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新任の一松旬首相秘書官に「増税請負人」の噂

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一部の週刊誌が「新しく着任した首相秘書官は財務省から送り込まれてきた増税請負人だ」と書いている。名前を一松旬(ひとまつじゅん)さんという。これがどれほど本当なのか調べてみた。

実は岸田総理は財務省寄りと見られることをと見られることを嫌っている。かと言って増税圧力に抵抗しようとも考えていない。また人の話を聞いて新しい政策を財源の裏打ちなしで決めてしまう。このため一松さんが浮いている。

過去の事例をいくつか参照すると岸田総理が中途半端な決定を下してしまい状況がさらに混乱する可能性がある。

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一松さんは6月の末に首相秘書官になることが決まった。実際に勤務が始まったのは7月に入ってからだった。予算を管理する「主計」という仕事をしており、主な担当は医療・福祉である。

一松さんは将来の財務事務次官候補とされる10年に1人の逸材だそうだ。開成・東大という岸田総理が大好きな学歴でもあるそうだ。自分が辿れなかったコースの人材を好む傾向にあると指摘するメディアもある。

週刊誌はこれを「岸田総理が増税を目論んでいる証拠だ」とみなす。この方が話としておもしろおかしいからだろう。

では、政権は財務省に操られているのか。実はそれほど簡単な話ではない。実は岸田総理は財務省を遠ざけている指摘する記事を文春で見つけた。

岸田総理や側近たちは外から「財務省印」とみられるのを嫌っている。財務省=増税という印象がついているからだろう。このため財務省が一生懸命に増税路線を敷いても「あれが気に入らない、ここがなっていない」と不満を表明するばかりで国民への説明などに協力してくれない。財務省OBは「昔ならしっかりパイプがあったのに」と不満を表明するが、むしろ政治の側が逃げているのではないかと思える。

昨年末に決定した防衛費増額の内実は、事実上大半を赤字国債で補わざるを得ないと言われる。恒久財源を確保したはずの法人税などの引き上げも、時期は確定できずじまいだった。制度作りに奔走した一松旬企画担当主計官(平成7年、旧大蔵省)は省内きっての秀才で鳴らすが、今回は省内外から大不評を買っている。「苦労は分かるが落第もののフレームを作った責任がある」(省OB)と大きく株を下げた。永田町対策を担った坂本基主税局審議官(3年)、寺岡光博主計局次長(同)も「自慢するほど自民党内のパイプは太くなかった」(同省若手)と冷ややかな視線を浴びる。

この記事には少子化対策の話も出てくる。総理が突然少子化対策について言及した時、財務省には話が行っていなかったそうだ。「財源がない」と反対されるのがわかっていたからかもしれないが文春は理由を書いていない。

年明けに岸田首相が「異次元の少子化対策」をぶち上げると、「事前の連絡はなかったのか」と省内には疑心暗鬼が渦巻いた。共に厚労主計官経験のある新川浩嗣主計局長(昭和62年)と宇波弘貴首相秘書官(平成元年)が「聞いてなかったよな?」と確認しあう姿は「最強官庁」の現状をまざまざと映し出す。

さらにこの記事には「岸田さんは太田主計局長を恨んでいる」という話が出てくる。コロナ給付金で岸田政調会長は太田さんの口車に乗せられて困窮家庭に30万円を配るという線でまとめようとした。結局、一律10万円となり「顔に泥を塗られた」と恨んでいるという見立てだ。正確な記事の表現は次のようになる。

政調会長時代の岸田氏が当時の太田充主計局長(昭和58年)の入れ知恵でまとめた現金給付策が公明党のちゃぶ台返しを食らった経験が後を引いている。

この経緯について見てみよう。

もともと自民党は第一次補正案の枠内で処理しようとした。この枠から逆算して出したのが最初の「限定的現金給付案」だった。つまり太田さんは自民党側のリクエストに応えたに過ぎない。ところが、公明党が「連立離脱も辞さない覚悟」で一律給付を主張する。これ慌てた官邸は太田主計局長に泣きついた。

