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岸田総理が記者会見を開き「デジタル敗戦」を訴えるもマスコミはスルー

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マイナ健康保険証の問題で総理大臣が記者会見を開きデジタル化への自身の思いを熱く語った。政調会長時代の失敗を自分の調整力不足と認めず「デジタル敗戦だ」と記憶を改竄したことが前のめりの原点になっているようだ。このままでは「デジタル玉砕」になるのでは?と思った。

だが、デジタル敗戦という言葉は記事からは抜かれてしまった。単に「先送り」とまとめているところもある。Yahoo!ニュースでも大して注目されなかった。8月には終戦記念日がやってくる。言葉が一人歩きし炎上しかねないというメディアの親切心だったのかもしれない。具体的な対策も提示されなかったため「何を言っているのだ」と思った人もいただろう。

今回はまず会見を見た個人の所感を書き、発言概要についてまとめ、各社の報道について整理する。

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会見を見た所感 – マスコミは岸田総理の強い決意に関しては「スルーの方向」で対応

「デジタル敗戦か……」と思った。

岸田政調会長の新型コロナ対策の失敗は自身の調整力不足によるものだ。「予算ありき」で困窮家庭にのみ30万円を給付するという財務省のアイディアをそのまま採用したが公明党が反発し連立離脱を仄めかした。慌てた安倍総理は太田充主計局長を呼び出し岸田政調会長のまとめた案をひっくり返してしまった。これが「敗戦」の実際の中身である。

岸田総理はこの記憶を都合よく改竄しており「日本のデジタル化の遅れが全ての問題である」と認識していると認識しているようだ。よほど苦痛だったのだろう。デジタル敗戦という言葉は政府の無策により日本のデジタルインフラがアメリカに支配されていることを指すことが多い。

混乱の原因は地方自治体の事務効率の悪さでありデジタル化の遅れはその要因の一つに過ぎない。皮肉なことにこの事務効率の悪い地方自治体に対してポイントを使った普及策を押し付けたことで混乱が拡大した。つまり敗戦の原因を正しく処理しなかったことで同じ間違いを繰り返しているということになる。

このままでは「デジタル敗戦からデジタル玉砕だ」と思ったのだが、メディアのはこの言葉をそもそも報道から抜いてしまった。終戦記念日が近いためこの言葉は誤解され炎上しかねない。マスコミとしては大人の配慮だったのかもしれない。ロイターとAbemaがデジタル敗戦という言葉をそのまま使っている。

さらに「人事や選挙について言及しなかった」としてそもそも関心を寄せないところもある。ヤフーニュースでの扱いも小さく専門家のコメントも従来の「これでは今までの保険証とあまり変わりはないではないか」というものが多かった。つまり世間の会見に対する関心はそれほど高くなかったのだろう。デジタル敗戦からの復興という仲間内で考えた作文は誰にも伝わらなかった。

前のめりな対応の割に実務に関しては「スカスカ」だったのも印象に残った。仲間内で作った炎上を招きかねない表現はマスメディアの配慮によってスルーしてもらえた。だがおそらく実際のシステム構築とテストについて総理に助言できる人が周りにいないことがよくわかる。

資格確認証については「各保険業者が対応する」が「マイナンバーカードによる紐付けをしていない人だけに確実に配る」と言っている。質問でも個別具体的な内容については答えない点が多かった。資格確認証の配布業務は各保険事業者に丸投げされた。岸田総理は「配る枚数が減るのだから事務経費は削減できるだろう」と言っている。だが既に問い合わせによる混乱などが広がっているのだからおそらくそうはならないだろう。

どれくらいのエラーが起きているのか総理は把握していない。また記者の中に「エラーは発生するのだからこの対応をしなければならないのでは?」と聞いた人がいたが総理は何も答えなかった。おそらくシステム運用には間違いがつきものであるということが理解できていないのだろう。疑念払拭会見としては落第点だ。

このため肝心の「懸念を払拭するための施策」についても単に「先送りだ」とか「これから方針が出てくるらしい」という報道が出ただけだった。これでは何のための会見だったのかよくわからない。

発言要旨

新型コロナに対応する中で、日本のデジタル化の遅れを痛感した。これを「デジタル敗戦」と位置づけ自分の政権での解決を誓った。この間、関係閣僚が一致協力してマイナカードの普及に取り組んできた。政府のデジタル敗戦を克服するためには本人確認のために電子証明書を内蔵したマイナンバーカードが是非とも必要だ。

現行の健康保険証を廃止するのは乱暴なのではないかという指摘を受けている。マイナ保険証を持っていない人には現行の保険証と何ら変わりない資格確認証を受けることができるものとする。総点検は私自身が先頭に立って対応する。

世界に例を見ない先進的なデジタル行政府のために必要なアイディアは政府の中に出揃っている。今後はこれらの政策を力強く国民にアピールしてゆく。

記者質問

Q:健康保険証廃止の延期はあり得るのか?
A:延期ありきではないが、延期のオプションは残しておきたい。

Q:資格確認証の期限はどうなるのか?
A:5年を超えない時期でそれぞれの保険者が決める。

Q:資格確認証は今の健康保険証と変わらないのではないか?
A:マイナ保険証を持っていない人だけに発行されるのだから発行コストや事務負担は軽減するだろう。当然のことだ。

Q:将来的にはマイナ保険証に一本化したいのか?
A:円滑なマイナ保険証の普及に努めたい。マイナ保険証が選ばれるようにしたい。押し付けることはしない。

Q:国民は一体何に不安を感じていると思うか?
A:いろいろなトラブルが不安を生じさせているのだろうが、総点検を通じて疑念は払拭されるだろう。医療を受けられなくなるかもしれないという不安には万全の対策を講じた。

Q:総点検が終わるまで関係閣僚は続投させるのか?
A:関係閣僚の継続性や選挙については明言せず。

Q:ミスはどれくらいなのか?
A:総点検をやっている途中なのでまだわからないとして明言せず。

Q:人為的ミスがなくならないという説明がないのはなぜか?
A:質問には答えず。

Q:運転免許証・在留カードなど統合などのスケジュールはどうなるのか?
明言せず。

メディアでの「デジタル敗戦」の使われ方

デジタル敗戦はむしろ政府の無策や政府発信のデジタル政策の失敗を揶揄するために使われることが多い。特にアメリカのIT産業にインフラを全て握れられていて日本はないもできないという含みで使われることが多い印象だ。岸田総理はこれを改竄し自分たちの行動の正当化に利用しようとしたのだろう。

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