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松井広島市長が岸田総理の「広島ビジョン」を否定へ

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バーベンハイマー騒動ですっかり忘れられない夏になったが、今年も広島に原爆が投下された8月6日がやってくる。岸田総理も出席して原爆死没者慰霊式・平和祈念式」(平和記念式典)が行われる。式典には100カ国以上と欧州連合(EU)代表が出席するという。

今年の平和宣言で広島市長は広島ビジョンの基礎になっている核抑止論を否定する平和宣言を発信するそうだ。共同通信が「6日、広島原爆の日 「核抑止論は破綻」宣言へ」で伝えている。「破綻」とはずいぶん強い表現だなと感じた。

公明党と維新を含む野党は核禁条約へのオブザーバー参加を求めているが自民党は明確な回答ができなかった。党内議論がまとまっていないことがわかる。

一方で、「日本もアメリカの核の傘の下に入るべきだ」という核共有の議論がある。安倍総理が「タブー視してはいけない」として議論がスタートした。一時は高市早苗政調会長の元で議論されかけたのだが岸田総理はこちらの議論にも後ろ向きである。

広島ビジョンが市長から否定され具体的な方向が示せないままで岸田総理は祈念式に臨席することになる。

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G7広島サミットは「核兵器廃絶」に向けた宣言の場になるとされていた。だが実際にはウクライナのゼレンスキー大統領が呼ばれ武器の受け渡しなどの交渉が行われていた。被曝経験のある広島市民たちは「次の戦争に向けた準備」とみなす人も多かったようである。

野党各党は核禁条約へのオブザーバー参加などを求めている。公明党はもともと護憲・平和政党なので特に驚きはないのだが、維新も「参加すべきだ」と足並みを揃えたそうだ。時事通信が「公明と野党、討論会で核禁条約関与を政府に要求 自民は明言避ける」で伝えている。

自民党が党内で議論できない理由はよくわかる。

元々日本の原子力技術はアメリカの戦略によって基礎が築かれた。ソ連が核兵器を開発し東側各国に原発技術を広めはじめた。このためアイゼンハワー大統領が西側各国にアメリカの原子力技術を売り込み対抗しようとしたのだ。これを「平和のための原子力」運動という。日本側ではのちに首相になる中曽根康弘氏が原子力委員会を作り協力に推進した。

このようにして原子力発電は自民党の利権になった。だが現在ではこうした新しい利権作りは難しくなっている。

洋上風力発電において秋本真利議員と風力発電会社が東京地検特捜部の捜査を受けている。この経緯をみると自民党が新しい利権作りに苦労していることがわかる。

河野太郎氏は環境庁や経済産業省に働きかけ再エネの普及活動をやってきた。過去の発言の端々から「もっと早くやるべきだ」と苛立ちを募らせていたことがわかる。中曽根氏が原子力発電事業を推進していた時代よりも国家的プロジェクトを立ち上げるのは難しくなっているのは間違いがない。各省庁間の利害関係や立場の調整が難しくなっていることはマイナ健康保険証の問題を見ていてもよくわかる。

秋本議員の背後に再エネムラのようなものがあったのかはわからない。だが自民党からは派閥が消えかけておりたとえ事業を私物化を画策する議員がいたとしても抑えることは難しくなりつつある。仮になんら後ろ暗いことがなかったとしても1名「不心得者」が出ることで全体が疑問視されかねない。加えて「みんな(自分達が関係する企業)が儲かる仕組みにしなければダメだ」と主張していたと伝えられている。長期的な利権構造の構築は難しくなっていることがわかる。時事通信は「解散も難しくなるのではないか」という与党の懸念を伝えている。

自民、地検捜索で危機感 衆院解散「困難」の見方も―秋本議員(時事通信)

新しい利権構造を作るのは難しくなりつつあるのだからこれまであった仕組みを崩すようなことはなかなか難しいのだろう。日本が核禁条約にコミットすればアメリカに核兵器の放棄を訴える側になる。アメリカから圧力をかけられれば利権構造に悪い影響が出るだろう。「損をする」と考える議員も多いだろうから議論はなかなか進みそうにない。

加えて「中国や北朝鮮が核開発を進めている現状で核兵器廃絶など言い出せない」という人も多いのではないか。バーベンハイマー(バービーのSNSでの草の根プロモーションに核兵器の絵が使われた)騒ぎの時にも「アメリカが反省していないのは嘆かわしいことだが、これが反核兵器運動に利用されては困る」と牽制する人たちがいた。日本は核兵器被害を受けているからこそ「現実的な対応」に対する切実な要求があるともいえる。

北朝鮮の核開発が進む韓国では自前で核兵器を持つべきだという議論がかなり大っぴらに行われている。政治家だけが話しているというわけではなく世間話のレベルで「自前の核兵器を持つべきだ」などと話し合われているという。

バイデン大統領は尹錫悦大統領をなんとか取りなそうとした。この約束が拡大解釈され尹錫悦大統領は「事実上の核共有だ」と誇大宣伝を行った。この経緯から日本は核兵器を求めつつもアメリカの顔色を伺いなかなか思い切ったことが言えないということがわかる。

それでも、安倍総理時代に「核共有議論をタブー視してはならない」という発言があり、高市政調会長時代には議論を呼びかける動きもあったそうだ。野党では市民団体との関係が薄い維新が議論を呼びかけている。だが岸田総理はこうした議論には後ろ向きである。

原発利権と安全保障の議論が交錯し日本が核兵器とどう向き合うべきなのかについて統一した政府の方針は得られない。さまざまな議論が未解決のまま積み上がっている現状を考えると岸田政権が核に対する議論を整理することなど到底できないだろう。そんな中、地元の市長から「広島ビジョンの基礎になる核抑止論は破綻した」と宣言されることになる。

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