これには安倍首相もすぐに対処せざるを得ず、午前11時半に麻生太郎副総理兼財務相が太田充主計局長を呼び寄せ、お昼に二階俊博幹事長、林幹雄幹事長代理、岸田文雄政調会長と協議した。中でも注目されたのは、岸田政調会長の存在だ。

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太田さんを恨むのは筋違いなのだろうが、財務省に最初に頼むと制限ありきで提案してくるという被害者意識を持っていることがわかる。

現在の政権は国民に恨まれることを恐れて財務省の提案から距離を置こうとしている。だが対案を示して財務省に指示ををすることはない。いろんな話を聞いて「どうしようか」というばかりなのだ。

結局今回も「増税請負人」の一松氏を受け入れている。さらに増税か緊縮財政かの選択を迫る政府税調の答申も受け取り、日銀が金融政策を拡大するのを容認した。金利は既に上がり始めている。

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この「中途半端さ」と「部下への丸投げ」が岸田スタイルと言える。いろいろなところから話を聞いてしまい収拾がつかなくなってから部下たちに「ねえどうしよう」と相談するのが岸田総理のいう「聞く力」である。

ではこれはどのような影響を与えるのだろうか。誰も満足できない中途半端な裁定が下される可能性がある。

増税と並んで財務省にはもう一つの宿願がある。それは医療費圧縮だ。この一環として財務省は診療報酬を圧縮しようとした。この時に厚生労働省に退治したのが一松さんだった。医師会は会長が変わり政治的影響力が落ちていたため「財務省の圧勝では?」と言われていたようだが、財務省の完勝にはならなかった。

まず、折衝に木原官房副長官が割って入る。財務省出身の木原さんも「財務省より」と見られることを嫌っていたようだ。ここで岸田総理はどっちつかずの裁定をしてしまう。ダイヤモンドオンラインは「財務省にとっても厚労省・日医にとっても想定外の決着」と表現している。

岸田総理は両方から話を聞き「どっちにとっても想定外」の裁定をしている。つまりどちらからも話を聞くが決めきれないということになる。

同じことはマイナンバー健康保険証でも起きている。さまざまな意見があり収拾がつかなくなっている。河野太郎大臣に対策を丸投げしたが河野さんはうまくこなすことができなかった。結局岸田さんが意思決定せざるを得なくなるのだが決めきれない。そこで関係閣僚たちを集めて会議をするという。おそらく「岸田さんが決めてください」と言われるだけだろう。

増税をめぐる混乱は既に自民党の解散戦略に暗い影を落とし始めている。

増税推進派は政府税調の答申でわかりやすく「増税か緊縮財政ですよ」と伝えた。その上で実際に日銀の金融政策の変更を発表した。実際に金利は上がり始めており「砂時計がひっくり返された」状態である。さらに令和臨調からも圧力がかかる。増税推進派は岸田総理に「これをうまく説明してくれる」ことを期待している。

ところが「サラリーマンいじめだ」という反発が広がると、宮沢自民党税調会長と岸田総理は「増税など考えていない」と逃げてしまう。さらに世耕弘成参院幹事長は「日銀を監視する」などと言い出した。

仮に増税から逃げたいなら対案を示し財務省に提示すべきである。岸田総理は対案を示すこともなく単に聞く力を発揮し続けている。

おそらく状況がわかっている松野官房長官は世耕参院幹事長の発言に対して「緩和継続のための政策なのだ」と説明せざるを得なかった。状況が変化したことがわかっている鈴木財務大臣も為替の動向に警戒感を滲ませる。

鈴木財務大臣は状況の変化がよくわかっているのだろう。おそらく秋には選挙はできないだろうと発言している。状況が変わってしまったために、選挙のための大盤振る舞いはできない。あえて選挙をやるとしたら増税を説得するための選挙になる。消費税増税で追い込まれて政権を失った野田民主党に似ているが、国民には代替選択肢がない。

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