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電力自由化をめぐる窓口の混乱

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電力が自由化される!ということでテレビが特集を組み、コマーシャルも流れるようになった。早速情報集めしようと思うのだが、これがなかなかうまく行かない。現場はかなり混乱しているのではないかと思う。さまざまなサービスが連携しているのだが、お互いに情報が共有されていないのだ。いわゆる「縦割り」がいたるところで起こっている。
また、今回は電力小売が自由になるだけだ。電線は地域電力会社(関東だと東京電力)のものを使う。電気に色はないので、小売段階で「原発の電気だけ取り除きたい」といってもできない仕組みになっている。だから、電力会社を切り替えても、一部の左派が主張するように、原発がなくなるということはなさそうだ。「電源構成を示せ」という人もいるが、すべて同じになってしまう。せいぜい「再生可能エネルギー発電を応援しています」という会社が現れるだけだろう。エネオスでんきは「JXエネルギーの発電所などで作られ、一般送配電事業者の送配電網を使って送られます。発電所の概要は「ENEOSでんき」スペシャルサイトでご確認いただけます。」と唄っているが「など」となっているところを見ると、地域会社と電力の融通をする余地が残っているのではないかと思う。疑う方がいらっしゃると思うので、ぜひご自分で問い合わせをしてみていただきたい。
東京ガスは「電気とガスを一緒にすると値段が安くなる」と言っている。パンフレットには4000~5000円(年間)安くなると書いてあるのだが、実際に試算すると2500円程度になることも多いそうだ。過大広告の一種だが「これくらい書かないとインパクトがない」という判断なのだろう。話がややこしいのは、ここにインターネットのサービスが付くことである。標準で15000円程度安くなるということが書いてあるのだが、ガス会社(しかもメンテナンス系の子会社だ)ではネットのことはよくわからないのだろう。「勉強中です」などというばかりである。ネットの値引きにはさまざまな縛りがあり、話が格段に複雑になる。2年縛りなどは通信会社さんの事情なので、そちらでやり取りしてくださいとのことだった。
情報を求めてネットの会社に問い合わせをしてみる。窓口には何も下りてきていないそうだ。今でもプロバイダーと回線提供会社が分かれていて、それぞれに営業をしている。どの営業窓口を使うかで、支払い方法・額・端末構成などが変わる。今度はそこにエネルギー会社が加わるのだ。東京電力と提携するというプレスリリースが出ている会社もあるが「詳細は窓口に下りてきていません」の一点張りである。その上、キャンペーンの内容が毎月変わり「来月のことはご案内できない」という。
ソフトバンクに電話をしたところ「電気のことはよくわかりません」といわれた。ソフトバンク的には電気は「東京電力さんの管轄」なのだ。現時点ではいくら値引きできるかも案内できないという。
現場は情報のないままで顧客対応している窓口は、どこも「東京電力から情報が降りてこないし、いつになるかわからない」と言っていた。自由化を決めてあわてて業務提携したものの、細かいことがつめ切れていないのかもしれない。もともと官僚的な会社なので意思決定も遅そうだ。
CMで堺雅人が「ノープラン」であると笑われていたが、本当にノープランなのだ。
電力の自由化が起こると、さまざまな業種が組み合わされて「今まで見たこともなかったサービスが生まれる」はずだった。しかし、考えてみれば終身雇用前提の日本社会が一番苦手としているのが、異業種交流だ。今後さまざまな請求書が統合されるが、内部ではたらいまわしが起こるのではないかと思う。消費者一人ひとりがどこから何を買っているのか、誰が責任を持つのかがよくわからなくなる世界だ。問題が起こらない限りは表ざたにはならないだろうが、ひとたび問題が起こると解決するのは面倒になりそうだ。
成長しない市場で、減ってゆく顧客を奪い合うというような図式になっている。しかし、情報のサイロ化が起きていてそれを「人手でなんとかする」という状況のようだ。お互いが食い合う状態では携帯電話会社が起こしたような価格情報汚染とオプションの押し売りが横行しそうだ。さまざまな手段を使って価格情報を撹乱したほうが供給元には有利だからだ。