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甘利陰謀論について考える

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週刊文春が甘利大臣の収賄疑惑を報道して一週間強で甘利議員は大臣の職を辞してしまった。左派は鬼の首を取ったように大騒ぎしているが、ネット上の右派は議員も巻き込んで陰謀論を語っている。


贈賄を仕掛けた薩摩興業は従業員5人程度の怪しい会社なのだそうだ。札束の写真を撮っておいたというのが、あまりにも用意周到だ。最初から陥れる気満々だったのかもしれない。TPPのファイナライズが迫っており、国会審議も始まる。疑惑発覚のタイミングが良すぎる。「TPPを妨害するために中国や韓国が刺客を放った」といわれれば「ああ、そうかなあ」という感じもする。しかし、みんなが疑う犯人を疑うようでは面白くない。
よい推理小説では、みんなが考えない人こそが犯人だ。
昔から「アメリカに逆らったら刺される」という話の方が一般的だ。陰謀論者によれば、アメリカ政府の気に入らないことをした政権は次々と金権スキャンダルに見舞われて潰されてしまうということだ。検事当局もCIAの手先なのだという。過去には「米国債を売ろうと考えたことがある」と公演した橋本首相がアメリカの怒りを買った(と疑われている)という事例があるそうだ。田中角栄もロッキード事件でアメリカに刺されたと考える人がいる。
だが、今回の安倍政権は徹底的な親米政権なので「アメリカが刺客を仕向けた」とは考えにくいが可能性はゼロではない。
アメリカが安部政権を刺した可能性はある。安保法制が通ったので、アメリカにとって安倍政権はもう用済み政権だ。その上、今度は改憲だと言い出した。アメリカが押し付けた憲法を排除する意図のある改憲はアメリカの意に沿わない。さらに、これに乗じてナショナリズムが盛り上がれば中国と衝突する可能性がある。これはアメリカにとっては軍事費の暴騰につながる危険な動きだ。これを恐れたアメリカ当局が安部政権を潰そうとしているのかもしれない。最大の敵は味方のふりをしてやってくるのだ。支持者を自称して甘利議員を刺した「経理担当者」のように。
この説が確かなら、安倍政権は早々に見限ったほうがいい。アメリカに睨まれた政権に未来はないだろう。自民党は早々に次の首班を準備したほうが良さそうだ。
さて、陰謀論はこのあたりで終わりにしたい。そもそも、重要閣僚がこんなに簡単に刺されるとしたら、安全保障上大問題だ。その気になれば、中国のエージェントはいつでも日本の政権を転覆することができる。日本の政権は東西陣営のエージェントたちにつけこまれて大変なことになってしまうだろう。
実際の事情はもっとシンプルなのかもしれない。たとえ重要閣僚になっても、地元からの陳情には応えてやらなければならないのだ。「選挙に受かるためには間口を広げなければならない」と甘利議員本人が言っている。大政党の議員は国会から市町村議会までピラミッド構造を作っている。中央集権が強い国なので、ちょっとした揉め事がすぐに国政に直結してしまうのだ。お願い事をしたら、羊羹だけではすまないだろう。
もうひとつわかったのが、議員事務所の情報管理の甘さだ。支持者(コンタクト者)を手管理しており、議員間での情報共有もなかった(神奈川の甘利さんは千葉に情報照会しなかったらしい)らしい。甘利議員は大臣仕事に忙しく地元事務所の管理が手薄になったと言っている。秘書の俗人的な管理しかできていないことがわかる証言だ。情報管理がいまだに個人商店レベルなのだが、やる気になれば全党的な情報共有システムや信用照会システムくらい作れるはずである。
一部の議員は「クリーンな政治を作るため」と称してお勉強会を作ったらしい。なんだか誇らしげに報告しているが、政治と金の問題で30年くらいは大騒ぎしている。まだ勉強しているのかと突っ込みたくもなる。
まともな政治家なら、このような前近代的な構造が安全保障上の問題に直結しかねないことに気付くべきだろう。ネット上の陰謀論に乗っかっているようでは、とても政権を担えるような議員にはなれないだろう。