読売新聞から内閣改造報道が出た。読売新聞には実質的な政府広報の役割があるのだからこれでほぼ確実だろうと思った。だがその後でそれを打ち消す報道があった。情報が錯綜した結果最終的に岸田総理が出した答えは「まだ決まっていない」だった。またしても党内をまとめられなかったようだ。
これらの報道がすべて正しいと仮定すると次のように読める。まず岸田総理(かそれに近い人)は読売新聞に対して「9月中旬に内閣改造をやる」と伝達した。この記事がネットに出たのが朝の5時である。しかしその後に時事が「党内には反対している人がいる」と書く。それが7時20分だ。時事は「党内で浮上した」と書いているので読売の記事が出てから明け方までに「異論」が浮上したことになってしまう。
岸田総理は富山県にいたそうだが「まだ何も決まっていない」と報道を修正した。発言を修正した理由はさまざま考えられる。党内の意見集約ができていないために「アドバルーンを上げた」可能性もある。ただ最初の報道が出てから異論が出るまでの時間差が早すぎる。党内にかなり慌てた人がいたのだろう。
マイナ健康保険証をめぐり岸田総理は「既存の保険証の廃止時期をずらした方がいいのかもしれない」と記者たちに発言し加藤・河野両大臣の反発を呼んだ。結局発言は修正され岸田総理はリーダーシップを発揮することができなかった。同じようなことが人事でも起きているとすれば岸田総理大臣の求心力はかなり落ちていると言って良いだろう。もともと聞く力を標榜している人なので「人事に色々と注文をつけたい」という人が多いのかもしれない。菅官房長官のような「根回しの人」がいないのも痛い。
当初、内閣改造の時期は「8月か9月」と言われていた。前回も8月に内閣改造をおこなっており官僚から「夏休みが取れない」という不満の声があった。9月上旬に外交日程が詰まっている。また10月になると臨時国会が始まる。
夏休みくらいで政治日程を変えるだろうか?という人がいるかもしれない。実は去年の内閣改造は8月10日に行われており霞ヶ関からは不満の声が聞かれたとされる。今回8月改造が流れたのはおそらくこの不満のためだろう。
では内閣を改造すれば支持率は上がるのだろうか。前回はそうではなかった。前回の改造の目的は統一教会隠しだったが失敗に終わっている。
元総理の銃撃(2022/7/8)をきっかけに「統一教会問題」が起き政権内部にも関連議員が多くいるということがわかった。岸田総理は「奇襲改造」を行い早期に問題を沈静化させようとした。だが結局統一教会問題は事務所経費などの問題に転移し内閣支持率の下落につながっている。つまり内閣改造をすれば支持率が上がるとは言い切れないのである。
今回の内閣改造はマイナ健康保険証問題でつまづいたとされる河野デジタル大臣の入れ替えが主眼になりそうだ。つまり河野さんの次のデジタル担当大臣がうまく状況を収拾してくれなければ「ああやっぱりダメだった」ということになりかねない。
では内閣改造に失敗すれば岸田政権はそのまま終わってしまうのか?ということになる。どうもそうは言い切れないようだ。理由は2つある。
第一に岸田政権は「増税」という難しい課題に手をつけてしまっているという点だ。次の日銀がすでに金融政策の変更を始めているため次の政権は必ずこの問題を処理しなければならなくなる。
もう一つの問題が政権交代の受け皿である。現在期待されている野党は維新なのだが、馬場共同代表を巡って厄介な問題がいくつか出てきている。文春がパワハラ報道と「他人の財産私物化」報道を始めた。つまり人格が問題になりつつある。
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さらに馬場共同代表は政権入りに意欲を見せ始めた。自分達は第二自民党だと言ってみたり、選挙結果によっては政権入りもあり得るなどと発言している。吉村共同代表はこの発言を牽制し「連立入りなら維新は消滅する」と言っている。
党首が私利私欲と野心のために動いているというイメージは浮動票を背景にした政党にとっては致命的である。馬場共同代表はいずれそのラインに触れてしまいそうだ。
大阪府市では世代交代を済ませた維新だが国会の側に目ぼしい代表がいないという状態が続いている。時事通信の調査では「次の選挙では維新に入れる」という人が増えているがそれでも「次も自民党」という人が多い。
このような状況を勘案すると低い支持のままで自民党政権がしばらく続く可能性が最も高いのかもしれない。国民には代替選択肢がなく不満を感じつつ今の政権が維持されるという状態である。