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我々はこれからも産廃ゴミを食べさせられることになるだろう

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ココイチから流出した産業廃棄物が一枚80円で売られていた。マスコミは企業倫理の問題だとしているが、企業倫理頼みではこの問題は解決しないだろう。流通経路を合理化しない限り、我々はこれからも産業廃棄ゴミを「おつとめ品」として買わされつづけるはずだ。
問題の背景には消費者の嗜好と長年の商習慣を背景に成立した複雑な流通経路があるようだ。普通に考えると流通経路を合理化した方がよさそうに思えるが、単純化は未だに成功していない。
複雑な流通経路には情報隠蔽効果がある。隠蔽される情報は品質と価格の関係だ。メーカーは、シェアを確保したい新製品に有利なリベートを付けたりして傘下の卸を支配している。小売り店も安く仕入れた商品を高目に売り、目玉商品の値引きに流用したりする。こうして多階層で様々な調整が行われている。
情報撹乱が起こるために「お客のニーズに合わせた分だけ生産する」ということができない。そもそも、卸が多階層化しているために、小売店からメーカーへ情報をフィードバックするパイプもない。欠品が起こると売りの機会損出につながるので、小売店は多めに仕入れて多めに廃棄している。食品の廃棄率は50%にも昇るそうだ。誰もが無駄だと思っているが、誰も改善できない。
ただ、これだけでは「産廃ゴミ」が「お値引き品」になることはなかっただろう。
日本の流通経路は複雑だが、それでも長い間に少しずつ合理化が進んでいる。すると困るのは末端にいる卸業者(第三次と呼ばれる)だろう。実体は分からないものの、彼らはスーパーから競争を強いられている可能性がある。スーパーの担当者は常に「おつとめ品」を探しているからだ。
しかし、末端の卸業者は企業努力ができない。いくらがんばっても製造工程を合理化して安い製品を提供するということはできないし、規模が小さすぎて、IT導入で効率のよい企業運営をすることもできないからだ。
困窮した卸業者には、不正の温床がある。そもそも価格と品質の関係がよく分からなくなっている上に多階層化された流通経路を把握することができる人は誰もいない。そして、まだ食べられるのに捨てられる食品が市場にあふれ返っているのである。
教科書的には卸は一次・二次・三次と階層化されていることになっている。しかし、今回の件を見る限り、末端から末端への受け渡しが行われている可能性がある。つまり、階層関係が崩れているのではないかと思われる。生き残りを賭けた業者がお互いに「競争しつつ助け合っている」図式だ。これを「企業倫理」と「個々の企業努力」で乗り越えることができるだろうか。それは難しいと考えるべきなのではないかと思う。
さて、この問題で思い起こされるのは繊維産業の衰退だ。繊維産業は国策で作られたのだが、零細企業主体のため全体最適化が起こらず、バリューチェーンの中間が海外に流出して弱体化した。唯一成功したのが、バリューチェーンを統合したユニクロだった。
食品流通の現場でもこうした弱体化が起こっているのではないかと考えられる。そこから抜け出す為には、末端の流通業者が競争するのではなく、協業した上で、共通のプラットフォームを作る必要がある。
流通が合理化されない限り、大量の食料が廃棄され、割高なものを食べさせたられ、廃棄物が「おつとめ品」として温存される構造が変わる事はないだろう。