古を目指している層:自民党に投票する。一部は復古政党に流れる。
  • やや現状に不満だが、これといった意見のない層:自民党が勝ちすぎると牽制のために投票に行くが、目立った反対勢力がいると安心してしまい行動を起さない。
  • 政治に興味がない層:どっちみち投票には行かない。

蛇足だが、旧来の「右か左」という区分けはほとんど作用していない事も分かる。