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日本を元気にする会はなぜ自民党に潰されかけたのか

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「日本を元気にする会」から一人の議員が自民党に流れ、構成員が4人になった。代表の松田公太議員によると、日本では政党要件を失った政党には不利な点が多いのだという。国会内の扱いが変わるだけでなく、NHKの政治討論番組にも呼ばれにくくなるそうだ。
要するに、日本を元気にする会は自民党に潰されかけたのだが、なぜ狙われたのだろうか。いくつかの原因がありそうだ。
第一に、代表がイケメンだった。「何をバカな」という人がいるかもしれないが、容姿で候補者が清廉かどうか見極める有権者は多い。イケメンは清廉で嘘をつかなさそうに見える。自民党はかつて「金権政党」のレッテルを貼られた過去があり、これは意外と深刻な問題だ。
次に、是々非々の政党だ。日本の政治家は「議論」とか「是々非々」という言葉をよく使う。これは東洋の伝統では「利益配分」のことを指す。一方、西洋の伝統では「是々非々」とは、メリット・デメリットを計算した上で最善の判断を下すことをいう。安保法は、アメリカの意志に従って(つまり日本には意思決定権はない)日本が軍事費と人名を負担するという内容なので、国民の代表に合理的に判断されては困るのだ。日本を元気にする会には少なくとも2名の「西洋系」の人がおり、話が噛み合なかったのだろう。
さらに、成功者の政党だ。アメリカでMBAを取ったような人は日本企業では出世できない。日本人は本能的に合理的な議論を嫌い成功者をねたむ。組織運営実務で成功経験があるという点は自民党の脅威になり得る。民主党のように「実は実務を経験したことがない」人たちが何を言ってもそれほど怖くない。菅政権のように危機管理で自滅するだろう。有権者もそのことが分かっているので、民主党が再び政権を取る事はなさそうだ。
position最後の理由はポジショニングだ。日本の政党は「保守(現状維持)」領域に集中している。自民党は資本主義に見えるが、実際の政策は社会主義的なので、親米・保守・社会主義政党だと言える。一方で「どう稼いで行くか」という議論はない。稼ぐ体質になるためには仕組みを変える必要があるのだが、そのための道筋を示す政党がない。地方主権で日本を元気にしようという「おおさか維新」がある程度だ。
現在は「無党派」と呼ばれる人たちと大きな空き地がある。ここでマッチングが起きたらどうなるか、多分自民党の人たちは分かっているはずだ。そういう政党は早めに潰すのがいい。
自民党が日本を元気にする会を潰そうとした理由を一つひとつ探ると、野党がどうあるべきかという姿がおぼろげながら見えてくる。
第一に日本を元気にする会は「非イケメン議員」を仲間に引き入れるべきだ。例えば、参議院にはアニメに詳しく「表現の自由」について取り組んでいる議員がいる。裏には大きな「非モテ層」の有権者がいる。イケメンでお金持ちだけが成功するのは面白くない。「所詮勝ち組」だからだ。
次に、「合理的な是々非々」の姿勢をアピールすべきだ。30歳代より若い人と話てみると分かると思うのだが、彼らは日本流の談合政治が理解できなくなりつつある。今の政治はコンテクストが複雑すぎて、新規参入が阻止されているのだ。こうした有権者は「政治は分かりにくい」と感じており「合理的で科学的な」議論を待望している。
さらに、成功者だけの代表でなく「実務家」の代表であることをアピールすると良いかもしれない。今回のSMAPの問題(実演家は成功しても正当な評価を得られない)なども参考になるだろう。芸能界には小栗旬のように「俳優の連帯が必要だ」と思っている人もいる。旧式の労働組合の更地になっているところは意外と多そうだ。
労働者対資本家という図式から成り立っている現在の労働組合を崩す事はとても重要だ。IT産業を見ると分かるのだが、二者が分離していると情報伝達にロスが生じるからだ。プログラマがアイディアを形にして経営するくらいでないとスピードに追いつけないのだ。
最後に「日本が変わるためには構造変化が必要だ」という識者たちと結びつく必要がある。おおさか維新の元アイディアは大前研一だが、時間が経つに従い原型が崩れ「中央の利権を地方にどうばらまくか」という議論に変わりつつある。
仲間のなかから「キムタクした」人が出たのは残念な限りだが、どのみち「合理的な議論」には付いて行けなかっただろう。今、政治的なコンテクストを共有していない人をどれだけ巻き込めるかで勝敗が決まるのではないかと思える。


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