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中国経済が複合不況の様相 このまま「日本化」の可能性も

ロイターが「コラム:軽視できない中国の複合不況、日銀「次の一手」にも影響」というコラムを出している。田巻一彦さんのコラムだ。中国が複合不況に陥っているという。輸出の不振と資産デフレが要因だ。資産デフレとはつまり「バブルがはじけた」ということである。1990年代の日本と同じ状況に陥りつつあるということになる。このまま予想外の経済不況が続けば企業や家庭が現金を溜め込む「流動性の罠」に陥る可能性がある。

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田巻氏が心配しているのは日銀の金融政策への影響である。日本経済は思いのほか中国経済への依存度が高い。中国市場に向けた輸入だけでなく中国から日本にやってくる観光客の「爆買い」などのインバウンド需要もある。

特に懸念されるのが融資平台問題である。中国では地方政府が「融資平台」と呼ばれるスキームを作って借金を積み重ねてきた。今や地方政府の債務はGDPの76%に達するそうである。

中国政府が融資平台などの地方政府債務問題の処理に失敗しすれば中国経済は壊滅的な打撃を受ける。仮に処理に成功したとしても今までのように土地の値上がりを期待した旺盛な消費は期待できない。

中国の日本向け団体旅行が解禁され「かつての旺盛なインバウンド消費(爆買い)が戻ってくるのではないか」という期待があるようだ。だが仮にバブルが崩壊しているとすれば中国の団体客の購買力はかつてほどのインパクトを与えないかもしれない。

長期的な見通しはまだ分からないものの、短期ではデフレ懸念が出ている。2年5カ月ぶりで0.3%と比較的軽微だがこれがいつまで続くのかあるいは一時的なものなのかは誰にも分からない。

貿易もあまり期待できそうにない。新型コロナ禍で悪化した経済情勢を立て直すため各国は積極的な財政政策を行った。だがこの積極的な財政政策はアメリカやヨーロッパに過度なインフレを引き起こす。当局の引き締めは成果を出しつつあるのだが、当然その帰結は内需の縮小だ。アメリカでは貿易赤字が減少した。当然この赤字は中国にとっては黒字ということになる。つまり少なくとも年単位で中国経済にとって悪い状態が続く。

結果としては「経済が好調なうちにバブル処理をしておくべきだった」ということになるのだが、現実的には興奮が覚めてから初めてことの重大性に気がつくというのは日本も経験している。

さらに中国には「流動性の罠」という懸念もある。バブル崩壊後の日本がかつて経験したのと同じ状態である。

アナリストたちは、90年代に日本が直面したのと同じように、現在の中国の家計や企業も自信を失っているとみている。しかし、中国の場合は重要な違いがある。それはデフレの脅威がまだなく、銀行が融資を停止していないことだ。

このコラムは中国ではまだデフレは起きていないという前提を置き「だからまだなんとかできる」と説いている。

仮に経済の不調がアナリストの予想を超えて進行すれば、企業も家庭も安心・安全のために現金を溜め込むことになる。これについて細かい解説は必要ないだろう。1990年代の日本が経験したのと同じことが起きるというわけだ。

こうした動きに企業も参入し、中国経済の重しとなっている。金利が低下しているにもかかわらず、企業も家計も現金を投資するよりもため込んでいる。1990年代から数年にわたって日本を悩ませた典型的な流動性のわなだ。

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